うさぎパイナップル

主にフィギュアスケートの旅日記とテレビ観戦記とお題記事・ただ書き散らして生きていたい

プリンスアイスワールド2018 広島公演⑫

さあ、広島公演もラストスパート!第2部の開始です!
前半に出演したゲストスケーターが再び登場。衣装が前半に滑ったプログラムとみんな違うんですよ。刑事君は昨シーズンのフリーだったはず。ぎゃああああ(←落ち着け)。小塚君はバンクーバーショートプログラムの衣装で私半泣き。音切られた…←懐かしい←てか間違ってたらごめんなさい…。たぶんそうじゃなかったかと…
本田君のバレエジャンプに歓声が起きてたのはここだったかな。180°以上足が開いてる!壮観!紗来ちゃんと望結ちゃんもかわいい衣装でした。そしてまた紗来ちゃんが結構なジャンプ跳んでて目ェむいたのがここだった…ような。違ったらすまん。佳菜子ちゃんだけ衣装どんなだったか忘れちゃったけど(泣)、見たことあるやつだったはず。たぶん…。
プリンスチームはこれまたみんな違う衣装で、サーカスって言うか大道芸って言うかピエロって言うか、とにかくそんな感じ。目が痛くなりそうなくらいにすっごい派手。でもそれが面白いんですよ。あの人はこんなの着てる、この人はこんなんなんだ、ってこれまた目が足りないの。金髪のカツラかな、かぶってる女性がかわいかったです。

そのままプリンスチームと安藤美姫のコラボレーションプログラムに流れていきます。テレビで放送された時に、これはショートサイド正面の人楽しいだろうなあ、と思いながら見てたけど、ショートサイドに迫っていく安藤さんを上の方から見るのも面白かったです。かっこよかった…。一緒に踊ってるお客さんもいました。
この曲、平昌のエキシビションでも流れてたやつだっけ。だよね?よく耳にするようになったよなこの曲。確かにスケートには合いそう。
そしてまた派手な衣装のプリンスチームの群舞だったと思うけど、ちょっとここ記憶が曖昧。とにかく「2部もまだまだ行くよ!」と引っ張りあげられそうなオープニング?でした。

賑やかな世界が撤収していくと、スクリーンには町田樹の名前が…。少しざわめく会場。こんなに早く出てくるの?というざわめきだったようだけど、私もそれは思った。
袖のない、メッシュのような黒い衣装に差し色のサッシュベルト。現役の頃と変わらない、少年のような立ち姿の町田樹が滑り出す。
ボレロ町田樹が滑るのは今日が最後になるというボレロ。そして彼のプリンスアイスワールド最後の演技。最後の最後に、本当に最後のチャンスにようやく間に合った。私はただ静かに、彼の紡ぐ世界に身を委ねた。

そもそもこのボレロ、よく考えると変な曲ですよね。子供の頃、親が生協で「名指揮者カラヤンが振った有名な曲ばかり集めたCD」というのを買ってきたんですよ。私はそれが大好きで、何度も何度も聞いていました。今も持ってるけどね(笑)。
そのCDの最後に収録されていたのが『ボレロ』だったのです。正直、最初はどこが名曲なのかさっぱりわかりませんでした。演奏の最初の方は音が小さくて聞こえないし、延々と同じメロディーの繰り返しだし、やたら長いし。退屈な曲だなあ、と全然真面目に聞いてなかった。
でもある日、「同じメロディーの繰り返しなのに何度聞いても飽きない」ということに気付いたのです。だんだん、だんだん盛り上がっていって、最後の最後にようやくちょっとだけメロディーが変わったと思ったら、盛り上がるだけ盛り上がって突然終わる。何だろう。何なんだろうこの変な曲。でもまた聞いてしまう。また聞きたくなってしまう。
そう、私はいつの間にか、「ボレロという曲の持つ魔力」に取り憑かれていたのですよ。きっとこれはそういう曲なのです。だから、数多のスケーターもこの曲を演目に選んできたのではないでしょうか。
音楽のことは詳しくないし、バレエに至ってはまったくわからないのだけど、町田君のこのプログラムは、ボレロという曲の持つ抗いがたい魔力や、曲に潜む計算された狂気みたいなものも表現してるように感じました。ラヴェルの書いた譜面の上で踊らされている我々人類そのもののような。

それは私の勝手な印象でして、町田君の語っていたストーリーは、フィギュアスケートの魔力に取り憑かれて朝日が昇るまで滑り続け、太陽に照らされて割れた氷に沈んでいった男の話、ってな感じだったと思う。実際、「彼」の取り憑かれぶりは相当なもので、その恍惚とした滑りはどこか狂気を帯びている。畳み掛けるようにジャンプを跳び続ける箇所があって、その直後にうまく振付に溶け込ませて休むポイントが入ってるのかな、と思ったのだけど、そのあたりの表情などもちゃんと「取り憑かれてる人」なんですよ。徹頭徹尾、町田樹の世界。
綺麗なジャンプこんなに跳べるのに、とプロ引退宣言をもったいなく思っていたら、一本だけ転倒してしまった。でもその姿が逆に、町田君らしくて印象的でした。町田君としてはもちろんパーフェクトに滑りたかっただろうからこんなこと言ってごめん、と申し訳ない気持ちだけど、絶対この人は世界の舞台で活躍できるのに、ともどかしく思っていた現役の頃を思い出すようで…。あの頃から続く町田君の、演技者としての物語はもう本当に終わりに近付いてるんだ、でもあの頃の町田君はいなくなったわけじゃなく今もちゃんといて、それも含めて町田君なんだ、そんな風に感じて、きっとこれで良かったんだと思ったのです。ごめんね、勝手なファンで…。

上の方から見ていたので、町田君の演じるスケートの虜になった男がリンク全体を使って物語を描いているのもよく見えた。そういう観点で眺めてみると、物語というより魔術の儀式みたいにも思えてきました。ああ、もっと何度も見ていたらもっと様々な視点が持てただろうか。でも、私にはこの1回きり。この目で見るのはこれが最初で最後。この日に感じた印象を、ずっとこの胸に残しておきましょう。
確か約8分でしたっけ、とても長いプログラムなのですが、その半分くらいの時間で終わってしまった印象です。最高潮に達するとともに終わるボレロの音楽のように、突然ブレーカーが落ちるかのごとく真っ暗になり幕切れを迎える男の物語。ラストまで作り込まれた大作でした。あの強制的な感じに終わってしまうあたりも「忘れられなくさせて、虜にさせる」魔術なんだろうなあ。
泣くかな自分、と思ってたけど、見るのに必死で泣いてる暇がなかったっぽい。まあ、視界がぼやけなくて良かった。感傷に浸り切るよりしっかりこの目に焼き付けることの方が大事。ああ、本当の本当に最後に間に合って良かった。この場に居合わせられて感無量です。

…まあ、結局泣いちゃったんですけどね…。てなわけでいい加減長いので以下次号。