うさぎパイナップル

主にフィギュアスケートの旅日記とテレビ観戦記とお題記事・ただ書き散らして生きていたい

花束の色は、あの日からの記憶

デニス・テン選手が亡くなってから、1年。

記事は書かない方がいいのだろうか、と思っていたけれど、私がテン君に手向けられる花束は、スケートファンとして彼を語り、その記憶を残すことと、彼の愛したフィギュアスケートという競技を精一杯応援することだけなのだと1年前からずっと考えてました。だから、少しだけ、あの夏から1年の今日に少しだけ、書き残しておこうと思います。


1年前のことは、1年前にブログに綴っていますしもうそれがすべてなので、リンクを置いておきます。とにかく気持ちをぶつけずにはいられなくて、なんかもう自分が剥き出しになってしまっていたし、思い出すのが苦しくて読み返せずにいたのだけど、この記事のためにおそるおそる読んでみて、やっぱり色々記憶が甦って泣いてしまいました。
けど、思ったよりも文章が冷静で(あれでも)、ああやっぱり、一旦文字に落とすという作業は強制的に自分を冷静にしてしまう作業なのだな、それをせずにはいられなかったのだな、と切なくて、苦しかった。

つたない文章だったけれど、やりきれない思いをひとりで抱えざるを得なかった人が、このブログを見つけてくれて、少しでも一緒にテン君を思う気持ちを共有できていたら、とそれだけを願っています。


昨年書いたのは、こちらの記事です。
usagipineapple.hatenablog.jp


usagipineapple.hatenablog.jp



これは本当に個人的なことだし、書いていい話なのかどうかわからないので詳しくは控えるけれど、テン君が突然居なくなってしまってただでさえ頭ぐちゃぐちゃなのに、そんなことわかったってどうしようもないじゃないか、とつらくて仕方ないことがあったのです。あまりにもショックで吐き出してしまいたかったけれど、信頼できる人を選ばないと駄目なんだ、と気付いたのでここには書かない。けど、今も時々思い出すと、つらい。

イレギュラーな出来事が起こると人はその原因を求め、あまりに理不尽な場合は時に日頃の行いだとか前世がどうだとかという話に流してしまいがちだけど、個人的にはまったく関係ないと思う。運命は最初から決まっていて、枝葉末節は人間の意思で変えられても、大筋は変更できないのではないか。出来事はすべて、神が無慈悲なほどランダムなルーレットで決めているのであって、人間に出来ることなど所詮は何もないのではないかと、テン君の事件で私は強く感じました。感じざるを得なかった…。これまでにも感じていたことではあったけれど。

テン君はフィギュアスケート選手としてだけでなく、カザフスタンという国を代表するような傑物になっていくのではないかと、彼が自分のショーで行っていた心配りのエピソードなどを聞くにつけ思っていました。でも神は、その彼にこの運命を選んだ。我々の祈りも通じなかった…。
これが人間の人生なのであれば、後悔しないように、明日も大好きな人に必ず会えると思わずに生きるしかないのだと、強く思いました。


このまま信じることができないんじゃないかと思ってたけど、私の大切な友人が大使館に献花に行った話を聞き、ああ、テン君の事件はどんなに信じたくなくても本当なんだな、事実だったんだな、とどこかで納得し、一応の線引きはできたような気がしています。私は行くことはできなかったけど、想いを託させてくれたスケートファンの友人にはとても感謝しています。
別れの儀式は、生きている者がその人のいない人生を生きていくためにあるのかもしれないと、そんなことを思いました。

J SPORTSが放送してくれた、しかも誰でも見られるように無料放送してくれた、テン君が優勝した四大陸選手権の男子シングルの競技についても、しっかり見て記事にしました。まさに追悼と呼ぶにふさわしい、スケートファンのための番組でした。放送してくださって、本当に感謝しています。私はこの大会を第一滑走者からじっくり見る機会はそれまで無かったし、テン君への番組からの愛情も伝わってきて、ぼろぼろ泣きながら見てしまいました…。


あまり読まれなかった記事だけど、一応置いておきます。全6回です。
usagipineapple.hatenablog.jp



悪い夢だったらいいのに。誰かが「全部嘘だよ」って言ってくれたら、とどんなに願ったか。けれど、1年が経ってしまった。グランプリシリーズ、四大陸選手権、世界選手権。どの大会にも、テン君は居なかった。
テン君は、本当に、もう居ない。

地元開催だったNHK杯には行きました。残念ながら男子フリーの日は最後までチケットが取れなかったんだけど、それ以外の日は全日行けたので、公式練習でヴォロノフのフリーを目にすることができました。練習だから流して滑っていたけれど、テン君が最後に残したもののひとつ、ヴォロノフに振り付けたプログラムをこの目で見ることができた。
ヴォロノフは埼玉での世界選手権には出場しなかったので、昨年はNHK杯しか主だった大会を見に行けなかった私には、本当に最初で最後の機会でした。地元開催でなければ、経済的に絶対行けなかった。テン君の演技を一度もこの目で見られなかった私に、神様がたった一度だけくれた機会だと思っています。
そうやって、テン君が居なくなっても、テン君の面影がいつかリンクから消えてしまっても、フィギュアスケートという競技はこれからも続いていくし、私たちファンはそれを愛して、応援することで、テン君に祈りを捧げ続けることができるのだろうと、NHK杯を熱心に観戦しながら思いました。


そのヴォロノフのフリーの感想も、置いておきます。
usagipineapple.hatenablog.jp


それから、ジャパンオープンでステファンが滑ったプログラムがあまりにも素晴らしく、胸を打ったので、こちらについてもリンクを置いておきます。※思い出して急遽追記しました
usagipineapple.hatenablog.jp



2018-19シーズンは、これまででいちばんたくさんいろんな選手の演技を見たと思う。ネット配信も使って全競技、全選手の演技を見て感想を書いた大会もあった。すごく勉強になったし、面白かった。本当は見てる暇がないくらい仕事に忙しくなって欲しかったんだけど、全然駄目だったしね…。
でも、会場にこそほとんど行けなかったけど、とにかくたくさん演技を見て記事にしていくことで、フィギュアスケートって熱くて面白いな、と改めて思うことができた。

テン君、あなたが人生を懸けていた競技は、なんて美しくて熱くて、素晴らしいんだろう。私はせめて、その面白さを素直に感じて、素直に大好きだと言えるファンでいたい。

もうあなたの姿をリンクの上に見ることはできないけれど、あなたが愛したこのフィギュアスケートの世界に、あなたの生きた証は残っていくだろう。語り継ぎ、思い出し、覚えていること。あなたも誰かの足跡を辿ってきたように、これからあなたの足跡を辿っていくスケーターたちを応援していくこと。それが私たちファンに、できること。
これからも、ささやかでいいから、それを続けていきたい。

やっぱり涙が出てくる。1年前、瞼が腫れ上がって前がよく見えなくなるほど、泣いたのに。
ごめんね、今日だけ少し、泣かせて。明日からまた、楽しくフィギュアスケートを応援していくよ。ほら、また新しいシーズンが、始まる。



「うさぎパイナップルnote分室」を開設しました。フィギュアスケート以外の話題は2018年9月よりこちらに集約させております。心の叫びや日々の呟き、小説から趣味の話、フィギュアスケートの話も時々、要するに何でもあり。原則火・木・土曜日(たまに日曜日)に更新中なのでお気軽に遊びに来てくださいね。
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