うさぎパイナップル

主にフィギュアスケートの旅日記とテレビ観戦記とお題記事・ただ書き散らして生きていたい

Fantasy on Ice 2014 in Toyama⑨

※この記事は昔書いたものを修正して今更載せています。詳細についてはこちらをご覧ください↓

usagipineapple.hatenablog.jp

 

本命ここで登場。ステファン・ランビエール
土曜日と日曜日の昼が「The water」、日曜日の夜がグリーグのピアノ協奏曲だったと思います。両方見られてラッキー。

…幕張の何倍も何倍も素晴らしい演技でした。もちろん幕張での演技も息するの忘れる程良かったんだけど、なんかもうそれとは異質の凄さ。席が近かったからなのかもしれないけど、彼の本気がやっと伝わってきた気がしました。
「The water」にはステファンが氷に寝そべって天に突き出した足を震わせる、という振付が入っているんだけど、Aさんはそこでどうしても笑ってしまうそうです。ツボなんですねAさんの(笑)。

場内割れるような大歓声。羽生結弦が登場。
しかも滑るのは今シーズンのショートプログラムだと言うではないか。既にほかのショーで披露していたはずではありますが、私はまったくの初見。期待に胸が膨らみます。
ショパンのバラード。キラキラしたストーンを散りばめた、ハイネックのシンプルな衣装。

見終わった瞬間に思った。
「これぜっっったいジェフの振付…」
昨シーズンまでのプログラムに続き、今回もショートプログラムの振付はジェフリー・バトルだそうです。それは難しく、それは美しいプログラムでした。やはりジェフの振付師としての才能は抜きんでいると感じます。羽生君の能力の高さもそれに拍車をかけるのでしょう。もしジェフがもっとジャンプの得意な選手だったら、信じられないほど美しくこのプログラムを滑りこなしたのだろうな…と、大ファンだった私は随所に見られるジェフの面影に少しばかりの切なさも感じてしまいました。

しかし、まるで氷の上にしか存在していないかのようなジェフとは対称的に、羽生君のバラードは彼の魂の熱さを感じるような滑りでした。四回転をプログラムの後半に跳ぶのですが、もちろんそれは難しいことなので失敗も増えるしショーでは回転数を抑えてしまいそうなものなのに、
この人やっぱり跳んだよ、四回転…。
確か私が見た3回のうち成功したのは1回だけだったけど、四回転ってスピードや高さがやはり三回転ジャンプとは違うので、転倒しても迫力が桁違い。ものすごく間近で見られて感激。トリプルアクセルや連続ジャンプも跳んでいたので、ほぼ競技と同じ構成で滑っていたものと思われます。
この時だったかフィナーレだったか忘れちゃったけど、何かのジャンプを成功させた羽生君が、客席側に顔を向け上向きの視線で「どうだ!」と言わんばかりの真剣な表情で、汗だくで私の目の前を通過して行った(ていうか着氷したんだと思う、目の前で。記憶が曖昧)ときは、これが羽生君そのものなんだなと感じずにはいられなかったです(笑)。

直前がステファン、しかも最終公演は同じピアノの曲だということで、ピアノ曲を滑らせたら天下一品のステファンと比べられることになってしまったら…と危惧したけれど、羽生君はステファンとはまったく違う個性の羽生君らしいプログラムを滑っていて、見劣りするなんて杞憂でした。ステファンが芳醇なワインの薫りだとしたら羽生君は激しく湧き出る透明な水。別物の個性であってそもそも比べるものではない。変な心配してごめんね羽生君。
これは競技が楽しみ。競技モードで完璧に滑ったら震えが来るくらい素晴らしいプログラムになるでしょう。全回スタオベでした。今シーズンの羽生君が楽しみです。

続いて鈴木明子。昨シーズンもよくショーで滑ってたシルクドソレイユのプログラムでしたが、今回はエアリアルとのコラボレーションという新機軸でした。
エアリアルと言ってもファンタジー・オン・アイスに毎回出演していたロシアの夫婦ではなく、日本人の女性グループ。エアリージャパンと言うそうです。

エアリージャパンはステージの上部で演技していたので、ステージ正面の席はこのコラボレーションを堪能するのに最適な席でした。でも鈴木さんを目で追いながら遠いステージのエアリアルも見るのはなかなか厳しかった。天井から吊り下げられた布を使って空中で演技するエアリージャパンとリンク上の鈴木さんを同時に視界に入れるのは難しかったのです。何とも言えない妖艶な雰囲気はあっただけに残念でした。でもエアリージャパンの動きに呼応して客席から歓声が上がってたので、上の方の席の人は主催側が狙ったとおりにちゃんと見えたのかもしれません。

実はステージの上部にも席があったのですが、そこで見てた人にはエアリージャパンがぶら下がってるとリンクは見えなかったんじゃないだろうか。安い席には安いなりの理由があるんだよねやっぱり…。

第一部ラストは高橋大輔。紹介のナレーションが始まると同時に流れ出した曲にハッとする。これは昨シーズンのフリープログラム、ビートルズメドレーではないか。見たかったんだよなあこれ。
競技では確か5曲が使われていましたが、ショーなので短めに最後の2曲か3曲の部分だけ滑ってました。

オリンピックでは何だかんだといちばん情感込めて滑っていたのは高橋君だったと思う。メダルには届かなかったけど、バンクーバーの演技よりずっとずっと感動した。流血の全日本、諦めの涙、そして、万感の想いという言葉がこれ以上ないほどふさわしかったオリンピック。激動の昨シーズンを思い出し、込み上げてくるものを胸に感じながら演技を見ていたら。
確か、最終公演だったと思うけど。
自分の前を走り抜けていく高橋君は、笑顔だった。
ひとつの時代を駆け抜けて、そこから去って行こうとする人の、清々しい笑顔だった。
涙が出そうでした。ビートルズ滑ってくれてありがとう。見ることができて良かった。

全体を通していい演技でしたが、演技もさることながら特筆すべきは照明。とにかく美しかった。明らかにこの高橋君のビートルズのプログラムがショー全体でいちばん照明が凝ってた。ここまでプログラムにぴったりと合わせた照明効果はほかのプログラムでは見られなかったと思う。照明係に高橋君ファンがいるのか?と思ったほど。

余韻を残して第一部は終了。以下次号。