本当に今更なのですが、ようやく全話視聴しました。評判などを聞いて色々想像していたのよりはずっとスポ根だった、というのが超大雑把な感想かな。面白かったです。テレビアニメを見るのは『金田一少年の事件簿』(わりと最近土曜の夕方にやってたのじゃなくて月曜の夜にやってた方ね)か『巷説百物語』以来じゃなかったっけ。何年ぶりだよ(汗)。
以下、私の純粋な感想です。盛大なネタバレとなりますので、未視聴の方など気になる方はこの先をお読みにならないでください。
とりあえず最初に感じたのは、物語のイメージのベースにあるのは「町田君とステファン」なんだろうな、ということだった。原案の久保ミツロウさんが町田君のファンで、あの町田君現役最後の舞台となった長野のメダリスト・オン・アイスにもいらしていたようだというのは前知識として持ってはいた。何故って自分もまさにその場にいたからである。ガン泣きしていたのであまり周囲に気を配ってはいなかったが(汗)、あのバナーのことを知って、本当にファンでいらしたんだな、と思った。
もちろんあくまでもイメージなのであって、それぞれのキャラクターはアニメーション作品として面白くするために様々に肉付けされた別人である。それは当然なのであるが、それでも、結果が出せぬまま既に引退を考える年齢の主人公、その主人公のコーチを買って出るベテラン、そのベテランの仕草や着用しているコート、そういった端々に、ステファンの振付で滑り、才能を開花させていった町田君の物語がダブって見えた。
きっとこれは、あの突然の引退から立ち直るために作られた物語なのだ。だからきっと主人公は引退しないだろう、そう思いながら見始めた。たぶん、いや間違いなく見当違いなのだけど、私は素直にそう思いながら見ていた。
途中で脱落しそうになったのも事実である。腐った女子が大喜びする展開だとは聞いていたが、う、ううむ、なるほど(汗)。ちょっと、このキャラクターや演出はちょっと、と中盤では慌てた(汗)。
とは言っても、今更腐った表現が見受けられたところで大騒ぎする年齢でもないし、そもそも私はマニアに生まれたにも関わらず周囲も驚いていたほど腐ってる方面に興味がないので、そのうち気にならなくはなった。だいたい、漫画やドラマにおいて自分の気に入った男女は95%くらいの確率でくっつかない、という伝説の持ち主である私は、基本的に恋愛方面には力を入れないで視聴するのである。それは性別が何であろうと一緒。これはグローバルな親愛の物語だと思っておけばオールオッケー!…何度最終回で泣いたことか。特に少年ジャンプは100%だよ100%(泣)←知らんわ
超個人的な事情を差し置いても、最終回まで視聴すれば腐った女子向けの話という程の内容ではないんじゃ、という感想に変わってはいた。そういう風に取れるように仕掛けはしてあるし、それが一番売れるのだろうから、まったく腐った女子を意識してないということは絶対ないとも思ったが。登場人物がほとんど男性なのだからある程度仕方がないだろう。美男子というものはひとりだけでは駄目なのである。複数の美男子(決して美しくなくてもよいのだが、敢えてそう呼ぶ)が登場することで、その関係性に「萌えられる」からこそ想像の翼が広がり、人気は爆発するのである。某アイドル事務所などがいい例だろう。あそこは先見の明があったのだろうな、と素直に感心していたりする。まあ勝手な感想ですけど。
なので、そういう感じの表現が多いから、という理由で見ないのは勿体ないなと思ったし、逆に、そのあたりの表現がもう少し控え目であれば腐った女子的な演出に不慣れな男性などにも面白く見られたのでは、と感じ、少し残念ではあった。身近に脱落してしまった男がいるので。
フィギュアスケートのファンは圧倒的に女性が多いので、女性向けの作品になってしまうのはある意味当然ではあるのだが、現実の競技やこのアニメの内容を見てもわかる通り、実際は殴り合わない格闘技のようなものである。たいへんに熱い。美しく高く舞い上がるアクの強すぎる登場人物たちが繰り広げる、アニメならではの脚色を入れた火花散る熱い物語は、一番好きだったテレビアニメは『Gガンダム』、という私には実は大歓迎の展開なのだった(笑)。たぶん男女問わず面白く感じるポイントはあると思うのだが。男性のファンも増やせそうな内容だっただけに、そこはかなり勿体ないなと思った。まあ、その辺の偏見なく見られるような人物でないと実際の競技には興味を持たないのかもしれないが。
ひとつ誤解のないように加えますが、私は腐ってる皆様を否定しているわけではまったくないです。むしろそちら側の住人になれたらどんなに楽しいだろう、といつも羨ましく見つめていました。少なくとも私の周辺の彼女たちは皆確固たる自己を持ち、ぶれることがなかったから。でも私には素養がなかった。興味をひかれなかった。ただそれだけなのです。
そんなわけで、一番注目して見ていたのはロシアのユーリ君である。放送時間が夕方だったなら主人公は彼だったのかもしれないな。実際、名前からしてももうひとりの主人公なのだろうと思って見ていた。性格などはもろにライバルのそれなのだが、位置付けとしては十分主人公を張れるだろう。勇利君もしっかり主人公なのだが、わりと狂言回し的な側面が大きいように思った。そういう主人公もいるし、重要な場面では視聴者サイドから離れていたように思うので、やはり主人公には違いない。
そもそも、この話は3人のスケーターによって描かれる、シニアスケーターの一生の物語なのだと思った。シニアデビューしたばかりで、今後体格の変化や追われる立場になるなどの試練は待っているにしろ、今はその新鮮な輝きが何よりも眩しい若手のユーリ、選手としては晩年に差し掛かっているものの、だからこそ滲み出る魅力を纏い、様々な葛藤を乗り越えた者にしか描けないステージに立つ勇利、引退のその先に立ち、続行へのモチベーションを探りながら、一時代のアイコンとなる運命を背負って伝説を生きるヴィクトル。それぞれの競技人生のステージに立つ3人が、最終的には同じ競技のリンクで相まみえる道を選ぶ。だから主要な登場人物は皆男子シングルの選手でなければならない。美少女とイケメンコーチの物語などにしても味付け次第でいくらでも面白くなっただろうが、それでは同じステージでそれぞれひとりの人間として戦えない。物語は終わらないのだ。最終回のスタッフロールを見ていると、あの長野のメダリスト・オン・アイスを思い出した。あの日長野で流した涙は、来年もワクワクできるんだ、という笑顔に変わる。それは都合のいい慰めでしかないかもしれないけれど、物語を生み出す原動力などといったものはそういうものでいいのだろう、おそらく。物語の最初に感じたことは間違いではないのかも、と思ったけれど、それはどこまで行っても私の勝手な想像である。たぶん間違いだし。
とは言ってもあくまでアニメはアニメである。実際のスケーターやファンを彷彿とさせる小ネタも数々盛り込まれていたが、それはスケートファンへのサービスと思っておくくらいでいいだろう。仮に共通項が見つかったとしても、アニメはアニメ、リアルはリアル。スケートファンの主な層はその辺りを割り切れずに視聴するような年齢の人間では既にないように思うが(汗)。
まあ、ネタにしたくなる気持ちはめちゃくちゃわかるのであるが。二次元の登場人物であれば「キャラが立ってる」としか言い様のない、個性的なスケーターの面々は本当に魅力的だからだ。ある意味創作よりも創作じみていたりもするが、それでもやはり創作でしか表現できない部分も多々あるのであって、魅力に溢れたスケーターの面々や競技そのものからインスピレーションを受けて物語を創造することにいささかの問題もないだろうし、ついにそういうアニメーションまで登場する時代になったのだなとも思った。まったく鼻につかなかった訳ではないけれど、まあ流してしまえる範囲ではあった。
「俺のテーマ曲」で滑る選手や死ぬほど変な衣装で滑る選手には爆笑したし、これは題材が男子じゃないと出来ないよな、と思った(笑)。演技中に選手が何を考えているかなどは絶対に他人にはわからないので、創作ならではの表現である。実際に宮本先生が振付したというだけあってスケートのシーンは臨場感があった。そこにリアルを求めるなら現実の競技を見た方がいいだろうが、ここで手を抜かなかったことで作品に説得力が生まれていた。このアニメのために作曲したのであろう演技の使用曲の数々もなかなかの聞き応えだった。久しぶりに聞くプロの声優による「いい声」のオンパレードも耳に心地よかった。特に勇利君役の方、素晴らしい演技力ですね。やはり作品に説得力を持たせる要因のひとつだったように思います。グランプリファイナルが最終目標になってるのは大人の事情ですね(笑)。
しかし何と言っても、ステファン・ランビエール氏本人の出演という大事件に勝るものはないであろう。私、彼の大ファンなんですよ(汗)。日本でひとりカラオケにでも行ってる写真なのか?と思ったらまさかのアフレコ風景、まさに青天の霹靂でしたよ…。最終回に彼が登場する、という楽しみがあったのも脱落せずに見られた要因だったかも。たぶん登場しなくても最後まで見たけどね。ロシアのユーリ君はとてもいいキャラクターだと思ったのでどうしても彼に目が行ってたんだけど、そうするとかなり正統派スポ根路線に物語が様相を変え、私にはとても熱く見られたのである。
現在上映中の4DXも、せめてステファンが登場する第三週だけでも、と観に行く計画を立てていたのだが、予想外の出費があったため不可能になってしまった…。たった2500円が払えない程生活に困窮しているという状況に、私はいい加減疲れているのだが、出口は見えないままである。ああ、スクリーンに映る二次元のステファンと映画館に響き渡るあの高い声を堪能したかったです…。心の底から無念です…。