地上波に移動して、男子の後半グループです。完全生放送で最高ですね。
ではでは、本日も長い記事となりますので前置きはこのくらいにして、感想を。
男子フリー②
第3グループ
13:中村優
4回転挑んできましたね、転倒してしまいましたが…。ジャンプのパンクなどミスが多く、彼のいいところがあまり出せてなかったかもしれません。ステップは何故レベル1だったのだろう…。きっともっといいロクサーヌのタンゴが滑れるはず、それが見られたらいいな。衣装が細かいところまで凝ってて素敵でしたね。
14:須本光希
後半になるにつれてどんどん動きが良くなっていったように感じます。ラストのラストがコンビネーションジャンプというプログラムなのですけど、ビシッと決まったのでものすごくカッコいいフィニッシュになりましたね。痺れるわ…。
選曲が彼の伸びやかな滑りに合ってる気がします。全日本に戻ってこれて良かったね…!
15:友野一希
4回転トゥループのコンビネーションが決まり、続いて4回転サルコウも決まる。これで完全にスイッチが入っただろうか。ステップは狂気すら感じる素晴らしいキレっぷり。やはり止めた時の動きがいい…。
後半のループがパンクした以外は素晴らしく良かったのでは。トリプルアクセルも素晴らしかったし、コレオからはものすごい気迫を感じた。まさに渾身の演技。滑り終えた本人も思わず涙を流している…。代表争いにどこまで食い込めるか。さあ、高得点が出たぞ…!
16:本田ルーカス剛史
いやー、決まったジャンプ綺麗ですねえ、ルッツのコンビネーションなんてめっちゃいいジャンプでしたわ…。ラストのスピンの終わり方が曲に合わせてあってすごい素敵でした…!すごい、なかなかあそこまでできないぞ。
ここで髙橋君のインタビューが挟み込まれたんだけど、話してる間に涙声になってきて、ああ髙橋君らしいな、ってちょっともらい泣きしそうでした…。でもすごくいい笑顔で終われて良かったよ。最高のラストでした…!長光コーチの代わりに私が泣いておくからね(笑)。
17:木科雄登
うーん、全体的に惜しい演技になっちゃったかもしれない。冒頭のトリプルアクセルは良かったものの、転倒や回転不足などジャンプのミスが多くて、プログラムのカッコよさも出し切れてなかった。ヴァンパイアというテーマがすごく彼に合ってて、いいなと思ってたので残念ですけど、今度はビシッとカッコいい演技が披露できますように…!
18:鍵山優真
全日本ジュニアの再来のようなすっさまじい演技…!4回転トゥループを2本綺麗に決めただけでなく、ほかのジャンプもすべて成功。最後のジャンプはトリプルアクセル…!衝撃…!
ジャンプの質がとにかく素晴らしい。柔らかな膝による美しいランディング、真っ直ぐで綺麗な軸。加点がこれだけつくのはよく分かる。しかもそれを、ベテランの選手でも怯むような構成で…!
驚くような技術点が暫定で表示されていたが、もちろん暫定1位。これはどうなる、表彰台…!
第4グループ
6分間練習前の挨拶で、昌磨君がとてもふわっとした笑顔だったのが印象に残った。なんだかキラキラしたオーラみたいなものを感じたのだけど、それって勝つ選手に出ている独特のものだという考えに私の中では至っているのですね。いつも感じるわけじゃないんだけど…。何となく、この感覚については同意してもらえるんじゃないかな。人によって感じ方は違うと思いますが。
19:島田高志郎
うーん、少し不本意な演技になってしまったか。ジャンプミスが重なってしまった。特にトリプルアクセルは得点源になるはずなので痛い…。後半までスピードもあったけど、彼ならもっとキレ良く滑れる気もしたので、やはり緊張もあったでしょうか。しかし、本当に楽しそうに滑る選手、そこがすごくいい。長い手足を活かしたラストのスピンもすごく良かったです。
ステファン、今日はふたりともキスクラに座ってあげられるから良かったな。
20:佐藤洸彬
4回転降りたああああああああ!あんなに綺麗に!2本目はパンクしてしまいましたが挑んできた!トリプルアクセルも綺麗に決まる!
ラストのジャンプが転倒してしまったところは、もしかしたら彼らしいのかもしれない。ミスもあったけど、最終グループにふさわしい堂々とした、そして彼らしいどこか明るさの感じられる演技で、最高のラスト全日本だったと思います。ありがとう、ありがとう!大好きです!実は私と友人でひっそり応援してたので、もうこうやって記事を書けないのは寂しいな…。
21:田中刑事
もう無理カッコいい、カッコ良すぎた、めちゃくちゃ良かった…。
4回転サルコウ、トゥループとも非常に美しく決まってもうこの時点でガッツポーズ。トリプルアクセルもこらえた。3本目の4回転はトリプルに抜けてしまったけど、全体的に大きなミスはなかったと思う。そしてステップが圧巻。ものすっごく気合いが入っていて、見ていて魂をわし掴まれるようでした。最高に、最高にカッコ良かったです…!
22:佐藤駿
今シーズンのジュニアの戦い、グランプリシリーズから見てて本当に良かったと思う。この僅かな期間での成長を見つめることが出来て…。
4回転ルッツこそ転倒してしまいましたが、それ以外のジャンプは素晴らしい出来でした。4回転トゥループがここまで余裕に見えるとは。切ないばかりの大人しいロミオに強い意志が芽生え、ジュリエットを守るナイトのように、少年の素直さからくる勇気が溢れてきているように、そんな風に感じるとてもいい演技でした…!
暫定の技術点は90点オーバー。さあ、順位はどうなる。少し得点が下がってる?スピンのレベルか?
23:宇野昌磨
ショートに続いて、昌磨君はとても楽しそうだった。前半はこらえたジャンプが多かったが、身体が動き過ぎている状態に思えた。本人も時々そんな話してますよね。
後半になると身体がその状態に慣れてくるのか、しっかりジャンプが決まるようになってくる。昌磨君は後半が強いな、という印象のある選手だけど、今回もそうだった。
跳び方を忘れたようなジャンプや回り方を忘れたようなスピンが続いて、いつもどっしり安定していた昌磨君はどこへ行ってしまったのかと本気で戸惑うほどバランスが崩れていたのに、完全に元の昌磨君に戻っている。戻ったどころか、正確ではあるけど詰め込み過ぎでクール過ぎるようにも感じていた昌磨君の演技に、ものすごくいい意味での「余裕」があった。昌磨君に最後に足りなかったものがそれだったかもしれない。日本で練習し続ける限り、もしかしたらずっと手に入らなかったかもしれないもの。海外で練習する選択肢はないのだろうか、と何となく昌磨君には思っていたものの、何故それが必要なのか私にはちゃんと答えが出せていなかった。こういうことだったのかもしれない。
キスクラのステファンが、リプレイ見ながらいちいちうるさい(笑)。でも、二人ともとても楽しそうだった。昌磨君はステファンを師とあおいでいるというよりは、お兄さんや友達になついているかのような様子である。キスクラ以外の場面でも感じていたことですが。
昌磨君はもしかしたら、リトマス紙のような人なのかもしれない。温かな愛情や正しい指導に包まれたら、素直にその色を出せるのだ。たぶん、そうやって誰かに守られ導かれていることで、本来の能力を引き出せる人なのだろう。
悪くはなかったがすごくいい出来とも言えない演技ではあった。実は、この大会を昌磨君が制する確率は高いかもしれないと思っていた。理由は、前述した「勝つ選手独特のオーラ」を昌磨君に感じたからである。しかし、パーフェクトに滑れたわけでもないし、羽生君は少々のミスでは崩れることのない選手である。いつものように滑れば羽生君が勝つだろう。最後までわからないな、とドキドキしながら最終滑走者の演技を待つ。
24:羽生結弦
金色がこぼれる華やかな紫。魔王が愛でる薔薇の花園をその身に纏って、羽生結弦が滑り出す。
実に4年ぶりに、彼はこの全日本のリンクに立つ。どんなに、どんなにこの日を待ったことだろう。王の帰還というその事実にただ涙が出そうになる。
冒頭は4回転ループ。着氷が乱れる。ループは綺麗に決まらないことも多いし、切り替えて次へ。サルコウはしっかり降りた。ステップもファイナルよりはずっとキレがあったように感じた。あたかも黄昏の薔薇園に佇む、吐息に死を浮かべた美しき魔王のようである。
しかし、トリプルルッツがパンクした。トリプルジャンプでミスが出るとは。着氷もどうにかこらえたが、羽生君が本調子ではない時のジャンプに見えて、不安が鎌首をもたげてくる。
嫌な予感は的中した。4回転トゥループ、4回転やトリプルアクセルからのコンビネーションと、難易度の高いジャンプにいつものように挑むものの、彼の身体ではないかのようにジャンプを美しく降りられない。むしろ、よく転倒せずにこらえていると思うほど。ラストのジャンプはとうとう転倒してしまった。彼の得意なトリプルアクセルであったが。
ショートが素晴らしかった時の羽生君には時々見られることだったが、まるでエネルギーが切れてしまったかのような演技にフリーはなってしまうことがある。今回はそれに加えて、身体か精神の不調が見てとれた。おそらくは身体の方か。連戦による体力の消耗と、勝ち続けてきたファイナルを落としたことのショックとが思った以上に大きかったのかもしれない。
そして、シーズン序盤の調子の良さから忘れそうになってしまうが、彼の足は爆弾を抱えているはずだ。連戦によりその足に無理が来ていると考えてもおかしくない。彼はおそらくその足と付き合いながら現役を続ける覚悟なのだから、何も言わないだろうが…。
やはり得点は伸びない。伸びないと言っても、通常なら十分優勝できる得点ではある。世界のトップ3のうちふたりが同じ国の選手であるということは、こういう結果をもたらすのである。国の代表として見た場合はとても心強いが、同じ国内で最も激しい争いを行わなければならないという点で、厳しい結果にもなりがちだ。
さすがにここまで羽生君が崩れるのは予想していなかった。いつでも「何とかしてきた」選手なのに。ショートでリード出来ていなければ、彼の驚異の集中力でもっといい演技が出来たかもしれないが…。
驚異的な集中力はいつでも発揮できるものではない。いつでも発揮できないからそれは驚異的なのである。体調的な要因かもしれないが、集中出来なかった時の羽生君の演技のように感じた。ここまでどこかピントの外れたような演技になってしまったのは久しぶりではないだろうか。
インタビューでも言葉少なである。昌磨君を気遣ったり、悔しさで言葉を失ったりもしていたのだろう。少し涙ぐんでいたようにも見えた。ファイナルに続く敗戦は、人一倍負けん気の強い彼には相当ダメージが大きいはずだ。やっと戻ってきたいつもの場所で、いつもの結果を出せないもどかしさ。しっかり表彰台に載っていて、決して悪い結果ではないのに。彼はそれに甘んじることができない人なのである。
しかし、ある意味この絶不調が国内大会で良かったのではないかという気もしてしまう。羽生君の実力なら、ショート落ちでもしない限り実績で代表には選ばれるだろう。久しぶりの連戦で色々感覚が鈍っていたかもしれないし、取り戻していくきっかけになるのではないか。国内大会を軽んじるという意味ではなく、彼の実力など様々な要因を考えれば、いちばんダメージが少なくて済むのが今シーズンでは全日本のような気がする。
表彰式で羽生君に言葉をかけられ、みるみる涙目になっていく昌磨君の姿に泣きそうになってしまった。羽生君に勝つことだけが目標だ、といった話を彼はよくしていたと思う。その時がついに訪れたのだ。羽生君が明らかに不調だったので心中複雑そうではあったが、とても嬉しかったことだろう。羽生君に素直に祝福されて、複雑な想いも少し解けたのかもしれない。こんな風に涙する昌磨君の姿は、初めて見たような気がする。
羽生君も、弟のように可愛がっている昌磨君の活躍や復調が本当に嬉しかったのだろう。彼らはライバルだけど、同時に仲のいい兄弟のような穏やかな関係でもある。こんなライバル関係があるのか、と驚くほどに。なんという清々しい青年たちなのだろう…。このふたつの美しい宝石を前に、讃える言葉以外は何も見つからない。いや、それ以外は必要がない。
ただ、羽生結弦はこれで黙ってしまう選手では絶対にない。久しぶりに四大陸にも出場するそうではないか。四大陸のタイトル、実は持ってないもんな。彼がどう対策を立てて四大陸のリンクに現れるのか、期待して待つとしよう。
そんなわけで、男子の競技は数日では咀嚼しきれないほどの情報量をもって終了した。オリンピックメダリストたちが如何に飛び抜けた存在であるかを実感させられ、彼らに憧れた若い力に感心させられ、リンクを去る選手たちのえもいわれぬ演技に心を揺さぶられ、大好きだった選手がコーチとしてその手を取った選手の優勝で幕を閉じたことに万感の思いを抱いた、本当に私にとっては濃密な大会だった。
この記事を読んでくださった方がどなたのファンなのかは私にはわからない。大喜びしている人も、悔しさに泣いている人もいるかもしれない。どうかその心が誰かや何かに牙を向ける前に、少しだけ私の思い出を聞いて欲しい。
私はステファンの大ファンだった。正確にいつファンになったかは覚えていないのだけど、2006年頃からは確実に応援していたと思う。
ステファンの現役最後の競技は、バンクーバーオリンピックだった。ステファンは優勝を目指して復帰したが、結果は4位。僅差で表彰台を逃した。
フリープログラム『椿姫』を滑り終えたステファンがあまりにも悔しそうな表情をしていたことを、私は今も忘れられない。あんなに怖い顔をしたステファンは、見たことがなかった。それは今も胸に棘のように刺さって、抜けない。
あの悔しそうな顔が、ステファンの最後の演技となってしまった。ショースケーターとして、コーチとして、今も多くのファンから愛され、日々を充実して生きているであろうステファンは、きっととても幸せなスケーターだろうと思う。私も彼のファンでいられて幸せだ。
けど、ふとした瞬間に、あの表情が甦る。結果が振るわなかったとしても、本人が納得して現役最後の試合を終えられるなら、それは最高のフィナーレと言っていいだろう。しかし、ステファンは、おそらく結果も納得も得られないまま、現役生活に幕を引かねばならなかった。
勝負は勝負。結果は結果。仕方がない。ステファンがバンクーバーを最後としたのは彼の決断であって誰のせいでもない。日本男子に初めてもたらされたメダルが、とても誇らしかった。表彰台の選手たちは素晴らしかったと思う。みんな頑張っただけ。誰も何も悪くなんかない。
でも、あんなに喜べなかった、はしゃげなかったオリンピックは、バンクーバーだけだ。ごめん、本当にみんなごめん。
私のスケートファン人生で、あれより辛いことは、おそらくもう無いのだと思う。だから、応援している選手がどのような結果になっても、ある意味達観していられるのかもしれない。競技を続けている限り、報われる瞬間はいずれまた訪れるから。
そうだ、「これで終わり」と言われない限り、また栄光や笑顔には出会えるかもしれないのだ。
髙橋君が何故勝てないと分かっていても現役に戻ったのか。おそらくその理由のひとつは、中途半端なままで引退してしまった心に納得をもたらすため。納得したからこそ、彼は次のステージに進む決意をしたのだろう。それは何よりも彼のための選択だけれど、きっとファンへの優しさでもあったはずだ。自分もファンも納得して「お別れ」ができることの重要さを、彼はきっとわかっていたのだと思う。
だから、悔しさややりきれなさのあまりに、その落としどころを誰かや何かに求める前に、少しだけ待って欲しい。その行為はおそらく、誰かや何かを悪意をもって見つめることになってしまうから。
あなたの大好きな誰かが諦めてしまわない限りは、また喜びに胸を震わせる日に、出会えるかもしれないんだよ。
どんな選手にも好不調があり、時間の制限があり、いつも同じように状況を受け止めることは我々には許されていない。それは「安定」が欲しい人には苦しいかもしれない。だが、自分の心に安定をもたらすためだけなら、結末が決まっている『水戸黄門』でも見ていた方がいい。誰かの人生に付き合うということは、決して読めない展開に付き合うということ。しかも自分には介入できない、見ているだけの展開に。その覚悟を持てなくなった時、最初から持てない者が誰かの人生に触れようとした時に、アンチは生まれるのだと思う。
どうか、あなたの好きな誰かを信じて欲しい。あなたの好きな誰かが愛するものを信じて欲しい。そして、愛する誰かはあなたとは違うかもしれないけど、あなたと同じように誰かを愛している人がいることも、忘れないで欲しい。そして何よりも、忘れないで欲しい。フィギュアスケートは、スポーツだ。氷の上に人生を描き出す、スポーツだ。スポーツとは優劣の付く、シビアで残酷なものでもあるのだ。けど、だからこそ、面白いのである。
どうしても悔しい人は、欲しかったもの思い切って買ったり、美味しいもの食べたりしてサッパリしてみて欲しいかな。単純に楽しいかもしれないですし。
これを書きながらも、あまりの濃密な数時間に、うまく記事をまとめきれない。際限なく長くなってしまいそうなので、ここで終了します。
世界一面白くて、世界一辛い大会、全日本。すべての出場選手たちに、最大限の拍手を送りたい。そして、最初の引退に泣き崩れたほど大好きだった、スイスからやって来たコーチに。現役を退いても、スケーターの人生は続く。そして時に彼のように、新しい形で我々に喜びをもたらしてくれる。バンクーバーの結果に重い気持ちになったあの頃の私、ステファンが毎年全日本に来ては伝説を作っていってめちゃくちゃ楽しいから、そんなに落ち込まなくても大丈夫だからね。
どんな喜びもいつかは終わるけど、どんな悲しみもいつまでも続かない。だから、どうかまた、あなたや、あの選手や、この選手が、心の底から笑えますように。
ではでは、次回はエキシビションの記事でお会いしましょう。これを書いている現在、我が地域では放送が一週間先のため待ちぼうけです…。地上波放送の時間にはローカル枠の特番をやっておりました…。全日本の記事の掲載が少し遅くなったのはそれが理由です(泣)。
「うさぎパイナップルnote分室」を開設しました。フィギュアスケート以外の話題は2018年9月よりこちらに集約させております。心の叫びや日々の呟き、小説から趣味の話、フィギュアスケートの話も時々、要するに何でもあり。週1、2回のペースで更新中なので、お気軽に遊びに来てくださいね。
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