うさぎパイナップル

主にフィギュアスケートの旅日記とテレビ観戦記とお題記事・ただ書き散らして生きていたい

全日本選手権2019雑感⑥

大会もついに最終日。まだエキシビションがあるけど、試合はこの日で終わり。この20年ほどの日本男子の歴史を振り返りながら噛み締めるような、そんな忘れられない大会になった気がします。

女子フリーと同じく、前半グループはBS、後半グループは地上波での放送。記事も前半と後半の2回に分けてお送りします。後半はとても長い記事になりますが、まあ、いつものことなので(笑)。

男子フリー①

第1グループ

1:渡邊純也
あまりジャンプが得意でない印象があったのですが、今日は素晴らしい出来…!ほぼミスなし。『ある愛の詩』のドラマチックなメロディーを伸びやかに演じ、スピンやステップも正確。ショートに続いて全部レベル4?おおおやはり!
素晴らしい演技でスタートする全日本。彼にとってはラストの全日本。最高のスタートであり、最高のラスト。笑顔の出来になって本当に良かった…!


2:山田耕新
少し詰まったけどトリプルアクセル降りた…!「トリプルアクセルが跳べる銀行員」という魅惑の響き…。
後半でジャンプの乱れは出ましたが、前半は練習時間も限られる社会人とは思えないようないいジャンプが続いてました。選曲のアイディアはお友達だったのね。振付はキャシーか、コレオのイメージが壮大。うん、カッコ良かったです!


3:山本恭廉
衣装でわかりますね、ロミオとジュリエット。膨らんだ肩がかわいい。
かなり痛そうなジャンプの転倒が2回あり、2回目はこのまま演技をやめてしまうのでは、と心配しましたが、最後まで滑り切りました。スピンも非常にキレがありましたし、ラストに跳んだトリプルサルコウも決まった。ビールマンスピンで演技を締め、とてもいい笑顔も見えました。ラストの全日本、気合いを感じる演技をありがとう…!


4:本田太一
フォレスト・ガンプ。本も読んだし映画も見たっけ。感動したいなら映画だろうな、ラストの方のとあるセリフで大号泣してしまうのだった…。彼のノーブルな雰囲気に選曲はとても合ってたと思います。映画の名場面を思い出したわ…。
とても慎重に滑っているように見えましたが、最後は氷の上に倒れ込んでしまった。どこか怪我でもしたのかと心配しましたが、全力を出し切ったのでしょうか。キスクラでの涙…。悔しさなのだろうか、またいい演技見せてね。


5:櫛田一樹
わっ、衣装カッコいい!決して派手じゃないんだけどありきたりじゃなくて、男子の衣装!って感じでクールですごくいい。彼、以前のプログラムの衣装も素敵でしたね。センスのいい人が作ってるのねきっと。
4回転は転倒してしまいましたが、軸は綺麗なジャンプに見えた。ほかに跳んでたジャンプも真っ直ぐで綺麗で、加点がつくのはよく分かるジャンプでしたし。こんな選手が第1グループから出てきちゃうのよね。


6:小田尚輝
棄権とアナウンス。発熱ってツイッターで見たけど、本人も悔しいだろうな…。全日本以外でリベンジできる機会がまだあることを願ってます。

第2グループ

髙橋君がシングルスケーターとして迎える最後の全日本。最後なので6分間練習を映して欲しかった気もするけど、小窓で流しながら髙橋君のショートプログラムの振り返りが入った。もう一度見たかったから、これはこれでありなのかな…。


7:鈴木潤
プログラムは持ち越しかな。ジャンプのミスはいくつか見られましたが、とてもいいコンビネーションジャンプも跳んでいました。何よりも、フィギュアスケートへの彼の愛情が非常に滑りや表情に表れていました。見ている人の心に何かを残していける演技だったと思います。想いをありがとう、思わずそんな言葉がこぼれてくる。全日本、素敵な大会だな…。


8:日野龍樹
衣装かっこええええええ!赤に金の飾りで何となくロシアっぽい。似合う…。カルメンかあ、曲も似合うけど、カルメンになびきそうにないぞ、クール過ぎて(笑)。
クールなジャンプもビシバシ決まる。大きなミスもなかったし、トリプルアクセルは流れもあって綺麗でした。スピンも真っ直ぐで正確。やはり実力者ですね。キスクラでいい表情してたなあ、素敵。


9:吉岡希
いやあ、頑張りましたね!4回転で手をついたり、パンクしたジャンプもありましたが、トリプルアクセルもしっかり決めましたし、なんというか若い牙そのもののような、すごくいい鋭さがありました。
選曲は『ローレライ』でしたが、この曲はジュニア選手が滑るとすごくいい勢いが演技に加わるな、という印象。キスクラではまだ子供らしく見えますが、滑ってる間はすごく堂々としてて良かったです。


10:山隈太一朗
冒頭の表情から演技に入り込んでる。どんなストーリーなんだろうね?
シンプルな水色のシャツ衣装は、彼の豊かな上半身の動きを綺麗に見せてくれてとても素敵。ステップがすごく物語を感じる表情豊かなもので、ラストの誰かに振った手のひらまで、ヨーロッパの海辺の街で繰り広げられる物語を勝手に想像してしまった。ジャンプに多少ミスはありましたが、いいプログラムでした。


11:山本草
4回転サルコウは何とか降りましたが、トゥループで転倒。どうにもパッとせず、心配してしまう前半だったのですが、後半は打って変わったような素晴らしい演技。トリプルアクセル凄かった…。ステップも非常に力がこもっていましたし、前半と後半で密度がまったく違いました。後半が本来の実力ですね、明らかに。フィニッシュの表情もものすごくカッコ良かったです。
キスクラから突然解説が本田君に変わる。無良君はここまでですってCM入る前にアナウンスがあったけど、次が髙橋君だからか?え、実況は…?


12:髙橋大輔
髙橋君の表情は、ゾーンに入りかけている時のものに見えた。美しいトリプルフリップからスタート。トリプルアクセルのコンビネーション。ステップは彼の粘りつくような独特の足さばきを感じる。
後半になってもジャンプを次々降りていく。着氷ミスもあったし、ラストジャンプは転倒してしまった。しかしコレオは本当に33歳の、しかも今シーズンはこの大会しか試合に出ていない選手のものなのか。このスピード、キレがよく洗練された、唯一無二の動き。ああ、これがラストなのか。この余韻がもう少し続いて欲しいけど、ラストなのか…。

髙橋君のいい意味での陰鬱さと特徴的な歩幅、粘性のあるマグマのような踊りのキレ、そういったものを存分に活かしたこのプログラムは本当に素晴らしく、個性的なリショーの振付の中でも抜群の作品だと思っていたので、シングル最後のプログラムとして見られたのはとても嬉しい。最後のジャンプが転倒だったのも、ある意味髙橋君らしいな、と思った。

実況もいつの間にか西岡さんに変わっていた。解説が本田君に変わったことは説明されてたけど、実況が西岡さんに交代したことは特に何も言われなかった気がする。でもこの実況は明らかに西岡さんだ。
髙橋君最後のシングルの演技なのに、第2グループだから西岡さんは実況できないんだな、と少し残念に思っていたので、この計らいには少し泣いた。第2グループの最終滑走を髙橋君が引いたのは、テレビで応援している人々への彼からの最高のプレゼントになったんじゃないだろうか。
最後なのに、技術点カウンターが表示されなくなっちゃってたのは残念だけど。そんなの気にせず目に焼き付けろ、というこれも天の計らいだったかもしれない。

私はちょうど彼がシニアデビューした頃からフィギュアスケートを真剣に見るようになったので、彼の演技は本当に何度も何度も目にしてきた。アイドル的な人気が出始めた頃、大怪我、トリノバンクーバー、ソチ、そして復帰。その昔テレビが彼の演技ばかり繰り返し繰り返し流していたことなんて、最近この競技を好きになった人はきっと知らないだろう。
5年ほど前までは特に、自分の周囲では髙橋君の人気がやはりいちばん高かった。そして髙橋君のライバルとなる選手に対して酷い言い草をするファンにたくさん出会ってきた。日常生活でも、会場でも。その逆に、髙橋君に対して酷い言い草をする人にもたくさん出会った。後者は近年になって非常に増えた。
どちらのファンとも、私はかかわり合いになりたくない。自分は正しい意見だと思ってその言葉を吐くのかもしれないけど、残念ながらすべて筋の通らない悪口でしかなかった。テストで言えば、0点の解答だ。

それらの言葉を聞くのが、どれだけ辛かったか。どれだけ傷付いたか。髙橋君は自分の選んだその道で生きているだけで、好む好まざるに関わらずその演技は素晴らしく、結果も残してきた。誰かに過剰に守られる必要も、過剰に攻撃されるいわれもない。
悪意に引きずられて髙橋君を嫌いにならないよう、どれだけ努力が必要だったか。どれだけ私が悩んだか、きっと伝わることは、ないのだろうけど。
髙橋君が競技に復帰した時、やっと本当に彼の演技を楽しめると思った。その頃にはもう、普通の人という名の病んだ一部のファンはほとんど自分の周囲から居なくなっていたから。正確にはまだいたけれど、自分はもう彼らに引きずられなくなっていた。とても楽しかった。もっと早く、こんな気持ちで応援したかった。
髙橋君は私に、フィギュアスケートのファンでいることの苦しみを教えてくれた人だ。そしてそれを克服することを教えてくれた人だ。もちろん髙橋君が何かをしたわけではなく、私が勝手にそう感じているだけ。

私のような思いをする人が、どうかひとりでも居なくなって欲しい。悲しい思いをすることなく、純粋に競技を楽しめるファンの世界であって欲しい。その願いを込めて、私はこのブログを書いている。この心境に至れて、良かったと思う。髙橋君がいなければ、きっとここには立てなかった。
隣に座った誰かが応援している相手は、自分とは違う人かもしれない。でも、愛する気持ちは皆同じ。そして自分の目に映るものは、絶対じゃない。
それさえ忘れなければ、きっとフィギュアスケートを見ることはただただひたすら楽しい。

髙橋君の競技人生はまだ続く。だから、ありがとう、はまだ言わなくていいと思う。実は同じ中国地方出身の人間同士。応援してますからね。

フィギュアスケートを見始めたばかりの頃のスクラップブックに、今もある記事が貼り付けてある。ある日本人の男の子が、ジュニアの世界選手権で優勝したことを告げる地元の新聞の記事。中国地方の選手のせいか、扱いもちょっと大きめだった。
その少年の名は髙橋大輔、15歳。私が初めて覚えた、日本人の若手選手の名前。


前半グループはここまで。次はいよいよ運命の最終グループ。次回も長い記事となりますが、是非読んでいただければ嬉しいです。




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