うさぎパイナップル

主にフィギュアスケートの旅日記とテレビ観戦記とお題記事・ただ書き散らして生きていたい

Fantasy on Ice 2010 in Fukui⑪

※この記事は昔書いたものを修正して今更載せています。詳細についてはこちらをご覧ください↓

usagipineapple.hatenablog.jp

 

ステージを照らすスポットライト。歌うディーマ、ストラディバリウスを奏でるマートンプルシェンコの姿はまだ見当たらない。
A席は裏側だったのでよく見えたけど、プルシェンコはステージ側のプレミア席とステージの間から登場。待機中、手を後ろに回してニヤニヤしながら、プルシェンコにドキドキしてるお客さんを見てるロシアの皇帝(笑)。吹き出しそうになったじゃないかチクショウ(笑)

白い衣装で揃えた3人。プルシェンコは黒いパンツ、シャツは「Je suis malade」のかなあ?
滑り出すプルシェンコ。トスカもそうだったけど、ジャンプは時々すっぽ抜けていた。でも…
今の…
今の短かったけど…
ビールマンスピン…(驚)
土曜昼公演はスピンだったんだけど、あとの2公演は…
ビールマンスパイラル…。しかも長い…(驚)
腰を痛めてもうやらないって聞いてたのに…。まさか27歳のプルシェンコビールマンをこの目で見ることになるとは…。福井凄いよ…
ステップは言わずもがな。会場のボルテージはこれ以上ないくらいに上がる。

フィニッシュは3人で膝をついて。だから、笑っちゃうでしょー!でも…凄かった。3人の変た…もとい(笑)天才のぶつかりあい、溶け合う個性。抱き合う3人が微笑ましい。日本では初公開(だよね?)だけど、これ何度か披露されてるプログラムなんだよね?いいもの見せてもらったよ。
もちろんお客さんは総立ちでした。福井は正直「プルシェンコ・オン・アイス」と言ってしまって過言ではなかったですよ。

熱狂さめやらぬ中、安藤美姫登場。新潟は昼と夜で違うプログラムでしたが、福井は3回とも白い衣装の可憐なプログラムでした。
たぶん一番多く生で見たことがあるのが彼女。本当に大人になったと思う。あんなに叩かれてもこうして思わず見入ってしまう演技ができるまでに成長したんだね…。いいもの見させてもらったよ…。ああ、次がアイツじゃなければもっとじっくり見たかったんだけどね…。

そう。
ついにやって来たこの時。
一度は引退したけど、戻ってきたバンクーバー。今日はそのバンクーバーショートプログラムを滑る、というアナウンスに、会場からは、絶叫。
ああ、あの衣装…。あの衣装だ。あの衣装で待機してる…。
見られたらいいなと淡く期待をしていたけれど、本当に本当に、本当に滑ってくれるなんて…
大好きな、大好きなプログラム。映像が手元にないのだけど、それでも忘れられないプログラム。
私はこれを見るために、この2分50秒のために、無理をしてでもここまで来たんだ。

ステファン・ランビエール
ウィリアム・テル」。

開始はスローパートから。リンクに視線を落とすその姿から、もう、ほかのものは何ひとつ目に入らない。優雅な動きに、ただ見とれる。拍手は起きるけど、会場も静まり返っている。2度目以降は要所要所で双眼鏡を使うつもりだったけど、完全に見とれていてろくに使えなかった。
なんて…なんてしなやかなんだろう…

最初のジャンプはダブルアクセルかな、これは成功。でも2番目は…、やはり入れてきた、4回転。土曜昼公演は確かお手付き。夜公演は華麗に尻餅をついてしまった。日曜日は結局3回転に抑えたようで、とうとう成功しなかった。それでも挑戦してきた。胸が熱くなった。そもそもショー用にアレンジしたプログラムじゃなかった。競技そのものの、ウィリアム・テルだった。もちろん、3番目のジャンプも当たり前のように跳んで来る。

それにあの衣装。細かな柄まで凝っている、深い緑のあの衣装。ハイブーツ(に見えるカバー…なんだけどね)もとても素敵。大阪の椿姫のアンコールで椿姫衣装のプログラムの一部は見たけれど、正真正銘ウィリアム・テルがそこにいる。

息を飲んで見とれているうちに、曲が転調する。ファンファーレ。誰もが知っている、ウィリアム・テル序曲のあのメロディ。
ステップに入る前の「決めポーズ」、SS席からでは向こうを向いてしまってたのだけど、A席からはバッチリでした。ここだけは双眼鏡。だって大好きだから、あの表情。A席も買っておいて本当に良かった!ああ、優雅な王子様からかわいくていたずらな少年に。この人はいくつの顔を持っているのだろう。

リンクが少し変型で、所謂長い方が少し距離が短かったようで、ステップはちょっと詰まったような感じもしたけれど、あの蹴り上げも健在で、やっぱり見応え十分だった。ステファンはなんと言ってもスピンだが、私は実は彼のステップも大好きだ。とても表情豊かだ。

空間を埋め尽くす手拍子。会場は最早一体化してしまっている。それはフィニッシュの瞬間まで続いていく。まるで別の世界にいるよう。まさに、熱狂。

フィニッシュへなだれ込んでいく、圧倒的な連続スピン。これほど音楽そのもののようにスピンを回る人を、私はほかに知らない。回りながら高くあげた腕。手のひらがここまで表情を持つものだろうか。もう何も考えられない。ただステファンの世界に飲み込まれるだけ…

ステファンがフィニッシュポーズを決めたと同時に、私は立ち上がっていたと思う。あまりに素晴らしくて、とても座ってなどいられなかった。それでも一呼吸置けば良かったと今は思うけど…。後ろの人ごめんなさい(泣)
会場は総立ちだったと思う。正直客席なんか見てないから、スイス国旗乱舞にも気付いてなかった。でも会場を支配した狂わんばかりの熱気は体全体で感じた。間違いなくあの3分弱の時間、サンドームは福井県ではなかった。ステファン・ランビエールの世界そのものだった。

ああ、短過ぎるよ。とても2分50秒に感じない。もっともっと見ていたかった。何回でも、何十回でも。素晴らしかった。福井行き諦めなくて良かった。
ステファン、ありがとう。この日見せてくれたあなたの世界を、真っ直ぐな情熱を、私は生涯忘れまい。

以下次号。