うさぎパイナップル

ただ、書くことが好きなだけです。

Fantasy on Ice 2012 in Fukui⑩

※この記事は昔書いたものを修正して今更載せています。詳細についてはこちらをご覧ください↓

usagipineapple.hatenablog.jp

 

荒川さんの演技の途中から、既にもう落ち着かない。入退場口に彼の姿を認めると、また目頭が熱くなる。

目の疾患でショーにも出られなかったけど無事にリンクに帰ってきた、氷上のバレエダンサー、そんな感じのナレーションが流れる中、もう遠くからでも見間違えることもなくなったあのシルエットが暗がりの氷の上に滑り出してくる。

ステファン・ランビエール
プログラムはチャイコフスキー、ヴァイオリン協奏曲。

彼にとってのお祝いの色だというボルドーの上下。サッシュベルトと肩のデザインが昨年と異なっていた点でしょうか。
そう、新潟以来1年ぶりのヴァイオリン協奏曲。あの日のことを、私は一生忘れないと思う。あの時あのチャイコフスキーに出会っていなければ、今の私はいない。あの日、ステファンが私に歩き方を思い出させてくれた。新潟で世界初披露だった、ステファンのチャイコフスキーが。
どうしてももう一度、このプログラムを見たかった。
それが、この目で見たステファンが復帰して最初に滑ったプログラムになるなんて。こんな形で再びめぐり会うことになるなんて。この感情を、どう書き表していいのか私にはわからない。
会場にも、これを読んでいる人にも、誰ひとりそんなことを考えながらこのプログラムを見た人はいないだろう。これは私の、本当に個人的な想い。でもこの想いを外してこのプログラムについて述べることは私には出来ない。
私にとって特別なプログラム。万感の想いを込めて、私はステファンの姿を目で追った。

ジャンプが6回。時間も長く、まるで競技のようなプログラム。技術やコンディションを保つために作られたプログラムだというのも納得できる。
一番出来が良かったのは土曜日昼公演だった。押し寄せてくる感情であまりにも胸がいっぱいでよく覚えていないけれど、ステファンは、ステファンはリンクに戻ってきたことが嬉しくてたまらないように見えた。その笑顔も、体から発する空気も、喜びに満ち溢れているようだった。その姿に、涙はやはり溢れそうで、でも溢れることはなかった。だってそれ以上に、嬉しかったから。楽しそうなステファンに会えたことが、嬉しかったから。

土曜日夜公演はジャンプの調子が悪く、転倒まであって、日曜日はうまく着地をごまかしたりはしていたもののやはりジャンプは微妙で、韓国から続けてのショー出演だしやはりまだ本調子ではないのだろう、というのが見て取れてかなり心配だったのですが、それでもその動きの優雅さ、情景が浮かぶような滑り、音楽そのものであるかのような身体表現のひとつひとつ、それらのすべてはいつまでも見ていたいと思わせる程のものでした。

オペラの劇場に忘れ物を取りに行った男性が、さっき見たオペラの場面を思い出している、という物語が込められたこのプログラム。きっとその男性が思い出している光景は素晴らしいものだったのだろう。素晴らしいものを思い出す、それはすなわち喜びではないだろうか。ステファンが表現しているのはその感情なのだろう。けれど福井での彼の演技にはそこに、彼自身の滑る喜びが足されて、溢れ出しているように私には見えた。2年前にまさにこの福井で彼が見せてくれた、あの幼子のような笑顔が、そこにはあった。

結局目の病気とは何だったのか、詳しいことはわからない。でも彼は今こうしてリンクに立っている。もうそれだけで、それだけでいい。病気の話を聞いた時、神様はこの人からスケートを奪ったりはしないと思った。それを信じて私は回復の知らせを待ち続けた。どうか神様、これからも信じさせてください。そしてどうか、いつまでも彼が健康でいられますように。どうかいつまでも…。

残念だったことがひとつだけ。土曜日昼公演は私の前方のSS席前列に幼稚園くらいの子供が座っていたのですが、この大人向けのショーを子供が飽きずに最後まで見られるはずもなく、第一部の途中からうろうろ歩き回り、フェンスから身を乗り出したり階段に座ったり…。


ウロウロすんなぁアアア!気が散る!!(怒)

しかもそれをステファンのチャイコフスキーでもやられたのである。もう本気で「出て行け」と叫び出しそうでした…
子供の連れがどうやらおばあちゃんらしいというのも絶望的だった。注意なんてする訳ないよね、孫だもん。孫には甘いものと相場が決まってるもん。
きいいいいいいいい(暴動)
とりあえずあの子供が将来悪い男に引っかかったり冷蔵庫に隠しておいたプリンを食べられたりすればいいと思いました←小さい

この福井で見たチャイコフスキーのことも、私はずっとずっと忘れないでしょう。このプログラムで再び彼に巡り会えたことを、運命の神に感謝します。この独りよがりなセンチメンタルをここに書き残すのはどうかと思ったけれど、でもこの感動を忘れたくないから、やはり記録しておきます。
ステファンは私というファンがいることも知らないでしょう。私たちは同じ時代に生きているけど、その糸が交わるのは奇跡のようなもので、そもそも交わることなど決してなく、いつも一方的に私が影響を受けるだけ。でもステファンがあの新潟で私にくれた感動は今でも私の宝物です。私は生涯あなたを忘れない。たとえあなたが、私がどれほどあなたに感謝しているのか、気づくことすらないのだとしても。
元気になって良かったね、ステファン。楽しそうな姿に会えて本当に良かった。氷があなたを離す日が来ることはないでしょう。あなたが氷の上にいる限り、私はいつまでも応援し続けます。きっとこの人生の終わる、その日まで。

以下次号。