うさぎパイナップル

主にフィギュアスケートの旅日記とテレビ観戦記とお題記事・ただ書き散らして生きていたい

アイスショー旅日記・前フリ

さて、ぼちぼちとアイスショー旅日記を載せていこうかなあと思います。

あれは今を遡ること14年前、ソルトレイクシティーで行われた冬季オリンピック。たまたまテレビでフィギュアスケート男子シングルのショートプログラムを見ていた私は、あるスケーターの演技に衝撃を受けました。それは、私のフィギュアスケートへの固定観念を完全に覆してしまう演技でした。こんな表現の方法があるのかと、こんな芸術がこの世に存在していたのかと、震えるほどの感激と共に、たった3分弱のその演技は勢いよく未知への扉を開け放ったのです。
そのスケーターの名はアレクセイ・ヤグディンソルトレイクシティーオリンピックの金メダリストでした。あの日、彼の「Winter」に出会っていなければ、今こうしてフィギュアスケートについて文章を書くことはなかったかもしれません。

と言っても、昔から関心はあったのですよね。長野オリンピックでも競技を見ていた記憶はありますし、人生を考えられる漫画だからと友達が貸してくれた『愛のアランフェス』が非常に面白くて夢中になって読み進めたこともありました。子供の頃に何か本を読んだとかテレビ番組を見たとか、きっかけになることがあったのでしょう。まるっきり覚えていないけど。
それでも結構な長い間、綺麗な女の子が優雅に滑るスポーツ、という認識しか持てずにいました。男子のスポーツじゃないでしょ、みたいな、今では信じられないようなことを母に言っていたこともありました。男の子が滑るのも素敵よ、と主張する母と一緒に見たソルトレークの前年の世界選手権のエキシビション。そこにはノリノリで滑るおかっぱ頭に筋肉スーツの謎のロシア人が映っていました。「何あの人気持ち悪い!男子のスケートなんかもう見ない!」と絶叫する私。…あの時のロシア人にチケット代の何割かを払っているような気がするくらい生で見るのが楽しみで仕方なくて、むしろあの筋肉プログラムいくらでも滑ってくれて構わないとか未来の私が言ってると知ったら、当時の私は発狂するんじゃないでしょうか(笑)。今考えてもどうしてあんなに拒否反応が出たのかさっぱりわかりません。どう考えても私が超好きそうなプログラムなのに(笑)。あまりの衝撃に自分の記憶から消し去っていたらしく、あの時の筋肉スーツの青年がソルトレークに出場していたプルシェンコだということに気付くのに相当な時間がかかりました。本当に今となっては色々信じられません(笑)。

ソルトレークヤグディンによって大きく変えられたフィギュアスケートに対する認識は、私の生活にも多大な変化をもたらしました。長野で行われた世界選手権のビデオを擦り切れるまで見て、新聞記事をスクラップし、当時はまだ少なかった関連書籍を書店を巡って買い漁りました。この世界を知らなかったこれまでの時間が、とても勿体無いようにすら感じられたほどでした。真っ暗な雲の中を歩いているような毎日を過ごしていた私の前に、穏やかな光が一筋、もう一筋と差し込み始めていました。ソルトレークオリンピックを見ていなければ、私はいつまであの何も見えない暗い雲の中にいたことでしょうか…。
でも、ヤグディンの早すぎる引退が、そんな日々に終止符を打ちました。あまりにもショックで、フィギュアスケートを見ることそのものが辛くなってしまったのです。好きなスケーターはほかにもいたし、まったく見なくなってしまったわけでもなく、むしろ一生懸命見ていたことに変わりはないのですが、現実を受け止めたくないばかりに、本も買わなくなり、スクラップも止めてしまい、テレビを見るのが精一杯だった時期がしばらく続きました。今でも大好きなジェフリー・バトルステファン・ランビエールのファンになったのはそんな頃です。

そのような状況も手伝って、リンクへ足を運んだことはほとんどありませんでした。当時の私にはとにかくお金がなくて、ショーや試合に出向くような余裕は無かったのです。それでも、地元で行われたショーに2回、そして清水の舞台から飛び降りるつもりで横浜へ1度だけ行きました。とても楽しかったけれど、ただ楽しく見ているだけで、ジャンプの見分けもつかず選手もあまり覚えていない私のような不勉強なファンが、こういった場所へ赴くことは場違いなのだろうかと激しく落ち込んで帰ることになりました。もっと勉強してから、せめてジャンプの見分けがつくようになってからまた来よう。そう誓った私は、それから何年もただテレビの前でフィギュアスケートを見ていました。折しも、浅田真央というスター選手の出現や荒川静香の金メダルによって、フィギュアスケートは押しも押されぬ人気競技となっていました。人生を楽しむ権利は自分にはないと思っていた私は、あの華やかできらびやかな舞台に近付いていく勇気はとても持てませんでした。現在のようにテレビでの放送が充実しているとは言えず、会場で見ることが出来たら、と何度思ったかわからないけれど、それでも私はただテレビの前で膝を抱えて、どうやってもジャンプが覚えられない自分に呆れているだけでした。

そんな日々を劇的に変えたのが、バンクーバーオリンピックの後に大阪で行われた、ダイヤモンド・アイスというショーでした。是非行ってみたい、と盛り上がってくれた人たちのおかげで、私はやっとリンクへ足を運ぶ勇気が持てたのです。その時に見たランビエールのあまりにも素晴らしい演技と、テレビでは到底感じることのできない生の滑りの迫力に完全に圧倒されてしまった私は、それ以来できる限りショーへ足を運ぶようになりました。試合にはまだ行く勇気が出ません。実はジャンプの見分けがいまだに出来ないので←たぶんもう一生無理(泣)

やはりフィギュアスケートの人気は高く、アイスショーへ行ったという話をすると、是非詳しく聞かせて欲しいと返ってくることが多く、嬉しくて個別に感想のメールを送っていたのですが、だんだんそれが大変になり、じゃあいっそレポートの形にしてしまうか、と毎回旅日記を書いては読みたいと言ってくださった方に長大な迷惑メールを送るようになりました。ブログの形にしては?と勧められたことも何度かありましたが、チキンの私は不特定多数の方に素人の書いた浅い内容の文章を読んでもらう勇気がとても持てずに、何年もリアルな友人知人限定で迷惑メールを送り続けるだけにとどめていました。
その、2010年から書き続けてきた旅日記を、このたび少しずつ修正して掲載していこうと決意しました。今更公開してどうする、という思いも強いのですが、でも、何らかの形で残しておきたいと思ったのです。もしも楽しく読んでくださる方がいたら、これ以上嬉しいことはないですし。

とにかく貧民なので、これまでに出向いていたのはほぼランビエールの出演するショーだけです。毎回また見たくなってしまう中毒のような演技をされるので彼の出ているショーに最優先で行くようになってしまいました。素直にファンだって言え(笑)。なので大半がファンタジー・オン・アイスとメダリスト・オン・アイスです。もっと色々行きたいので貧民の自分を日々呪っています(泣)。
そんな感じの、特に何かの役に立つことはまずないであろうしょっぱい記事ではありますが、もしもお時間がございましたら、気楽に読んでいただけたら幸いです。てなわけで、明日は今更ダイヤモンド・アイスについてです(笑)。オータムクラシックで持ちきりであろうこの時期に今更ダイヤモンドアイスって…(汗)。