うさぎパイナップル

主にフィギュアスケートの旅日記とテレビ観戦記とお題記事・ただ書き散らして生きていたい(物書き始めました2018・生活の糧と居場所募集中)

グランプリファイナル2019雑感①

ついにと言うべきか。あっという間に、と言うべきか。ファイナルが始まりました。10月中旬から、いやジュニアのグランプリシリーズから数えるともっと長丁場。数ヶ月にわたる熱い戦いは、今年も決着の時。

まずは男子のショートプログラム。BSでの放送もありましたが、実はそちらは見られなかったので、地上波だけ視聴しての感想です。

羽生君のアップの様子をファイナルの放送で見るのは3年ぶり。やっとこのルーティンが戻ってきてくれて私は嬉しいよ…。アップ中にバナナ食べてるエイモズさんも映る。なんとなくツボりました…(笑)。

男子ショートプログラム

1:ケヴィン・エイモズ
いきなり曲が間違ってかかったのか。集中が切れてもおかしくないのに、それをものともしない素晴らしい演技!ジャンプがすべてクリーンに決まり、トリプルアクセルを降りたあとは表情も演技も非常にイキイキとして、もうリンクすべてを彼の世界にしてしまったみたいだった。ステップもキレッキレ。いやあ、良かったですね。バナナのパワーか?って違うわい(笑)。
素晴らしい演技からスタートの男子ショートプログラム。さあ、ワクワクしてきたぞ!


2:ボーヤン・ジン
煽りで映った18歳のボーヤンめっちゃ細い…。懐かしい…。
最初のルッツはダブル?ダブルなら要素抜けだけどトリプルルッツなら何とか傷は最小限に…。あ、トリプル扱いみたいね一応。リカバリーも4回転トゥループでしっかりと。トリプルアクセルも決まったし、大きなミスは最初だけだったかなと思うけど、全体的にあまりパッとしてなかったかもしれない。どこかピントが合ってない感じ。フリーできっちり調子が合ってきますように。


3:ドミトリー・アリエフ
4回転ルッツのコンビネーション何とか頑張ったな。4回転トゥループも決まりました。ステップでは少しバランスを崩したように見える、やはり減点されてる。採点表は加点も減点もないことになってたけど。暫定ですからな速報は。
いつもより少し動きが遅いように見えたけど、さすがに緊張感があったか。あの二人が飛び抜けているということは疑い無いが、3位のチャンスは誰にでもあるよな今回。
エイモズの時に間違ってかかったのアリエフの曲かな?


4:ネイサン・チェン
4回転ルッツってこんなにサラッと跳べちゃうもんなの…?本当に自然だった…。シーズン序盤は単なる様子見でした、としか思えない演技。構成も本気の構成。羽生君に確実に勝つためにギアを上げてきているのか。まったく隙のない、素晴らしい演技でした。ルッツの加点がすごい数字に。4.44。
なのに!なのに!衣装!何であのベスト衣装から変更?!もし衣装も採点項目に入ってたら、私はマイナスつけるぞ!曲と全然合ってねえええええ!何でだああああネイサンんんん!何でいつも衣装だけはそうなんだああああ(悲)。


5:アレクサンドル・サマリン
煽りで髙橋君の演技ちょっと流れましたな。この曲と言えば彼のイメージが強かったしねえ、ブルース・フォー・クルック。
4回転ルッツ、スピードあったけどなあ。何とか転倒はせずに手をつく。フリップも着氷が良くなかったがコンビネーションに。ステップはレベル2か。ちょっと今日は曲に追い付けてない印象があった。みんなファイナルは緊張するんだろうか。


6:羽生結弦
6分間練習前から漂う、NHK杯とは違う空気。それは演技にも現れていた。NHK杯では「羽生結弦」だった氷の国の青年は、我々の心を掻き乱す、あの壮絶なほど美しい横顔の持ち主に戻っていた。

ピンと張り詰める、氷の色を帯びた空気。かすかに薫る、雪のにおい。それは秋の終わりを告げる合図。
秋の空気に少しだけ混ざる氷の粒が、街角を足早に歩く青年の黒髪に、首筋に、背中にまとわりつく。風に舞って、きらきらと零れる氷の粒は、青年に永遠に心を奪われた誰かにしか、見えない幻。

高く、美しく舞い上がる4回転サルコウ。ただ、青年が振り返っただけのように。ツイズルからツイズルに流れていくトリプルアクセルは、あたかも落ち葉がふわりと風に舞っただけのようだった。それは音楽と物語と世界の一部でしかなく、時間や空気をせき止めるような野暮なことはしない。要するに、完全にプログラムと一体化したジャンプなのである。

あまりにも素晴らしい出だしに息を飲んだが、コンビネーションジャンプにミスが出てしまった。セカンドジャンプが跳べず、大幅な減点。いつもどうにか跳べてしまうのに、今日は上手く合わなかったのかもしれない。

その失敗があったからなのか、それともここがジョニーも滑ったトリノオリンピックの舞台だからだろうか。ステップは過去最高の出来だったと思う。上半身の動きがいつもより大きく、しなやかに、力強く、時に艶かしく、非常に気持ちを込めて滑っているのが伝わってきた。まるでそれは、名も知らぬ美少年が強烈に心に焼き付いてしまった誰かの激しく揺れる心のようで、そして意識に上らないところで誰かの心を掻き乱す、指の隙間をすり抜けていく少年の幻のような美しい姿そのものようでもあった。

コンビネーションジャンプのミス以外は、実に美しい演技だった。スポーツとしての素晴らしい技の数々を盛り込みながら、ほんの一瞬の間に残酷なほど美しい物語が、神の筆で濃密に描き出されただけのようにも感じる。勝負なのでもちろん順位はつくし得点も付与されるけど、彼が我々を熱狂させるのはもっと別の部分にあるのだと、何度も感じていることだけど改めて思い起こさせた。

これが、24歳の羽生結弦が我々に見せてくれる、最後の演技。フリーを演じる羽生結弦は、25歳の羽生結弦。我々の知らない、羽生結弦がもう明後日には待っている。

トラブルでジスランコーチが到着していないとのことで、キスクラではひとり。この様子が、ちょっとゾッとするほど美しかった。
キスクラのバックが、薄いブルーのグラデーションだったせいか、羽生君の白い肌と黒髪が非常によく映えていたのだ。当然ながら失敗に納得がいっていないだろう羽生君の、おそらくは得点に目をやっている伏せた眼光は鋭く、氷上にしか現れないはずの秋の街角ですれ違ったあの少年が、そのまままだそこにいた。
昔話や伝奇に登場する、日本の妖魔や神々や美女とは、こんな姿をしているのかもしれない。ただ座っているだけで、何の演技もせずポーズも取っていない青年が、これほどまでに美しいとは…。我々はきっと、生涯でそう何度も出会えない、本当に美しい何かを目にしているのじゃないだろうか。それを単なる情報として消費するのは、あまりにももったいない気がする。いやそれは、人間に生まれたことを放棄する行為ではないのか、とさえ思う。

松岡修造氏のインタビューに答える羽生君の口からは、状況を冷静に分析する様子が伺えた。ネイサンは強い。相手がネイサンでなければ、逆転は可能かもしれない。しかし、ネイサンとこの点差は正直とても厳しい。彼はちゃんと分かっている。自分がパーフェクトな演技をしても、追い付かないかもしれないことを。
それでも、彼は滑るだろう、勝つために。すべての力をかけて、挑んでくるだろう。君の思うままに、やりたいようにやればいい。何があっても、どんな結果になっても、私は君を信じて、応援するだけだ。


以上。たぶん掲載する頃にはとっくに今更なのですけど、本日から数回に分けてファイナルの記事を載せて行きますので、年末年始のお暇潰しにでもお付き合いいただければ幸いでございます。
ではでは、次回は女子ショートプログラムの記事でお会いしましょう。




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