うさぎパイナップル

主にフィギュアスケートの旅日記とテレビ観戦記とお題記事・ただ書き散らして生きていたい

グレーの闇

今週のお題「怖い話」


あれはもう10年は前のことだったでしょうか。私はとある温泉施設を訪れていました。

浴室から海を望める温泉は、風光明媚のひとこと。景色とお湯をひとしきり楽しみ、近くの観光施設なども見学して、私は帰路につこうとしていました。
温泉施設を通過するバスはそれほど多くありません。最終便には間違いなく乗ろうと、私はあらかじめきちんと時刻を調べてから訪問していました。

しかしです。温泉の気持ちよさにぼーっとしていたものか、私はその最終便に乗り遅れてしまったのです。

その施設は島に在り、お世辞にも交通の便がいいとは言えない場所でした。バスに乗り遅れてしまったら、もう帰る手段がありません。
しかも季節は冬。慌てている間にもあたりは日が暮れてどんどん暗くなっていくではないですか。

一応、万が一乗り遅れた時のために、少し離れた港まで行けばバスが出ていることはあらかじめ確認していました。こうなったらそこまで歩いていくしかありません。
初めて来た土地で道も良くわからないけど、来る前にお店などを調べたりしてなんとなくの地形は掴んでるし、行きのバスの中からも景色は見てる。何とかなると信じるしかない。祈るような気持ちで、私は港へ向かって歩き始めました。

とっぷりと日が暮れた島には、民家どころか街灯すらありませんでした。暗視カメラ?で撮影された映像があるじゃないですか、画面がグレーでなんとなく人とか物とかの形がわかるやつ。たとえるならあんな感じ。ひたすらグレーの闇。もちろん人の姿なんてありません。

もうね、気が気じゃない。もし道を間違えたら遭難しかねない。自分がどこにいるのかもわからないし。きっと港にたどり着けると信じて歩いていましたが、内心心臓バクバクでした。
しかも、温泉施設でうっかり買ってしまった美味しい水を抱えて歩いていた私。島で湧き出た水らしく、こんなの見たことないや、面白い、と思って買ったんですけど、これペットボトルじゃないの。瓶入りなの。しかも一升瓶みたいな大きい瓶に入ってるの。
重い…。ただでさえ不安で疲労感が募るのに、さらに腕に重みがずしんと…。

自分のアホさ加減を呪いつつ、私はひたすら夜道を歩きました。正直泣きそうでしたがいい加減大人なのでもちろん我慢。
よくテレビ番組で、心細くなった幼児たちが『となりのトトロ』の主題歌『さんぽ』を歌い出すのを私はずっと不思議に思っていました。日本の幼児は全員歌えるんじゃないだろうかあの歌。でも何で同じく日本の子供が一度は通過するであろうアンパンマンじゃなくトトロなんだろうと。
…私も歌ってましたよ、頭の中で。グレーの闇の中でひたすら歌ってました。歩かなきゃしょうがない状況をこれほど励ましてくれる歌がほかにあるでしょうか、いやない。子供たちの気持ちが死ぬほどわかった。トトロ偉大。偉大過ぎる。今すぐねこバス通りかからないかな←現実逃避

そのうちだんだん灯りが見えてきました。もう昔のことなのではっきりとは覚えていませんけど、海沿いの道をひたすら歩いていたところ、無事に港に到着したんじゃないかと思います。まだバスの出る時間帯だったので、どうにか自宅まで帰り着くことができました。

あんな真っ暗な道をひとりで延々と歩いたのはたぶんあの時だけだと思います。夜の闇がこんなに恐ろしいものだとは知りませんでした…。今思い出しても怖いです(泣)。

皆さんも交通機関の時刻には十分に注意して、乗り遅れないように気を付けてくださいね…!!!決して私と同じ状況にはならないように!!たまたま私は無事に帰れただけですから…。



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