うさぎパイナップル

主にフィギュアスケートの旅日記とテレビ観戦記とお題記事・ただ書き散らして生きていたい(ライター始めました2018・生活の糧と居場所募集中)

スケートカナダ2019雑感②

女子に続いて男子ショートプログラム。地上波では3月に収録された羽生君と松岡修造のインタビューが流れたんだけど、お前楽しそうだな…、と思わず羽生君に突っ込みそうになってしまった(笑)。悔しかったんでしょうけどね、この時。だからこそのテンションかもしれないけど、強くなりたい、強くなって強い選手に勝ちたい、という彼の闘争本能みたいなものが滲み出ていて、とても羽生君らしいな、と思いました。
誰もパトリックに勝てなかった頃、そのジャンプの才能や強烈な吸引力を活かすことはもちろん、どうやってパトリックに勝つか工夫してついに追い越して行ったのが羽生君でしたよね。一旦頂点に立った人がまたその挑戦者に戻って追いかけるって、若かったその頃よりも単純に恐ろしいんじゃないだろうか。普通はまた挑戦者には戻れないだろうし…。

ではでは感想をどうぞ。今回長いので、そのおつもりでよろしくお願いしますです←恒例行事


※注記
お名前の前に★印のついている選手は、地上波でも放送のあった選手です。

男子ショートプログラム

第1グループ

1:ジュリアン・ジージエ・イー
バタバタしていて前半見られなかった、無念(泣)。美しいコンビネーションジャンプから見られました(泣)。すごくいい笑顔で挨拶していて、解説からもいい演技だったのがわかるので、半分しか見られなくて無念過ぎる(泣)。


2:ローマン・サドフスキー
4回転サルコウ降りた!素晴らしい出だし!…と思ったのだが、アクセルが抜けた…。コンビネーションジャンプもセカンドが跳べず…。せっかくのサルコウの成功を帳消しにするようなミス。サルコウも回転不足か…。うううう…。
しかしスピンは軸が真っ直ぐで、とても美しかった。織田君が褒めるのもよく分かる。ものすごくスローテンポの『Fly Me To The Moon』の世界観がうまく表現できてたと思います。


3:ニコラ・ナドー
ペアの選手みたいな外見の選手。トリプルアクセルもパワフルでとても良かったですね。単独ジャンプにミスがありましたが、ジャンプ全体としてはそこまで大きな失敗はなかったかな。止まったかと思ったら動き出したり、とても個性的な振付のステップが面白かった。レベル2だったけど…。


4:アンドレイ・ラズキン
ショートから4回転ルッツを入れてくるとは…!着氷は乱れていたが、ちゃんと降りているので得点には繋がるだろう。全体的に着氷が微妙で、ステップの途中?でもつまずいてしまったし、ちょっと演技も慌ててる感があったけど、明るい曲に合わせて楽しく見られました。


5:パウル・フェンツ
グランプリシリーズは1大会しか出ないのか。てか毎年そうなのか。参戦の仕方も人それぞれ。
ジャンプの出来が、すごく悪くもないんだけどそこまで良くも…という感じ。スピンも減点があるのか…。うーん、点が伸びない。生真面目な雰囲気の演技は、あまり似たような選手いなくて面白いんですけどね。


6:ブレンダン・ケリー
とっても目立つ衣装。個性的なアーガイル?柄。
ジャンプが絶不調だった…。トゥループはコンビネーションも単独も4回転のパンクだったのだろうか。スピンやステップもレベルが取れてない。うう…。プログラムはどこか飄々とした空気があって、しっかり滑ることができればかなり楽しいプログラムになりそう。

第2グループ

6分間練習の羽生君から目が離せなかった。彼のファンだからとかそういう意味じゃない。あまりにも美しいのである、動きが。練習から。織田君の言うとおり肩の力が抜けているし、氷のような冷静さが表情ひとつとっても見てとれて、ただの練習なのにゾクゾクするような、冷たい美しさなのである。もし結果を知らずに見ていたとしても、今日はいい演技をするだろう、と私は確信したに違いない。


★7:田中刑事
刑事君のプログラムとしては、衣装も選曲も振付も確かにあまり見たことないかもしれない。この衣装どこにいても目立つからいいかもですね、インパクトあるわ。もっと乗って滑れるだろうとも思いましたが、シーズン序盤ながらかなり曲を掴めてる印象も受けました。名プログラムになるかも。
アクセルは刑事君らしい幅があってすごくいい。サルコウは抜けてしまったのか…。コンビネーションのセカンドもダブルに。ショートにおける致命的なミスとまではいかなかったが、そのあたりのミスがなければもっと点が出ただろうからもったいない。ただ、それだけのミスがあったことやステップのレベルが3だったことを考えても点は出ていると思うから、是非これをベースにもっともっと点を伸ばしていって欲しい。刑事君ならきっと素晴らしい演技を見せられるから。


★8:ナム・ニューエン
トリプルアクセルだけか、ミスらしいミスは。と言ってもちょっと着氷があやしかったくらい。髙橋君が使ってたブルースだが、ナム君の味がすごく出てて私はこのプログラム好きかもしれない。すんごい明るい酔っ払いって感じで(笑)。表情も明るくてすごく良かったです。いい演技でしたね。


★9:カムデン・プルキネン
4回転トゥループトリプルアクセルと立て続けに跳んでくる序盤からとても落ち着いていた。コンビネーションジャンプもばっちりと決まり、ノーミスで演技を終える。とても身体の使い方が大きくて、リンクの端まで気持ちが届くよう。引き込まれます。
フィニッシュの表情もとても良かったです。見ていて嬉しくなってしまった。素晴らしいシニアのグランプリシリーズデビューでしたね。ジュニアの頃からちょっと気になってたんですが、このまま活躍していって欲しいです。


★10:羽生結弦
我々の心をそっと撥ね付けるかのように目を伏せる。それを合図に始まる、どこか遠い国の、透明な氷の色に染まりつつある晩秋の街角の物語。その国は、この世のどこにも存在していないのかもしれない。

晩秋の街角に、少年の姿が見える。濡れ羽色の髪を秋風に遊ばせて、人形のように恐ろしいほど整った横顔に、感情の読み取れない漆黒の瞳を宝石のように嵌め込んで、何も語ることのない唇を横に結んで、まとわりつくような落ち葉が舞う中を、静かに歩みを進めている。
少年はただ、ただその街に在るだけで、それは少年の代わり映えのない日常の一瞬に過ぎない。だがその刹那に居合わせてしまった、その人は。その人は、名も知らぬ美しい少年を、永遠にその名を知ることもなく、もはや二度とその姿に出会うこともないあまりにも美しい少年を、その命が燃え尽きる日まで、目を閉じる度に瞼の裏に思い出すのだ。
決して手に入らない幻。永遠にとらわれた心。悪魔の甲高い笑い声のように吹き付ける風の音。秋風に混じってかすかに耳に届く、胸をかきむしるピアノの音色。振り返るともうそこに、少年の姿はない。
それは、あまりにも甘美な、絶望。

やっと美しい、羽生結弦のあの美しいサルコウが我々の前にも戻ってくる。織田君の解説によるとトリプルジャンプの際にも難しいような入りで跳んでいるという。それだけのことをやってのけながら、サルコウを華麗に降りた羽生結弦は、我々の心を再び撥ね付けるように、その涼やかな目を伏せる。とても、とてもあれだけ加点のつく、高難度のジャンプを跳んだ直後とは思えない。女優が細心の注意を払って撮影に臨んだ時にも、これだけの表情を見せられるかどうかわからない。

トリプルアクセルは満点評価。彼のトリプルアクセルはいつも「満点でいい」と思っているが、その中でももうぐうの音もでないジャンプだったということだろう。溜めや力みが何もなく、まるで踊るようにあまりにも研ぎ澄まされた、氷の結晶が零れるようなアクセルを跳んでいく。

まるで、もてあそんでいるかのようだ。一瞬だけすれ違ったその人の心をもてあそぶように、少年のその腕は秋風を受け止めてしなる。今年のオータムクラシックまでの演技とも、また違う。少年の残酷さが、ただ美しくこの世に在るだけの無自覚な残酷さが、さらに演技から感じ取れるような気さえする。

コンビネーションジャンプは今回も上手く降りてはいたが、羽生君比で加点のつくジャンプではない。本人もファンももうわかっているだろうが、それでも当たり前の選手に跳べる質のジャンプではないことは見てとれる。

ステップに入る前のスピンは相も変わらず絶品である。彼の柔軟性はスピンにも存分に活かされており、これだけ変化に跳んだ、柔らかさや華やかさ、可憐さと美しさに満ちたスピンを回れる選手は男子でも少ないだろう。羽生君のスピンは男子のスピンと言うよりも、女子のスピンのような繊細さを時にあわせ持つのが特徴的だと個人的に思う。私はスピナー好きなので、そういう意味でも羽生君は見ていて面白い選手である。

ステップの判定がレベル3で、ちょっと驚いた。確かにオータムクラシックの方がキレはあったように思うが、そこまで大きな差だったかと言われればそんなことはまるでない。この件については織田君が非常にわかりやすい解説をしてくれた。視聴者が求めているのはこういう解説だと思う。何故レベルが取れなかったのか、そのポイントはどこか。私は見落としていた。一瞬のことで見落とす人も、そもそも気付かない人も大勢いるだろうと思う。そこを見逃さず解説してくれる。織田君の解説は言葉の選び方や話すタイミング、内容も適切で、個人的な意見が入ってもポエム化することもなく、実に優秀な解説者だと個人的には思っている。

些細な綻びではあるがパーフェクトではなかったこともあるのか、秋風の向こうに冷たく消えていく美少年そのものであった前半と比べると、後半は羽生結弦そのものに戻っていた気がする。もっとも、永遠に心を返してくれない残酷な美少年は、異世界の、いやもしかしたらこの世界の、羽生結弦そのものなのだけど。

羽生君の笑顔はどこか穏やかだった。彼は打ち倒すべき目標を、ハンターのその目と本能で的確に、一瞬も目を離すことなく捉えているだろう。決して功を焦ることなく、ただ静かに淡々と、獲物を狙っているのである。彼が最強だったあのパトリックに数年をかけて追い付き、追い越していったように、最強の挑戦者は静かに獲物を狙っている。少女のような微笑みのその下で。

110点超えなかったんだ、と思ってしまった我々はどうかしているよ、ああそうさどうかしている…。ステップのレベルが取れていませんでしたものね。コンビネーションジャンプももっと加点がつくはず。どんなレベルを想定しているのだろう、と我ながら思ってしまう。

人はあまりにも美しいものを目にすると涙しか出なくなるのだと、私はこの日のオトナルに悟った。サルコウを降りた後の、あの静かに伏せた睫毛の下に魔性を眠らせる眼差しを目にしたあたりから、私は泣いていた。涙を拭う暇すら惜しくて、ただ頬を伝うがままに任せながら。
私たちは、こんなにも美しく、研ぎ澄まされ、そして情熱を帯びたものを、過去でも未来でもなく現在として、この目と記憶に焼き付けることができるのだ。これ以上の幸せがあるだろうか。文化を、芸術を、牙や毛皮の代わりに手に入れることを決めた、我々人類に。


11:マッテオ・リッツォ
シンプルなハイネック。黄色というよりは黄色っぽいオレンジ?
どうもジャンプが噛み合わなかった。4回転のミスはともかく、コンビネーションジャンプが結局入らなかったのは痛いな…。リカバリーできなかったか…。
しかし全体的にはやはり上手い。ステップは非常に粋で、素人にも高いレベルが出るだろうなとはっきりわかる足元だった。実力のある選手だから今回の出来は本人も不本意だろうな…。


★12:デニス・ヴァシリエフス
時間的に羽生君で終わっちゃうかと思ったけど、ちゃんと流れて良かった…。ショート4位だったもんね。
コンビネーションジャンプは壁に近くてヒヤヒヤしたが、何とか降りて良かった。ミスではないのだけどGOEがまったくつかないジャンプが2本と、そこまでいい演技ではなかったかもしれませんが、演技全体のまとまり感と言うか、プログラムを作品として見た場合の演じぶりはさすがだったかと。ステップお洒落な雰囲気なんですけど、レベル3なのね。
リンクサイドのステファンの映像があるかと思ったが、キスクラだけ。手の振り方があまりにも慣れているステファンを見届けるまでが男子ショートプログラム!←要らんその主張


いろいろ主義主張はあると思うけど、私はこの羽生君の演技を、地上波という形でたくさんの人に見てもらえて良かったんじゃないかと思う。スケートファンは自力で情報を探し出せるけど、ほとんどの人はそうではないのだから。もう羽生君に「気付いた」我々ではなくて、まだ気付いていない誰かにリーチしなければ、裾野は広がらない。羽生結弦という人は、フィギュアスケートという分野の裾野を広げる力のある人だとも私は思うのですけどね。
そしてできれば、一人でも多くの人に、羽生結弦が今まさに現役選手として滑っているという運命の巡り合わせを、見逃して欲しくないのですよ。もちろん、好みは人それぞれなので強制することはできないけども。

ではでは、次回は女子フリーの記事でお会いしましょう。




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