うさぎパイナップル

主にフィギュアスケートの旅日記とテレビ観戦記とお題記事・ただ書き散らして生きていたい(ライター始めました2018・生活の糧と居場所募集中)

フィギュアスケートだらだら語り in 2月④

フィギュアスケートに関するテレビ番組の感想を、だいたい「何を今更」なタイミングでひっそり載せるシリーズ。いつも2、3番組まとめてひとつの記事にしていましたが、本日は長くなりそうなので単一の番組のみで記事にします。

てなわけで、本日感想を書くのは、1月29日にNHKBSプレミアムで放送された『アナザーストーリーズ』。
2月4日に再放送があったので(NHKはこれがありがたい)、そちらも視聴してからの感想です。録画機器ないんですわうち(泣)。非常にいい番組でしたので、再放送視聴後すぐにアップしてみます。

稀代のスケーター・羽生結弦について、3人の人間の視点から語られる言葉によってその姿を浮き上がらせていく構成。羽生君本人にはおそらく一切インタビューを取っていないのに、まるで羽生君がそこにいるかのような気がしてくる、非常に興味深い内容でした。

ディック・バトン

最初の視点はディック・バトン。羽生君の前にオリンピックを連覇した、男子シングルのスケーター。しかし、彼が連覇したのは実に66年前。もう90歳近いのに、かくしゃくと毒舌を振り撒く様子は痛快ですらありました。

そう、口が悪いとは聞いていましたが、まあバッサリ(笑)。プルシェンコもクーリックもバッサリ(笑)。頭取れそうってことかい、プルシェンコのスピンは(汗)。クーリックのキリンはみんな思ってただろうけど、そこから先の言いがか…毒舌ぶりには「これ当時本人にも言ったの?」と思わず心配になるほど(汗)。

しかし、羽生君には一切その毒舌を振るわなかったのですよ。それどころか非常に褒めていた。しかもその褒め方が的確だった。思ってることを全部言葉にしてくれた。日本のテレビだからってリップサービスするような人物には見えなかったので、本当に素直に褒めてるんだろうと思います。

バトン氏が素晴らしいと名前を挙げたスケーターはすべて女性で、ジャネット・リン、伊藤みどり浅田真央伊藤みどりのジャンプは規格外だし、真央ちゃんはずっと現役時代を見てきたから何となく分かるけど、ジャネット・リンが今になっても名前を挙げられる理由が、今回初めて理解できた気がする。
演技に流れがあり、ジャンプを跳ぶまでもスムーズで、何より見る人の目を惹き付ける何かがあった。演技を一定時間以上見たことがたぶん無かったので、こういうことだったんだ、とすごく納得できました。

羽生君の演技はひとつの作品として完成されている。いいプログラムや演技は実際の演技時間より短く感じますが、羽生君はまさにそれ。おそらく相当こだわっている音楽編集に始まり、ジャンプ前の無駄な力みのなさ、高く真っ直ぐなジャンプ、多彩なスピン、滑らかなプログラムの流れ。しかも彼はそれを何でもなさそうにこなしている。何でもなさそうに見えるように。

そして、バトン氏の言うところの「劇場」。羽生君の演技に我々が惹き付けられるのは、羽生君の持つ技術の高さだけが要因じゃない。彼はリンクの上で「主人公」になれるのだ、誰よりも情熱的に、誰よりも切なく。彼の中に燃え盛る、冷たくて熱い氷の炎。それはどれだけ技術を磨いてもおそらく手に入るものじゃない。
稀代の表現者に、圧倒的なスケートの技術が備わった。そしてその人生にはおそらく神が筆を加えている。そう、バトン氏の言うとおりもう点数どうこうの話じゃないのだ。彼の場合は点数も付いてくるけれど。
今、羽生結弦以上に面白いフィクションなど存在しない。彼がシニアデビューする前にスケートファンになってて良かった、羽生結弦を見逃さなくて良かったと、私は真剣に神に感謝しています。

バトンさんがあれだけ自信たっぷりにバッサリ斬るのも道理で、彼は3回転ジャンプやフライングキャメルスピンといった今では当たり前になっている技の数々を、世界で初めて行った人物だと言うではないですか。70年近く前の映像を見ても(こんなの残ってるんだ、スゲエ)ブレのない美しい技がわかるのですよね。
こんな実力とチャレンジ精神を兼ね備えた人物だったのか。それじゃ、守りに入ったような演技や、とにかく勝てばいいという演技は面白くないだろうなあ。雑巾を絞ったようなジャンプ、でしたっけ…。バッサリだな(汗)。

ものすごく勉強になる話がいっぱいで、バトンさんだけで一時間やってもいいと思ったくらいです。あと、お父さんが文鎮にしてしまった金メダルにじわじわきました(笑)。

エフゲニー・プルシェンコ

第2の視点はプルシェンコ。彼が羽生君について語る姿は過去にも何度か流れていますが、これまた新しい話がてんこ盛りで、プルシェンコだけで一時間やってもいいと思ったくらいです←さっきも似たようなこと言ってなかった?

プルシェンコが35歳まで現役だった理由がやっと分かった気がしたよ。戦闘民族なんだ、この人。強いライバルといつも戦っていたかったんだ。

彼の最大のライバルと言えばヤグディンしかいないのだけど、ヤグディンは若いうちに引退してしまった。でもそれは股関節の故障のためで、それがなければ彼は現役を続けてたんじゃないかと私は思ってる。
現に、ソルトレイクで金メダリストになった翌シーズンに、彼は普通にグランプリシリーズに出場していた。羽生君と同じように。でも、確か新しいショートプログラムを一度披露しただけで、その翌シーズン、故障が回復せずに結局引退してしまったのである。
あの時の彼の涙を、私は生涯忘れないと思う。私はソルトレイクヤグディンの『Winter』を偶然見てしまったから今があるのです。ヤグディンを選手として応援できたのは本当に短い間でした。今でもあの時のショックは忘れられそうにないです。

ヤグディンの突然の引退によって、プルシェンコは二度と彼と対決できなくなってしまった。彼にもう一度勝つチャンスを失ってしまった。
当分続いた、プルシェンコ一人勝ちの時代。易々とチャンピオンの座が維持できるのならいいような気もするが、強い選手というのはえてしてそういうものじゃない。彼は待ってたんじゃないだろうか。自分と競い続ける、自分と対等に戦える強いライバルを。
私はステファンの大ファンだったので、プルシェンコがステファンの引退を、リップサービスではなしに残念に思ってるのではないかと彼の発言から感じたことがあったのだけど、その理由がこの番組で何となく分かった気がするのです。

でもステファンはバンクーバーを最後に現役には戻らなかった。同様に、次々にリンクを去るライバルたち。孤高の帝王は、いつも氷上に取り残される。
そこに現れたのだ、羽生結弦が。

私は、ソチオリンピックプルシェンコが羽生君にバトンを渡すオリンピックなのだと思ってた(番組内でもそんなこと言ってなかったっけ?違ったっけ、違ったらすみません)。二人の対決にワクワクしてた。結局叶わなかったけれど。
どうやって羽生君を叩きのめすか考えていたというプルシェンコにゾクゾクした。あんなに自分を慕って、大ファンだと公言している年若いスケーターを叩きのめしてやるって。そして自分の身体がおそらく限界に達したと気付いてからは、羽生結弦を叩きのめす選手を育成することに情熱を燃やしてるって。
最高のリスペクトだ。これ以上の褒め言葉はないだろう。

最高の演技は試合でしかできない、というプルシェンコの言葉に私は最高に痺れた。名言が飛び出しまくっていた番組だけど、私はこれにいちばん痺れました。そうか、だから羽生君は今も競技のリンクに立ってるんだ、きっと。

バトンさんとはまったく違う視点からの、おそらくプルシェンコにしか語れない羽生結弦。こんな濃い番組あっていいのか。でもこれだけで終わらないんですよ奥さん!すげえよこの番組…。

ハビエル・フェルナンデス

そして第3の視点は、羽生君のリンクメイトでありまさに同世代の選手として競いあったライバル、ハビエル。日本のテレビが彼にこれだけ長くインタビューを取っているのは初めて見たかもしれない。

まるで穏やかな日だまりのように、笑顔で語り続けるハビエル。その笑顔のように明るい性格なのだろう、だから彼はトップになれたのだ。男子選手は特にメンタルが大きく成績を左右するような気がする。どれだけ実力があったとしても、試合で発揮できなければ意味がない。
それにしても羽生君の平昌の演技見てなかったのか。自分の演技ですら見ないとはびっくりだよ。そうか、演技は見せるもの…。痺れるわハビ…。

表彰式に向かう前だったろうか、羽生君と昌磨君とハビエルが抱き合っておそらくはお互いを称えあっているのであろうその時に、お前最悪!と言いながら泣き出す羽生君の姿は印象深い。羽生君の金メダルが決まって私はギャン泣きしていたのですが(汗)、また羽生君が泣くので「うおおおおハビエル何言った泣かすなあああああ」とさらにギャン泣きし(笑)、でもそんな二人を冷静に見てる昌磨君の平常心ぶりに笑ってしまって、なんつーか平昌の表彰台最高…←日本語崩壊

…で(汗)、その時に羽生君に「僕が君と競技に出るのはこれが最後だよ」という話をした、というのは知ってたけど、初めて他人に引退を告げたのがその時だったのか…。ハビエルがライバルとして認めた人物は、羽生君だけだったんだ。だから最初に告げる相手は羽生君しかいなかったんだ、きっと。
平昌で羽生君のライバルになるのは、昌磨君を除けばハビエルだろうと私は思ってたんですよ。ハビエルには経験があるから。これまでにも何度も頂点を争ってきた二人。表には出さないけれど、心の中で火花を散らしたこともあったでしょう。でも不思議と、その争いには優しさと爽やかさがあった。

同じ目線に立った者。同じ競技を愛する者。おそらく彼らにしかわからない、遥かな高みにある絆。高過ぎるフィギュアスケートの人気ゆえにバッシングにさらされる羽生君を、怪我を抱えた羽生君を、彼はいちばん近くでずっと見守っていた。それと同時に、いちばん近くでライバルとして、プライドと尊敬をもって競いあってきたのだ。彼のたった一人の、本当のライバルと。

世界選手権でハビエルに敗れ、祝福を述べながら泣き出してしまった羽生君を優しく抱き締めるハビエル。こんな美しい光景があるのかと、こんなライバル関係があるのかと思った。このハビエルの、太陽のような包容力は何なんだろう。あの時と同じことを、インタビューの間もずっと感じていました。
羽生君が寒空に凛と輝く白い月ならば、ハビエルは朝の海を明るく照らすオレンジの太陽だったんだ。一緒に宇宙を回り続けていたのに、太陽は自分の空へ帰ると言う。でも遠く離れても、太陽のぬくもりはそっと窓際に残っているんじゃないだろうか。


最後に、3人からのメッセージ。これがもう三者三様で最高なのである。

もう好きなようにやらせてやれ、と言うバトン氏。
4連覇は可能、いや5連覇だって不可能じゃないと言い切るプルシェンコ
今は前だけを見て、いつか後ろを振り返る時が来たら、その道に僕がいたことも思い出して、と微笑むハビエル。

まとめると、「自由に前だけ見て進んだ結果5連覇」なのかな(笑)。って、まとめちゃいけないですね(笑)。

この番組、絶対羽生君も見ると思うんですよ。5連覇発言聞いてひっくり返ったんじゃないか本人(笑)。さすがにプルシェンコ以外考えてもなかったと思うよそれは(笑)。
でもさ、もし札幌がオリンピックの誘致に成功したとしたら、2030年は日本開催でしょ。日本開催のオリンピックで5連覇。フィギュアスケートの競技の性質考えたら、これ以上の伝説向こう100年、もしかしたら200年は生まれないぞ。完全に少年ジャンプですね。ジャンプでも無理。もう古事記とかのレベル?←意味不明

しかしひっくり返ったそのあとに、ハビエルの言葉に涙するんじゃないだろうか。少なくとも私は泣いた。何だろう、この暖かさは。前を向いて進みながらも、羽生君はその暖かさを忘れることはないんじゃないかな、きっと。

ああもう、3人が3人とも最高過ぎる。やっぱりひとり1時間で3時間番組で良かったんじゃないですかね。こんなに1時間を短く感じたNHKの番組初めてだよ。
あと、BGMがプログラム使用曲メインだったのもすごく良かった。こういう細かいこだわりって地味に響くんですよ。


羽生結弦というスケーターへ寄せられる深い愛情と畏敬の念から浮かび上がる彼の「別格さ」。それを語る3人のスケーターの信念と魅力。それらに加え、「フィギュアスケート男子シングルとは何か」ということに思いを馳せる番組でもあったと思う。その上で、思うことがひとつ。

ハビエルのインタビュー内容に被せて、彼のアンチが凄まじいことにもさらっと触れてましたね。うまく隠してるつもりだろうけどコイツもそうだな、って人は確かにいっぱい見てきた。そんな人にこそ、この番組を見て欲しいと思った。
フィギュアスケートが好きだと言えるのならば、この番組を見て何も感じるものがないわけないと思う。トップ中のトップたちが語る信念ある言葉には、ねじ曲げて受け止める余地なんか無かった。「自分の好きなスケーターより人気があるから、勝てないから嫌い」というその本音は、「自分が好きなスケーターを信じていない何よりの証拠」だと、早く気付いて欲しいです。でもまあそんな人、こんな超絶長いブログ絶対最後まで読んでないでしょうけど(笑)。

みんなで楽しく応援したいだけなんだけどなあ。私の知らないことは教えて欲しいし、いい演技には一緒に喜びたいし。「劇場」は観客がいないと成り立たないじゃないですか。どうせなら最高の観客になりたい。みんなでなりたい。

死ぬほど長くなってしまいました(汗)。羽生君関連の記事はいつもこうなるので、書く前に覚悟を決める必要があります…(汗)。
ではでは、また次のだらだら語りでお会いしましょう。今度はこんなに長くないと思います(笑)。



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