長々と書いてきた世界選手権の記事も、本日でついに最終回です。ではでは、エキシビション後半についての感想をどうぞ。
※今日の記事はおそらく現時点でこのブログにおける最長の記事ですが、最後まで目を通していただければ幸いです。
エキシビション②
15:佐藤駿
氷に引っ掛かっちゃったのか、ラスト付近で転倒してしまいましたが、少年らしい瑞々しさのある美しいプログラムで見入ってしまった。これからがとても楽しみです。
16:坂本花織
おや、新しいプログラムかな。天使にラブソングを。
前半は流れる滑りを堪能、後半は明るいキャラを堪能。坂本さんの魅力を一気に味わえる素晴らしい選曲。またどこかで披露してください!
17:シャルレーヌ・ギニャール&マルコ・ファッブリ
やっぱり盛り上がりプログラム枠があるのかな。盛り上がり系の中では落ち着いた雰囲気ですけど。
ファッブリさんのグラサンが好きなんすよねーこれ。西武警察が好きな層にはギュンギュンくると思う←たとえが古い
★?18:宇野昌磨
男子の上位選手はエキシビションになると全員超スケートが上手いのが本当によくわかります。4回転をゴリゴリ入れるプログラムがどれだけ大変なのかエキシビションの度に思い知るという。
結果が思う通りでなかったのでちょっと不機嫌そうというか、自分に怒っているような表情でしたね。でもそれが演技に鋭さを出してていいのか悪いのか…。クリムキンも堪能した。
テレビ放送で流れたインタビューの位置からすると、私が見逃したのは昌磨君だろうか(泣)。インタビューの声が暗くて、相当ショックだったんだろうな…、と伺えて切ない…。昌磨君のコメントは嘘がなくて正直で、私はそういうとこが好きだったりする。
19:ヴァネッサ・ジェームス&モルガン・シプレ
あれ、マイコーじゃないんだ。ヴァネッサさんの黒い衣装がものすごくよく似合ってる。素敵…。
でもラストはやっぱり超絶リフトでした。シプレさんの首とヴァネッサさんのバランス感覚はどうなっとんだ。
20:エフゲニア・メドベージェワ
彼女も新しいプログラムかな。黒い衣装と暗いリンクに赤い羽根がぽつんと存在感を放つ。
マイムで語る、メドベージェワの真骨頂。エテリ時代の文学作品のような彼女を彷彿とさせる。その魅力を失わないまま新しい魅力が備わることが楽しみでしょうがない。また見たいなこれ…。
21:パイパー・ギレス&ポール・ポワリエ
一緒に滑ってるんだけど心は一緒に滑ってないような印象のあるプログラムで、個人的にはものすごく好きです。どんな物語があるんだろうと目が離せないうちに終わってしまうのだった…。
ところで後半の出演者、黒い衣装が続くなあ。追悼のようにも思えましたが、エキシビションは黒を着る選手が多い印象もあるからなあ、どうなのかな。
22:ヴィンセント・ジョウ
新しいプログラム?皆世界選手権用にとっておきを置いていたのかしら。
かっこいいスピンやイーグルや、散りばめた技の数々がエキシビションらしくて見ごたえあった。衣装は日本の高校生みたいでしたけどきっと意味が、意味があるんだよきっと(汗)。
23:エフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ
彼らも小道具がグラス。やっぱりグラスに水入ってる?ザビアコ&エンベルトのグラスはそう見えるだけ?とも思ったけど、これは確実に入ってるような。
バーテンダーかウエイターか、美しい客に惚れたのか。でも結局フラれてる?頭抱えてる。ロシアのペアああああああ!ダブルでフラれたあああああ(笑)。でも落ち込み方はエンベルトさんの方が酷そう(笑)
★24:紀平梨花
テレビ放送は彼女から見ましたが、うっかり寝てて慌ててチャンネル合わせたので気がついたら終わってしまった(泣)。なのでアーカイブがあって良かった…。
このプログラムも国別で見納めなのかな。年齢によってまったく演技が変わってきそうなので、また何年かしたら滑ってみて欲しいかも。今回がいちばん透明な印象でした。
インタビューはサバサバしてて、もう来シーズンに向けて切り替えてるんだな、と感じました。今シーズンほぼ全勝で悔しさもあるだろうに、バチッと切り替えられるの尊敬するわ…。
25:ヴィクトリア・シニツィナ&ニキータ・カツァラポフ
足元ばっかり見てしまう。ただ滑ってるだけの(ように見える)時でも目が離せないってどういうこと…。ロシアの選手の華やかさや美しさは本当にフィギュアスケートに合うなあ…。
★26:羽生結弦
日本で、春先に、桜の季節に開催される大会のエキシビションとしてこれ以上ふさわしいプログラムはないかもしれない。そのためにファンタジー・オン・アイスでこれを選択したのかと少し思った。
テレビ放送は羽生君がトリだったんだけど、どうせ録画放送だしそれで正解だったと思う。花びらを撒き散らしながら去っていった春風の余韻の中で、人はすぐそこに迫った春に、ほころびかけた花の季節に想いを馳せるのだ。それはまだ来ぬ春を待ち望む人々への希望でもある。5日間の熱狂は醒め、日々は現実に還る。その毎日に、余韻のように希望が残る。そのために、このプログラムはこの日に演じられるよう、神が筆を走らせたのだと思うから。
ショーのテレビ放送を見るたびに、演技から感じる印象が違ったのだが、今日この場所にいる「春」は、羽生結弦そのものなのだと思った。氷の中に眠らせてきた炎は黒く蒼く燃え上がり、羽生結弦として春浅い桜の国に再生したのだ。競技者・羽生結弦が。
ハイドロは過去最高に美しかったのでは…。ちょっとゾクッとした…。「耽美なハイドロ」という新ジャンル…←混乱
ほんの1日前、氷の大地を支配した漆黒と金色の魔王が、今日は頬を薄い桃色の春に染める少女のように、儚く繊細に佇んでいる。あの狂気じみた鬼の眼差しは、柔らかな光の宿る漆黒の瞳に変わっている。まるで別人だ。
これだけ表現に差をつけられるのが、羽生結弦の最大の魅力かもしれない。
すごく上手いけど、曲と振付を変えただけで、何を滑ってもあまり差がない、という選手は正直なところかなり多いと思う。得意なジャンルや好きな曲調を選ぶのは大切なことでもあるが、そればかり続くとよほど演技が好みでもなければ印象には残りにくい。
羽生君にも得意なジャンルはあると思うしそれを中心に選んでいると思うが、秋の街角ですれ違った、手に入らない美少年の冷たい横顔のようなショート、大地に赤く溶岩の流れる魔界の扉を開け放って降臨する、死を司る王のようなフリー、そしてこの、春の夜にぼんやりと浮かび上がり、闇にその薄い色の花びらを散らす桜のようなエキシビション。今シーズンのプログラムだけでもこれだけ違う。フィギュアスケートの楽しみ方は人によって様々で、見るポイントも異なると思うけど、技術的なことは何もわからなくても、物語や情感を演技から読み取れるということは、フィギュアスケートや舞踊の類に興味のない人にも足を止めさせる力を持つ。そしてそれは、意外と誰にでもできることではないようだ。
私は非常にセンチメンタルな人間なので(中二病とも言う)、たぶん自分の感性にフィットするんだろうな、と思っている。これまで好きになったスケーターのうち、3人だけ挙げるとしたらヤグディン・ステファン・羽生君だけれど、おそらく私の好みの傾向としては同列だろうと考えている。私がそう思うだけの話です、念のため。
…はあ、このプログラム、生で見たかったなあ(泣)。ここから再スタート切りたかったなあ…。羽生君の演技は、時に折れた心にも寄り添うのだ。そう、希望の光として。
★27:ウェンジン・スイ&ツォン・ハン
このプログラムを見るのはたぶん2回目ですが、その時よりも何倍も美しいと感じました。前回はライブ配信だったからか。やはりテレビ画面で細かいところまで見えると情報量が増えて味わいが広がるな。衣装がこんなに綺麗だったことにもテレビだから気付けた気がする。
小道具の扇を持ったままのデススパイラルやリフトに唸ってしまう。スピードに乗ってたなびく扇の布が幻想的で、彼らの東洋的な叙情性をさらに引き立てる気がする。
金メダリストはアンコールあり。アンコールも美しすぎてアンコールとは思えないくらい贅沢…。この衣装での演技もいいなあ。
シニツィナ&カツァラポフ→羽生結弦→スイ&ハンの流れ、会場いたらたぶん感激のあまり発狂してる…
★28:アリーナ・ザギトワ
珍しくジャンプ転倒。その前にジャケットを脱ぐんだけど、ファスナーが引っ掛かったのかなかなか脱げていなかったので動揺したか。いや関係ないかそんなの…。
アンコールはオペラ座の怪人。フリップがめっちゃ綺麗でした…。プログラムの一部に溶け込ませて跳ぶフリップ、このプログラムでいちばん好きな要素だったりします。
★29:ガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン
見てるだけで満足です。とにかく終わっちゃうのが早いんだ…。浮遊感よりもゴージャス感が前に出てるプログラムだけど、曲調が違ってもやっぱり別格にスムーズで上手い。プログラムあともう3つくらい滑ってくれないかな←無茶言うな
あっ、そうかアンコールあるんだ!もうちょっと見られる!(←歓喜)ピアソラあああああー!あああああー←日本語喋れ←もう無理
★30:ネイサン・チェン
やっぱりネイサンはエキシビションがいちばん好きだな。プログラムがどうこうじゃなくて、ジャンプだけに集中してないので、ネイサンの本来の魅力が堪能できると思う。体幹っていうの?ブレがなくて無理なく心地いいんですよね。身体表現そのものである舞踊や体操などにそれなりに造詣の深い人がディープに取り憑かれるスケーター、という印象。
ネイサンを見ていると、ギリギリ20世紀生まれくらいのはずなのに、80年代からやってきた謎の転校生みたいに思えてきていつも時空が歪む。主人公が憧れてて、ピンチとか助けてくれてかっこいいんだけど最終回で過去とか未来とかに帰る的な←誰か同意して←いねえええええええ
テレビでもアンコールが流れたが、ネメシス?!主催かフジテレビかはわからんが、日本でのネメシス人気を把握しているのだろうか。私の知人にもネメシス落ちいますし(笑)
アーカイブ配信はフィナーレもノーカットで楽しかった。男子によるスパイラル、羽生君見てボーヤン笑っちゃってるよねあれ。足の上がり方が羽生君ひとりだけおかしい(笑)。女子?!思わず笑っちゃってるボーヤンもかわいいいいい←暴れたい
昌磨君もフィナーレでは笑顔が出ててホッ(涙)。羽生君はたまーりんをずっと構っていたが、相変わらず着ぐるみがお好きですな。昌磨君はどーも君にはあんまり興味なさそうだったのに、たまーりんにはなんか…、なついてる?か、かわ、かわい…い←事切れそう←安らかに事切れろ…
ところで、たまーりんの中身は中野耀司君でファイナルアンサーなのだろうか。中身バラすの珍しいですね(笑)。昌磨君が(刑事君も?)中身の人の名前呼んでて羽生君に突っ込まれてるティムさんの動画大爆笑したんですけど…。ポワリエさんの変顔でも十分じわじわくるのに!最!高!に!面白いんですけど!!←力説
それからミハルのTシャツが気になった。ここ一応埼玉ですけどね、と突っ込むのは野暮なんだ、うん野暮だ…(笑)。
以上で終了、というアナウンスが流れている時にザギトワがジャンプ跳んでて、最後の最後にお礼してくれたみたいで、お客さんすごい嬉しかったんじゃないかなー。
以上。今大会はエキシビションを除いた全部の種目を第1滑走者からライブで見ましたが、非常に面白くて時間があっという間でした。最初から見ると競技の流れもわかるし、こんな選手もいるんだ、こんなプログラムがあるんだ、上位の選手はこんなに上手いんだ、と発見もたくさん。
勝負としていちばん面白かったのはアイスダンスかな。超ビリビリきた。フリーの最終グループは演技に釘付けで技術点見てる暇なかったです。
まあでも、羽生結弦に全部持っていかれた、というのが最終的な結論ですかね。久しぶりにヤバい羽生君をまともに食らってしまってまだ頭がグラグラしてます。私、阿修羅モードのおっかない羽生君がいちばん好きなんで…。超怖かった、最高だった…←なんかアレなこと言ってる気もするが(汗)
結果を受けて、酷いこと言われるんじゃないかなあ、とちょっとびくびくしてたんですよね私。でもそんなメディアはたぶんほとんどいなかった。私が見てないだけかもしれないけど。
それは、これまでに何年もたくさんのスケーターが素晴らしい演技をし続けて、それが少しずつ競技への人々の意識を変えてきたことが要因だろうと私は勝手に想像してるけど、今回に関しては羽生君の演技が「劇薬」だったからじゃないかと思っているのですよ。
これまでにも我々国民が「劇薬としての羽生結弦」を目撃するタイミングは何度かありましたが、今回が最も人数が多かったのでは。国内開催ということで会場に足を運んだ人も多いでしょうし、注目度も高かったでしょうからテレビ観戦した人も多いでしょう。しかも生放送。それで羽生君があれをやってしまったわけです。相当強烈に食らった方もいらっしゃるんじゃないかと思います。
上手なスケーター、綺麗なスケーター、強いスケーターは今もたくさんいるしこれからもたくさん生まれてくるでしょう。でも、我々を強制的に、瞬間的に非現実に引きずり込むスケーターはそうはいない。中毒になる、とはこういった感覚なのでしょう。あの鬼神の眼差しに絡め取られ、もう逃げることは許されない。
劇薬故に、それに耐えきれないと強烈なアンチになってしまうのかもしれない。羽生君にはアンチがあまりに多くていつも苦しく、悲しく思っていますが、これも大きな理由かもしれないですね。
そして、劇薬の成分の一つですが、今回の羽生君の「勝利への執念」は、この人はどれだけスケートに、その一瞬に懸けているのかと、多くの人の胸を打つものであったのではないかと思っています。国民栄誉賞までもらった人の、あんなに真剣で真っ直ぐな姿を見て、それでも悪意や見当違いの心配等が口をついて出るなら、もう私はその人と共通の言語は持てない…。
さて、この度の世界選手権は、ライブ配信とテレビでの生中継のお陰で、前述の通りすべての選手のすべての演技を見ることができました。やっぱり生中継はいいですね。緊張するけど、見る側も集中できます。
すべて読まれた方はいらっしゃらないかもしれませんが、ちゃんと全員見て、全員の感想を書きました。その量はおそらく400字詰原稿用紙170枚くらいあると思います。まあ、ちょっと「あたまおかしい」話かもしれません(笑)。
ここまでやった理由は、もちろん競技を見たかったからですけど、実際に「全員応援して全員に心を寄せてみるとどうなるか」というのを目に見える形で実践してみようと思ったこともそのひとつです。この1年半くらいかな、見られた競技に関しては実践するようにしています。
何故実践したのか。それは「平等に報道しろ、偏りなく触れろ」という声にずっと疑問を持っていたから。そしてそう言いながら、嫌いな選手への憎しみをちらつかせ好きな選手のことだけを語り続ける人々に我慢がならなかったから。じゃあ、実際に平等に、偏りのない状態を可能な限り実行してみたらいいんじゃないか、人に怒る前に自分がやってみよう、と思ったからです。
まず全員見るだけでも大変です。皆さんも大変だったでしょう。楽しいからこれはまあいいんだけど。
見るだけならまだしも、全員について語るのはもっと大変です。演技終了直後から、スローやキスクラもチェックしながら急いでメモを取り、採点表などをチェックして内容を修正しつつ、文章としても破綻のないよう完成させていくのは時間がかかります。チェック作業の方が時間がかかるかもしれない。しかもただの素人なので、素人丸出しのことしか書けてなくてしょっちゅう頭を抱えます(泣)。とにかく「自分が感じたことをだいたいそのまま」という感覚で書くことにしましたけど。
私はライターを名乗ってますけど、ブログは完全に趣味でやってます。誰かに依頼されたわけではないし、広告収入にも手を出していません。1円もお金を頂かずに書いてます。むしろ今までにいくらスケートに使ったのか(無言)。絶対この労力と時間をほかのことに使った方がいいのに自分何やってるのかな?アホかな?アホだな(泣笑)
私は「深く狭い」タイプです。心を揺さぶられる演技に出会うことはそれほど多くはありません。本来は、好きなスケーターや演技のことだけをディープに掘り下げて語っていたい方だと思います。どうしても心を惹かれないことも、何故こういう採点になるんだろう、と疑問に思うことも実際にはあります。演技は好きだけど考え方は苦手のこともあるし、人としては大好きだけど演技はそこまででも、ということもあります。
でも、競技そのものを楽しみ、できるだけその選手のいいところを見つけて書くことだけは鉄則として決めています。そうしていると、どの選手も頑張ってるんだな、かわいいな、と思えるようになるんです。こんな選手もいるんだ、この選手はこんないいところがあるんだって、知らなかったことをいっぱい発見できる。これはすごくいい効果でした。そして、ものすごく勉強になります。とてつもない労力がかかるだけあってメリットも多く、自分のためにやっている側面もかなり大きいです。
そもそも私は負けず嫌いで性格も悪いので、好きな選手の結果が振るわないとヘビーに落ち込みます。ヘビーに。こういう人間はたぶんダークサイドに簡単に落ちるので、意識して気をつけてます。自分自身のことなら何を言われてもいいですが、「だからあの選手のファンは」って言われるのはぜったいやだ。
まずヘビーに落ち込まないためにはどうすればいいのかを考え続けた結果、競技のファンでいればいいんだな、という結論に達したこともあり、勉強がてら全部自分の目で見て自分の頭で考えることにしたのです。だから基本は自分のためです。競技のファンになるのは全然難しくないですけど、結構強烈な方に遭遇して抉られることが多いので、基本ラインを強化しようと思って。あとアホなんで単純にルールとか覚えてないですし(汗)
人間ですので、どうしても好みはあります。先ほども申し上げましたが、私のそれはおそらくとても狭いです。心を揺さぶられた演技については相当な紙幅を費やすこともよくあります。それだけに徹する方が圧倒的に楽です。
でも、様々な選手をできるだけフラットな視点で見るようにすることを心掛け、それでもその選手や演技が心に残るなら、それはもうしょうがないと言えるんじゃないかと思うのです。
ただ、好きな選手のことだけを書いていたら、「みんないい選手だと思ってるし、好みはあるけど決して誰のアンチでもない。だけど、それでもやっぱりこの選手のこの演技がいいと思った」という主張や気持ちが全然伝わらないと思った。伝わる人には伝わるけれど、ちゃんと伝わる人はそもそも全員のことに触れなくてもちゃんと分かってくれる。でも、察することができない人もどうやら多いのです。
バイアスのかかってしまっている人にも容赦なく伝えるために、「私はできるだけ偏った視点にならないことを目指してここまでやりました。あなたは?」と堂々と疑問を投げかけるために実践しました。ここまでやっても、偏ってるだの好きな選手のことだけ語ってるだのアンチだの言う人は、もうどうしようもないだろうと。
話が前後しますが、どの選手についてもいいところを見ようとすることで、誰かが大好きな誰かのアンチによって嫌いになりかけている誰かのことをギリギリ嫌いにならずにもいられるんです。そのためにやってる側面もこれまた大きいです。
選手本人が嫌いなら仕方ないですけど、ファンの悪意に削られて嫌いになってしまうのは不本意ですし、大好き大好きと連呼するくせに、そのせいで大好きなスケーターのファンが減っていく行為を助長したくはないからです。
そうです、嫌いになりかけるのはその人が報道が偏ってるとか何とか色々難癖をつけてアンチ対象にしている選手ではなく、その人が偏った愛情を寄せているその人の大好きなスケーターの方です。何度も、何度も、何度もこういったことはありました。それに抵抗するためでもあるのです。好意の裏にある悪意は容易に心を蝕むのです。私は脆弱な人間なので、負けそうになってしまうのです…。
ちなみに、自分の好きなスケーターについては、たとえ偏った特集などが組まれても絶対文句を言わないのは何故なのか教えていただけますか?馬鹿だから、わかんないんで。
報道機関と個人を同列には語れないだろう、とも思っています。ですが、報道にかけられる時間や紙面、資金は有限です。個人ならその上限を上げることも可能です。情熱の力で。が、実際には、忙しい、時間がないと言ってやらない人の方が圧倒的に多いでしょう。本当に時間がないのならそれは仕方がありません。それぞれ生活がありますからね。
でも、全員のことを追えないのなら、どうして「偏っている」と言えるのですか?自分にできないことが、どうして他人にもできると思うの?
あなたは自分のために、自分の好きな誰かのことを扱って欲しいだけでしょう?その人が好きな自分のことを肯定したいだけでしょう?
「では演技をもう一度」と何度も何度も何度も振り返りが流れていた選手のファンの方が、別の選手のファンになって「○○選手に報道が偏っている」とお怒りだったりすると、おいくつか知らないですがボケるにはまだ早いんじゃないですか、と純粋に疑問に思ったりします。私はスケートファンになった当初外国のスケーターばかりが好きな非国民だったので当然彼らの演技が映らないとわめいていましたが、同時に、国内の強い選手が優先的に取り上げられるのは当然だとも思ってました。ほとんどの人はフィギュアスケートに興味なんてないんですよ。自分がたいして興味のないスポーツや芸能人のことを思い出してみてください。自分と同じようにみんなも興味がある、評価してる、そうであるべき、と思うからいけない。
それと、さすが○○選手!この人だけが最高!ほかは不要、みたいな考え方はたぶん対になっている。結局、○○だけが好き、っていうのも○○だけに偏っててイヤ、というのも根っこは同じで、たまたま誰のファンになったか、だけの差ではないのかと。根っこが変わらない限りずっと同じことを繰り返すので、もういっそ根っこから植え替えてみる。私はその植え替え案として、「競技そのものに敬意を払うことだけは絶対に忘れない」と自分に徹底することにしたんです。
これ、効果抜群だったと思います。好みはある。でも、誰のことも憎まずに済む。何より楽しい。その結果としてこのブログもあるわけです。
自称スケートファンだけど結局強烈なアンチじゃん、と精神を抉られることが多すぎてホント泣ける。そういう「歪んだ好き」に対して、わかりやすく、できるだけ納得してもらいやすい形で対抗してみたかった。前々から腹に据えかねてました。黙っていても何も変わらないけど、直接怒鳴ってもたぶん無駄。関わるの怖いし。どうでもよくない相手に、嫌われても直接伝えたいと思った場合以外は。
でも、じゃあ自分にも他人のことをどうこう言えるのかを考えた時に、その立場に自分はいないと思った。
長い間、仕事が忙しくろくにテレビも見られず、録画機器も買えず有料放送も契約できずネット環境も整わず、私の視聴環境はいいとは言えませんでした。その環境でも必死で見ていましたが、本当の意味で競技をまるごと楽しみ、できるだけフラットでいることは難しかったかもしれません。まず、知らないわけですから。
だから、何も言う権利はないと思ってきましたし、今でもすべての試合やショーや情報を追えているわけではないですから、やっぱり何も言う権利はないかもしれない。そもそも権利があると考える方がおかしいかもしれません。私の考えが正しいとも思っていません。
昨シーズンあたりから視聴環境が向上したこともあり、じゃあ見られるものはできる限り見て、偏らないでいられるのかどうか試してみよう、と思ったのです。全員見たよ、と言うだけでは証拠がないので全員の感想を書きました。好きな演技にはどうしても割く熱さが変わってきますが、競技のすべてに関して否定的な感情はできるだけ持たないようにしてきたつもりです。
書くことがすごく好きなので実行できましたが、ここまでしようとしなくていいんじゃない、というのが私の結論です。皆さんがどのように受け取られたかわかりませんが、全員に偏りなく心を寄せた上でそれをわざわざ口に出してみようとしたらこれだけクレイジーな事態になる、と目で見て分かる形になっていることで、今一度「全員応援とは何か」ということを考えるきっかけにしてもらえたら、とうっすら思ってます。
全員のことを追う必要なんてない。それぞれのペースや方法で味わえばいいし好きでいればいいんです。自由でいいし、自由であるべき。スポーツの試合であること、すべてを網羅することはできないこと、あなたは嫌いでも誰かはその人が好きだということ、それを忘れさえしなければ。
こんなことわざわざ書かなくたって、本当は「優しいファンの方」の方が断然多いはず。声高に言わなくても、競技そのものを楽しんだり、小さな試合も丁寧に追っている熱心なファンの方がたくさんいらっしゃるはず。そのはずなんです。でも、なぜかその存在は埋もれがちになってしまう。声が大きければ正しいことになってしまう。それが本当に悲しい。
私は熱しにくく冷めにくい人間です。プログラムや衣装などの小さな単位なら好きという言葉をわりと簡単に使いますが、作品や人間の単位となると、私は本当にそれが好きなのか、年単位の時間をかけて考えます。時間をかけて見極めて、やっぱり好きだしょうがない、とゴーサインを出した時だけ「ファンです」と言います。だから簡単にはぶれません。流行りにはまず乗れませんが。
ぶれないけど、その人が絶対だとは思わないようにしています。その人に関わることならなんでも好き、という盲目的な形の愛情は持てないタイプです。そういう愛し方をしろ!と押しつけてこられるのも苦手です。見極めたけど愛情が冷めることも時にはあります。でも、ファンだと口にしている間は、その人の関係者等を貶めることでその人を信用できない自分をごまかすようなレベルの愛情に甘んじてはいないつもりです。
私はこういう人間ですが、あなたはたぶん違うでしょう。みんな違う。正解はないと思います。正解がないなら、自分はこういう人間だ、と客観的に分析した上で、それを絶対だと思わないようにしてみたらいいのではなかろうか。そう思うようにしたら「○○さんが絶対」という呪縛からも逃れられるかもしれない。
好きなら好きでいいけど、絶対好き、じゃなくてもいいんですよ。無理に皆に好きになってもらおうとするのをやめたらいいんです。誰もわかってくれなくても自分が好きならそれでいいじゃないですか。同様に、絶対みんなを平等に好きでいようとしなくてもいいし、それを誰かに求める必要もないんじゃないでしょうか。本当は大嫌いな誰かがいるなら、なおさら。自分にできないことを人に求めるのはフェアじゃないでしょう。
私は人気ブロガーでも信用ある記者でもない。おそらく誰の心にもこの文章は残りません。長いので飛ばされているでしょう。
でも、こんな気持ちを抱えて書いていることを、一度整理して書き残しておこうと思ったのです。こういう考え方の人もいるんだな、という程度に読んでいただければ幸いです。
いつか全員の感想を書く時間は取れなくなると思います。そうなってもらわなければ困ります。生命を維持できないので。今シーズンで最後になっていて欲しい、残念だけれど。それもあって、この一連の記事の最後に、これを書かせていただきました。
全員のことを書けなくなっても、全員に心を寄せてみることを厭わない人間であったこと、今後もその姿勢でいること、それが伝わるように、今シーズンの記事たちが生きていってくれることを願っています。誰かのことを好きなことは、誰かのことを嫌いだという意味じゃない。そこを曲解しないで欲しい。そして、繰り返しになりますが「全員応援とは何か」ということを今一度考えていただいて、誰にとっても楽しい観戦や鑑賞になるよう、ちょっとだけそのきっかけにしてもらえたらと思っています。隣の席に座っている人が誰のファンであっても、一緒に熱く応援できる世界になるといいですよね。
知識不足のため本当に単なる感想の域を出ず、内容が非常に薄くて申し訳ない気持ちも強いですが、手は抜いていないつもりです。そして全部書こうと思えたのは、試合がとても白熱し、面白く、素晴らしかったからです。書いていて本当に楽しかった。自己満足に過ぎない「全員のことを書いてみよう」という作業をとても楽しく完了できました。
つたない記事を最後までお読み頂き、ありがとうございました。もう国別が始まっているタイミングでしょうし、この記事は読まれないまま埋もれていってしまうかもしれません。それでもこの最終回を読んでくださった方には最大級の感謝を申し上げます。
ではまた、明日の記事でお会いしましょう。
「うさぎパイナップルnote分室」を開設しました。フィギュアスケート以外の話題は2018年9月よりこちらに集約させております。心の叫びや日々の呟き、小説から趣味の話、フィギュアスケートの話も時々、要するに何でもあり。毎日更新中なのでお気軽に遊びに来てくださいね。
note.mu