うさぎパイナップル

主にフィギュアスケートの旅日記とテレビ観戦記とお題記事・ただ書き散らして生きていたい(物書き始めました2018・生活の糧と居場所募集中)

生半可には愛せない・はてな版⑤ ~羽生結弦~

特に好きなスケーターについて個別に語ってこそっと掲載するシリーズ。一応今回で最終回の予定でございます。

こそっとさらっと綴るつもりが、結局いつものように長くなっております(汗)。過去記事も読んでいただけたら嬉しいです。私は誰かのファンと言えるまでに時間をかける傾向にあり、ファンだと言い出した時点でそう簡単には冷めなくなっているという愛の重いタイプなので(汗)、こういったタイトルとなっております。

第5回は予想していた方も多いですかね、「羽生結弦」さんです。過去におそらく最も文字数をかけて演技の感想等を綴ってきたスケーターなので、個人的には今更感もあるのですけど、「ファンになった過程」みたいなものを個別に綴ったことはたぶんなかったと思いますので、そういった視点で書いてみようと思っております。


羽生結弦」という名を初めて聞いたのは、彼がまだ小学生の頃だったのではないかと思います。スケートの雑誌などで、期待の若手として取り上げられているのを見て覚えたのでしょう。
2006年に地元広島で開催された全日本ジュニア選手権に行けなかったことを、私はいまだに後悔しております。東北から凄い子が来るんですよ、と知人が熱弁をふるっていた少年。それが羽生君だったのですから。

記憶がもう曖昧なので間違っているかもしれませんが、私は映像で羽生君の演技を見るよりも前に、会場に足を運んで直接自分の目で彼を見たはずです。
その、初めて肉眼で彼を見た機会が、2010年の春に開催された「ダイヤモンド・アイス」。シニアに転向する直前だった羽生君を、この子があの噂の子か、と感心しながら見つめた記憶は今も残っています。
あの「ダイヤモンド・アイス」は、私にとって転機となったショーでした。あれがきっかけで、全国各地に足を運ぶようになってしまいましたので。

まだ粗削りながら、明らかに原石以上の輝きを持つ羽生君にずっと注目してはいましたが、あくまで日本代表のひとり、くらいでゆるく見つめていた私が「落ちた」瞬間は、たぶんあの時です。2010年の年末に開催された「メダリスト・オン・アイス」。

まず、個人演技として披露した「ヴァーティゴ」に相当ノックアウトされました。この子には日本人の男の子にありがちな「てらい」がない。自分を表現することに躊躇いがない。ここまで「俺を見ろ」的なオーラをこの若さで出せる子はそうそういないと思った。必ず世界の頂点に立つだろう、と直感しました。
が、とどめを刺されたのは実はその時じゃないのです。

それはフィナーレでのこと。フィナーレっていろんなスケーターが登場して、どこ見たらいいかわかんなくなるじゃないですか。なので、ステファン・ランビエールのファンだった私は、とりあえずステファンにフォーカスを合わせていたんですよね。
しかし私は、自分の近くに強烈なオーラみたいなものを感じて、思わずステファンから視線を外してしまったのです。

何かを感じた方向に、惹き付けられるように向けた私の眼差しの先にいた人物。
そうです、それが羽生結弦、その人でした。

何故お前はちゃんと俺を見てないんだ?と言われてしまった気がした。もちろん羽生君はそんなこと言ってないだろうし、そもそも私なんぞ見てもいないと思います。それでも思わずそう考えてしまった程に、彼からは逆らえないような強烈なオーラが滲み出ていました。席がわりとリンクに近かったので、余計にそう感じてしまったのだと思います。

あの時に気が付くべきだった。私はこの稀代のスケーターの切れ長の黒い瞳に絡め取られて、もはや逃げ出せなくなっていることに。

…同じタイミングで落ちた方がいらっしゃったら是非教えていただきたいんですけど、かなり間違いなくいないような気がしてます…。落ちるタイミングってもっと色々あるはずなのに、何でそんなわけのわからないところで…(汗)。でも、私にとっては忘れられない思い出なのですよ。あああ見てなくてごめんなさい、って土下座しそうになってましたし(汗)。
この時、羽生結弦は僅か16歳。少々意味はわかりませんが、私はこの時確かに、王者の片鱗を彼に感じたのです。

それでもこの時点では、まだファンと名乗ってはいませんでした。あくまで気になるスケーターのひとりという位置付けでしたね。自分よりうんと若い羽生君については、親戚の子供を見守るような心境に近かったですし。


それから約3ヶ月後に起きた、東日本大震災。あの時、仙台の親戚と、東北の知人の次に心配したのが、羽生君でした。親戚と知人は直接無事を確かめられるけど、赤の他人の羽生君はそうはいかない。まだ彼はシニア1年目、スケートファン以外にはさほど名前も知られていなかったはず。テレビなどで安否情報を流されるような立場でもなかった。やっと情報が入ってきた時は、本当にホッとしました。

2012年の世界選手権も思い出深いですね。そう、かの有名な『ロミオとジュリエット』。氷に激情を叩きつけるような羽生君の姿には、見る者の視線を釘付けにする、などという言葉では足りない何かがありました。
まるで畏怖の対象の前に、目を逸らせずに硬直して立ち尽くしているかのようだった。それは、メダリスト・オン・アイスのフィナーレと同じ感覚でした。
逃げられない。我々はもう逃げられないのだ。この透き通るような白い肌の、一見少女のようにも見える華奢な少年から。たった17歳の少年から。

ほかに強烈に印象に残っているのが2013年のグランプリファイナル。この日本から、想像以上にとんでもない怪物が生まれたのではないかと、震える思いがした。こんなに早く、パトリック・チャンを追い越すなんて。手がつけられないくらい強かった、あのパトリックを。
ソチでも表彰台の可能性はあるけど羽生君はどちらかと言うと平昌の金メダル候補だろう、さすがにソチの金はパトリックだろう、と思っていた私はこのファイナルで考えを変えました。これは羽生君にも十二分に優勝のチャンスがある。わからなくなってきた、と。

果たして、ソチを制したのは羽生結弦でした。ソチは深夜の放送だったので、徹夜で見てそのまま仕事に行った記憶があります。表彰台で見せた笑顔が、普段彼が出さないようにしてる少年らしい素顔みたいで、すごく可愛いな、と思ったことをよく覚えてます。どこかの番組が撮ってきたプルシェンコからのメッセージを見て「このビデオください」と真剣な顔で言ってたのも忘れられないです(笑)。爆笑しました(笑)。


自分はこのスケーターのファンなのだと最終的に私が結論を出したのは、おそらく2014年のカップ・オブ・チャイナ。そう、あのファントムです。

何度も書いていることなので、さらりと綴るだけにとどめますけれど、あの上海のリンクに現れた羽生結弦が本当の羽生結弦なのだと、私は勝手に思っています。普段彼が何重にもかけている理性のリミッターが外れ、彼の内に潜む狂気とも呼べるスケートへの執念が顔を覗かせた瞬間。おそらく、これが最初で最後でしょう。

少女のように儚い姿でリンクに佇む、黒髪の華奢な青年の身体に眠る、背筋が凍るほどの獣の本性。透き通る白い肌を染める、流れる血の赤。
この世のものではなかった。この世のものとは思えないような光景が、今この瞬間に現実の世界に展開していた。現実とは紙一重の位置にある非現実。人間の枠を出なければ開けられないその扉が開く瞬間を、見てしまったような気がした。

数多の芸術家や文学者が目指したであろう境地に、アクシデントがきっかけとは言え僅か19歳の青年が易々と辿り着いてしまった。辿り着いてしまったことを日本中が同時に目にすることとなった。本当の恐怖はそこにあったのではないか。人は想像もつかなかったものを前にすると恐れおののき平静を失う。恐怖に耐え切れなかったからこそあんなにも批判という形で抵抗せずにいられない人々がいたのではないか。今もそんなことを時々考えてしまいます。

いいか悪いかは抜きにして、こんな人物はほかにいない。世界中を見回してもいないかもしれない。メダリスト・オン・アイスのフィナーレや、ニースのロミオとジュリエットに感じていたものの正体がきっとこれだったのだ。私の中で、すべてが繋がった気がしたのです。

あまりに早く頭角を現したせいか、羽生君にはアンチも多かった。強烈な悪意を振り撒くスケートファンが怖かった私は、羽生君のファンだと口にすることを躊躇っていました。けれど、このカップ・オブ・チャイナあたりから、私は自分に勝手にかけていた規制を解いたような気がします。

やっと、覚悟ができたのです。私はもう、この青年から逃げられないのだと。おそらく、人生が終わるその瞬間まで。


なので、私がいちばん好きな羽生君は「アサシンの眼差しでリンクに現れるおっかない羽生君」です。こんなに勝つことにこだわる気の強い青年、近年見かけないような気がします。そう、私は羽生君の気の強さが大好きなんですよ。その気の強さと勝利への執念から生まれてきた名演技の数々は皆様の記憶にも新しいところではないかと思います。

ひとつだけ挙げるとするなら、やはり2017年の世界選手権でしょうか。逆転勝利をもたらしたフリー、『Hope & Legacy』。フィギュアスケート史上最高の演技だと言っても過言ではないかもしれない、と私は思っています。神は羽生結弦依代に選び、ほかの誰も勝たせるつもりがない。羽生君が滑り終えたその時、声を上げて泣きながら私はそう思いました。次に同じことを思ったのが、平昌オリンピックです。

オペラ座の怪人』と『SEIMEI』も大好きですね。前者は非常に美しいプログラムで、実はまた演じて欲しいとこっそり思っています。後者はもはや説明不要の、羽生結弦のマスターピースですね。私が今5歳くらいの子供だったら、「カッコいい!俺もフィギュアスケートやる!」って絶対言ってると思います(笑)。SEIMEIについて語り出すとキリがないので、こんなもので(笑)。

いい意味で変態の域に達している絶品のトリプルアクセルと多彩なスピンも大好きです。そもそも最初に羽生君に注目したポイントはスピンだった気がします。スピナー大好きなもので。
使用曲の編集も非常にこだわっていて好きですね。変なブツ切れ感がほぼないため、曲の違和感を気にせず演技に入り込める。とても細かいことですが、音楽が欠かせないフィギュアスケートという競技においては非常に重要な要素ではないでしょうか。どんなに素晴らしい演技でも、音楽の違和感が気になってしまって演技に入り込めなかったことが私は何度もあるので。

また、フィギュアスケートの鬼と言ってもいいくらいの彼のその姿は、まるで少女のように華奢で儚い。その凄まじいギャップには、いつも眩暈がする思いです。
繊細な競技に携わるだけあって、繊細な感性の持ち主でもありますよね。おそらく繊細過ぎるくらいの。「Continues ~with Wings~」でファンに語った本音を、私は忘れることができません。映画館の客席で号泣してしまいました。これからもずっと応援しようと誓いましたね。そして、彼にフィギュアスケートがあって良かったとも。彼を守ってくれるのは、時に彼を傷付けるかもしれない、そのフィギュアスケート以外にないだろうと。

インタビューなどでの言葉の選び方にもいつも感心しています。ごく若い頃から非常にしっかりとした受け答えのできる、聡明な選手だなと感じていました。
すべての方向をカバーして、なおかつ自分の言葉で正直に綴られたコメントには何度も唸ってきました。羽生君の年齢や性別を考えると、ここまで気を遣えるコメントは普通言えない、と心から驚いたこともあります。視野の広さと視点の高さ、そして想像力。羽生君にはそれらがすべて備わっている。逆に言えば、これらが欠けている場合に他者は傷付き、争いは起こるのでしょう。

こう綴るとまるで完璧な人物のようですが、スケート以上によく滑るかもしれない寒いギャグ、リュックからイヤホンをどんどん出してくる時などに見せたオタクの本性、嵐の櫻井翔さんに「写真を撮ってくれ」と頼むミーハーさ、エゴサを隠しもせずむしろファンを煽ってくるスタイル、等々、等々。
何だお前。お前何だ。ツッコミどころ満載過ぎるだろ。何なの(笑)。ええもう、本当に普通の青年なんですよね、羽生君は。少々マニア気質の。子供の頃絶対ボールペン分解してたでしょ?(笑)

個人的には、眼鏡姿が大好きです。超好きです。最近あんまりかけてないですね。コンタクトにしちゃったのか?またかけて欲しい。できるだけ細いのがいい。その眼鏡でエキシビション滑って欲しい。でも眼鏡邪魔だからすぐ外してもいい。冷たい眼差しで投げ捨てるように外して欲しい。全勢力を傾けてアリーナ席を取る←そろそろ黙れバカがバレる←もう遅い


羽生君は、試合はテレビで見られるし緊張するから、とアイスショーを中心に出向いていた私のポリシーを曲げさせた人物でもあります。ショーでは何度も何度も見てきたけど、どうしても競技の羽生君が見たいと、全日本やNHK杯のチケットを取るようになりました。しかし、その度に羽生君が怪我などで欠場…。
神様は私に羽生君の演技を見せてくれる気がないようですが、何とかこの運命には勝ちたいと思っております…(泣)。近年は私の生活が底辺過ぎてチケットどころじゃないのですが(泣)。来月も家あるかな?と毎月怯えて暮らしているよ、とほほ。

こんな底辺ではまるで説得力ないですが、いつか羽生君に取材できるくらいになってみたい。まあ寝言ですけど。
取材云々は置いておいて、羽生君のことを綴るのは本当に楽しいです。「これ本当に同じ人が書いてるんですか」って何度か言われたくらいに、羽生君の演技の感想を綴る時はポエム化してしまいます(汗)。綴らずにはいられないのです、自分の感性のすべてをもって。

そうやって綴っていくことで、羽生君のことを書き残したいという欲求を満たしているのかもしれない。歴史上の偉人を近くで見ていた人々はこんな気持ちだったのではないかと、私は羽生君に魂を震わせられる度に思うのです。せめてその活躍を後世に伝える礎のひとつになりたいと。
この閉塞した時代に神が遣わせた青年。それが羽生結弦なのではないか。いつの頃からか、私はぼんやりとそんなことすら思っています。

ああ、できることなら今すぐ15歳くらいの男の子に生まれ変わりたい。スケートやってる男の子に。羽生結弦のライバルになりたい。勝てなくても勝手に勝負を挑むライバルになりたい。今生では叶わないその夢の代わりに、私はこの稀代のスケーターについて綴らずにいられないのかもしれないです。


近年は進退を取り沙汰されることも増えてきましたが、あのスケートが大好きなスケートの鬼がそう簡単に自分の演技に納得して氷を離れはしないだろう、と私は勝手に考えてます。あくまで私は、ですよ。
どうかこれからも、彼の思う通りに進んでいって欲しい。その選択はいつだって間違っていたことがないから。
誰かのファンになるということは、その人を信じることではないかと私は思っています。羽生結弦ほど信じさせてくれる人はほかにいないかもしれません。

時にすべてのフィクションを霞ませるほどの存在、羽生結弦。彼の現役時代を見逃さずにいられる幸せを、私は日々噛み締めています。目を離している暇なんてない。これからもその活躍を、静かに熱く、熱く見守っています。いつか絶対客席から試合を応援するから、待っててください。



※本日の記事は、過去にnoteに書いていたフィギュアスケートの記事の再掲です。noteの方で読んでくださった方がどれくらいいらっしゃるかわかりませんが、スケートメインのブログであるはてなの方がよりたくさんの方に読んでいただけると思い、掲載からある程度時間も経ったことから改めてこちらにも掲載しました。

note掲載時に、スキやオススメ(サポート)をしてくださった皆様、本当にありがとうございました。普段なかなか反応をいただけないので嬉しかったです。特にサポートは生活が助かったので本当にありがたかったです、後光が射して見えました…(涙)。はてなも、特にアカウントがなくてもスターがつけられるようになったらいいのになあ。

・このシリーズの過去記事は「アレクセイ・ヤグディン」「ジェフリー・バトル」「ステファン・ランビエール」「町田樹」というラインナップになっております。もしご興味ございましたら、読んでいただけたらとっても嬉しいです。


元の記事はこちらです↓
note.com




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