うさぎパイナップル

主にフィギュアスケートの旅日記とテレビ観戦記とお題記事・ただ書き散らして生きていたい

Fantasy on Ice 2013 in Fukuoka⑪

※この記事は昔書いたものを修正して今更載せています。詳細についてはこちらをご覧ください↓

usagipineapple.hatenablog.jp

 

AIは今回も1曲で退場。入れ替わりに、氷上のバレエダンサーによる日本初公開のプログラム、とアナウンスが流れる。
このプログラムは必ず日本でも披露してくれるだろう、と根拠のない予感を胸に、この日まで一切動画を見ずにいた。ついに今日、この目で動くこのプログラムを味わうことができる。

ステファン・ランビエール。「RUN」。

クリーム色のシャツにグレーのパンツ。パンツはサスペンダーで吊っている。戦前の映画の登場人物のよう。
レオナ・ルイスの歌声に乗せて、静かに滑り始めるステファン。客席に一切視線を向けず、ほとんど止まることなく滑り続ける。その目は何物もを捉えず、ただ虚ろな表情で氷上に軌跡を描き続ける。
ステファンいわく、このプログラムは貧しい青年と身分の高い女性との叶わぬ恋を描いているという。私はその物語をまったく知らずに演技を見たけれど、これはたったひとりで遠い何かを想うプログラムなのだと思った。その何かが叶わなかった想いだったのだろう。遠く離れても、その想いは今も生きている。決して手に入ることはなくても。それを痛いほど思い知らされても。
ああ…。物語を知ってから演技を見たかった…。

プログラムの終盤、孤独な滑りを続けていたステファンが、ショートサイドの間近で立ち止まる。でも誰とも目は合わせない。突然ステージの方向を振り向くと、真っ直ぐにステージへ向かって走り出すステファン。思い出を振り切り、明日へと駆け出すかのように。
そしてプログラムは終わる。

ショートサイドの席はステファンの思い詰めたような表情がハッキリ見えてとても良かったです。切なかったけど。日曜日公演は特によく見えました。髭の剃り跡までわかるくらい。私の視力でそれだけ見えるってことは本当に近いってこと。マリンメッセはあまり広い会場ではないから基本的によく見えたけど、ショートサイドは特にリンクから近かったような気がする。
そんな切ない演技なのに、走り出すステファンに笑いが起こっていたのが演技以上に切なかった(泣)。しかも毎回(泣)。確かに笑いたくなる気持ちもわからないではないが(汗)、でもそこは耐えて欲しかった(血涙)。

どうやら福岡の二日間におけるステファンの調子は上々だったようで、このRUNに関しては確かほとんどミスもなかったし、連続ジャンプを軽々決めてすらいました。

そう言えば土曜日昼公演の例のオヤジ、私の超真剣っぷりが無駄に伝わったものか、ステファンの演技はわりと見てた気がする(笑)。

ステファンは前半の最後に滑ることが多いのですが、今回はまだ次がありました。第一部最後に登場したのは荒川静香
相変わらず似たような曲の似たようなプログラム、だったんだろうか。もはやそれすら覚えてない…。ただ、調子があまり良くなさそうでした。オープニングでも転んでたし、お疲れなんだろうか。疲れならまだいいけれど、鉄壁を誇った彼女の体力や技術に翳りが見え始めたような印象は、アート・オン・アイスの時に感じた以上に強くなった気がしました。
前述の通りショートサイドはリンクと近かったので、荒川さんももちろんよく見えたのですが、本当にこれで健康なんだろうかと怖くなってくるくらいの痩せ方だった…。特に横顔を見てそう思った。余計なお世話ですが、本当に大丈夫なんだろうか。心配になってしまうよ…。

第一部はここで終了。20分の整氷休憩に入ります。
初回公演は右隣の席の女の子と喋って過ごしました。初めてショーを見に来たという彼女。羽生君のファンらしい。自分と1歳しか違わないのにすごい、としきりに感心してました。
…19歳だってさ(遠い目)
でもどうやらいちばん好きなのはプルシェンコらしかった。それは是非ソチへ行くといい。ツアー料金100万超えてるらしいけど。
ジュベールの男の色気にうっとりしていたり、好きなスケーターには声を上げたり、素直にショーを楽しんでいる様子が左隣のオッサンとあまりにも対照的で、彼女のおかげでオバサンに怒鳴られたのも気にせず過ごせたし、一期一会のいい出会いだったなあと思います。あまり楽しそうなので、前のめりで見てると後ろの人に怒られるよ、と言えなかったのは反省点ですが、わざわざ言うのも水を差すようだしなあ。でもやっぱり言わなきゃいけなかったよね、ごめんなさい。
ちなみに座席はぴあで取ったそうである。やっぱりぴあがいちばんいい席持ってる気がする。たまたまかもしれないけど。

残り2公演は夜公演から鑑賞されていたAさんとお話ししてました。日曜日公演の町田君の演技には二人して感動。本当の本当に素晴らしかったですよ町田君。こうやって感想を言い合えるのってやっぱり幸せだなあ。

以下次号。