うさぎパイナップル

フィギュアスケート旅日記とテレビ観戦記とその他色々色々・ただ書き散らして生きていたい(ライター始めました2018・生活の糧と居場所募集中)

平昌オリンピック雑感⑫

ええっと…。今日何日だっけ。そろそろオリンピック終盤ですかね。記事が長過ぎてまだ男子について語ってますが(汗)、とりあえずショートについては今回で最終回。過去最強くらいにポエムってますが気合も入ってますのでよろしければ最後までお付き合いください(汗)。


★2月16日・男子ショートプログラム

第5グループ。運命の最終グループ。ついにこの時が来た。四年間待っていたこの時が。
リンクに入る前の羽生君は穏やかな横顔だったが、6分間練習の前の挨拶でギュッと鬼神モードに入っていくのがわかった。帰って来た。羽生結弦が帰って来た。

25:羽生結弦
たぶん皆さんも同様だと思うが、私もサルコウさえ降りればノーミスでいけると思った。競技の何時間も前から、緊張するたびにサルコウサルコウお願いとお守りを握りしめながら呟いていた私は端から見れば完全に不審人物である(汗)。
そのサルコウを美しく降りる。スピンに移る際なども音をそのまま手のひらの先で連れていくようにまったくぶつ切れ感がない。アクセルは心配していない。どうして加点は3点しかないのか。トゥループのコンビネーションも公式練習の様子では心配無用である。羽生結弦以上のタノジャンプが跳べる人を私は思い出せない。
あまりにも美しい。声も出ない。ジャンプが全部成功したあたりから嗚咽しそうになったが耐えた。泣いたらこの2分40秒が見えなくなる。
スピン。ステップ。フッと息を吐くように力が抜けた瞬間の羽生君の、髪の毛の一本からすらも零れる音、激しく踏む足元の刃が奏でる音。透明な音色をまとった指先。
鍵盤を氷の粒が舞う。跳ねる。きらきらと零れる。
これほど美しい演技が今までにあっただろうか。それは溢れ出すピアノの音色そのものであり、それを操る奏者でもあり、羽生結弦というただひたすらに美しい生命体の、すべての一瞬をどこで切り取っても完成されているように極限まで計算され研ぎ澄まされた踊りでもあった。
競技はまだ続く。この先も楽しみでたまらない。だがそれでも、この演技に勝つものがあってはいけないと思った。おそらくそんなものはこの平昌オリンピックのリンクにはほかに現れない。これはもうスポーツではない。その範囲には既にない。人が芸術と名付けた、人間の感覚を美の方向へ極限まで高めたものの最高傑作が、我々の前に現れたのだ。
これは神の選んだ演技だ。神がこの日、この場所で生まれることを定めた演技だ。彼が氷を恋しがったように、氷の神は彼が恋しくてたまらなかったのだ。

羽生君にあってほかの選手には圧倒的にないもの。それは儚さだ。ごく普通の大人の人間の男性であり、その心には修羅すら棲まわせる彼の、壊れてしまいそうなくらいに圧倒的な儚さ。少女のような脆さ。触れてはいけないような清らかさ。それがますます、このバラード第1番をこの世のものではない何かのように仕立てあげる。滑り出す前、小さく上下する肩に彼の緊張を見た。けれど、動き出した彼はもうこの世のものではなかった。男でも、女でもなく、人ですらない。一切の混じりけのない、炎を閉じ込めた氷の結晶。
彼が技術的に圧倒的に優れているだけならば、これほど騒がれることはなかっただろう。素晴らしいスケーターは数多生まれてきたが、彼らは皆人間の世界の住人だった。人ではないものを演ずるのではなしに、人ではない何かだと錯覚させるようなスケーターなど存在しなかった。だから彼は唯一無二なのだ。しかもこの美しさはごくわずかな時間にしか見つけることができない。いつか彼は本当に大人の男になり、競技のリンクを去り、人間として生きていく。まばたきをする間に、この壮絶なほど美しい結晶は手のひらをすり抜けていってしまうのだ。あまりにも儚い、残酷なほど儚い、神がほんの一瞬だけ我々に与えた幻。
この幻に気が付きながらそれを見つめずにいられるなど、私には考えられない。それは人間としてこの世に生まれたことを否定する愚行だ。我々を人間たらしめるもののひとつが、芸術を解しそれを愛すること。そんな風に思うから。

この世ではない何処かで奏でられていた2分40秒が現実に収束されていく。いつものように鬼をその表情に宿らせていない、静かに揺らめく凍てついた炎。あまりにもコントロールされた蒼白い炎が、すうっと消えていった。そうだ、まだフリーがある。今はまだ燃え尽きる時ではない。フリーでこそ、あの炎は世界を焼き尽くすほど燃え上がるだろう。

記録更新するかと思ったが、最後のスピンがレベル3だったのか。なんつーか、もっと加点出してくれ。1すらないプロトコルなのにそう思ってしまう。PCSは満点でいいだろもう。いっそのこと150点くらい出して欲しい、とかなんとかトチ狂ったことを言い出してしまったほど、見たこともないような絶品を越える絶品の演技だった…。て言うかこれに明快な点をつけなきゃいけないのかと思うとジャッジの皆さんの苦労がしのばれる。完全に降伏してらっしゃるジャッジの方いらっしゃいましたね…。お気持ちわかります…。
けれども、この得点もまた運命だったのではないかという気がしてならない。1が3つ並んだそのスコア。ずっとずっと、何年も前から抱いていた予感。このオリンピックの勝者は一時も揺れることがなく定められている。神は羽生結弦依代に選び、ほかの誰も勝たせるつもりがない。

演技終了とともに声を上げて泣いた。世界選手権の時も泣いて泣いて、どうしようもないくらい泣いたのだが、それに近いレベルで号泣した。スローを見るその目が涙で曇る。拭っても拭っても溢れる涙に心底困った。でもネイサンまでにどうにか泣き止んだのはまだフリーがあるから。勝者を確信しているとは言えそれは私の勝手な感情で、ショートプログラムすらもまだ終わってない。この最高の戦いを最後まで見届けなければならない。この日を四年間、待っていたのだから。

26:ネイサン・チェン
世界選手権とこの度の団体戦を見て思った。ネイサンはメンタルが鍵だと。団体戦でそれは確信に変わり、私は彼をメダル候補から外していた。やはりその通りの結果になってしまった…。コンビネーションが跳べなかったのはあまりにも痛い。ルッツは転倒、アクセルも着氷が乱れ手をついた。得点源のジャンプがこれでは点が出ない。実況も泣きそうな声…。順位は随分下だけど得点的には最終グループ以外は団子なのでフリーでかなり巻き返せるとは思うけど…。
衣装はまた変わったんですね。なかなかモードな(汗)。コリヤダの衣装と配色は似てますね←だからどうした

27:ミハイル・コリヤダ
コリヤダも団体戦の様子ではこのオリンピックの空気に飲まれてしまうと思った。アリエフに続いて欲しかったが…。彼もコンビネーションが跳べなかった。得点が入らないためとても痛いミスである。トリプルアクセルは綺麗だったしステップも見応えがあった。ネイサンと似たような失敗だがアクセルがミスなく跳べただけ得点と順位に差がついたのかな。

28:宇野昌磨
団体戦で着氷が乱れたフリップも決まった。アクセルはよく踏ん張って降りたなと思う。中心が空洞だったプログラムに魂が入ったように感じた。演技後の笑顔が本当に楽しそう。団体戦と演技も表情も全然違う。彼のスイッチはやはり羽生君だったのか。ファイナルくらいからずっと寂しそうと言うか面白くなさそうだったように見えてたんだよね。ライバルはいくらでもいるはずなのに、彼らは昌磨君の視界に入ってないのかもしれない。彼が見ているのは羽生君だけなのかもしれない。
昌磨君のメンタルはまったく心配していなかったし、羽生君がいることでそれがもっと強くなるだろうと思ったらやはりビンゴであった。羽生君がいない間自分に集中していた注目が外れたのも良かったのかもしれない。余計なことにあまり惑わされず集中できたのではないかな。

29:ハビエル・フェルナンデス
パーフェクト!パーフェクトハビエル!彼の明るいキャラクターがリンクの空気を変える。羽生君に注目が集まる中静かに韓国入りしたハビエル、ライバル対決で煽りたいマスコミはスルー気味だったが、彼には経験もある。ノーミスさえすれば連覇を阻むいちばんの強敵になると思っていた。そしてその通りだった。世界選手権の王の座を何度も競ってきた羽生君とハビエルの最高の対決がこのオリンピックでも待っていた。それにしてもオーサーの手腕恐るべしである…。

30:ボーヤン・ジン
こんな情感的な出だしでボーヤンが滑るようになるとは…。四大陸よりもさらに素晴らしい演技!ルッツのコンビネーションの速報見て笑ってしまったくらい。ボーヤンのルッツはいい意味でどうかしてるよね。怪我があって少し低迷してたのでしょうがないかもしれないがマスコミがボーヤンなめすぎで、どうなっても知らんからなと冷めた目で見ていたが、どうですかわかりましたか皆さん!

最終グループは息を詰めて見守ったのですが、羽生君が滑ったあとはリンクの脇に集められたプーさんの山がちらちら視界に入るので私の緊張感も続かない…。いいことかもしれない(笑)。
昌磨君がインタビューされてるその後ろの方で待ってる修造氏がちらちら映るのにも吹き出した。昌磨君、団体戦の時はなんかどうでもよさそうなコメントだったのに今回は楽しそう。面白い子だよねえ。
しかし、バックステージで衣装を脱ぎ始める羽生君を天井の辺りにあるのであろうカメラが捉えてたのには焦った…。慌てて映像が切られたように見えたんですが、あのまま流れなくて良かったです(汗)。オリンピックのバックステージのカメラって平気で着替え映したりするよね…。ソルトレイクヤグディンとか(汗)

団体戦で色々言われてた時間帯はやっぱり関係あるかもしれないが、それよりもメンタルの勝負だったと私は思う。となれば日本の二人は何の心配もなく、ずっと凌ぎを削ってきたハビエルがそこに加わるのは納得。ボーヤンやパトリックもね。納得の上位陣だ。その中でアリエフはよく頑張ったと思う。90点を越えたら最終グループで、80点台がいっぱい。団子。メダル争いはさすがに最終グループだけかなと思うけど、全体的にミスひとつで簡単に順位が入れ替わるなこりゃ。

平日だったのでリアルタイムで視聴できない人も多かっただろうと思うが、私が今でも会社員の身分だったら絶対に有休を使ってたと思う。もし休ませてくれないような会社なら辞めます(キッパリ)。それくらい、絶対に見逃したくない、その瞬間に画面越しでもいいから居合わせたい1日だった。今は限りなく自称に近い自由業というほぼ無職なので、誰にも遠慮せず存分に視聴できて幸せでした。冷静に状況考えると最悪なんですけどね、いいんだよもうそんなのあとから考えれば…。あとでもいいことはあとでいい。でも、2018年2月16日は今日しかないんだ。

男子フリーに続く。