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うさぎパイナップル

ただ、書くことが好きなだけです。

星のない海

ひとりごと

砂浜で、毎日家を作っている。
昔は木で作ってて、少しずつだけど石を持ってきて土台を固めていたのに、高い塔から降ってきた、嫌な油の臭いがする粘土の塊に無茶苦茶に壊されてしまった。
その家をまた一から作っていた。もう石は拾えないから、木切れを少しずつ集めて作っていた。木切れの数は決まっていて、どんなに足りなくてもそれ以上拾えない。もうとっくに立派な家を建てた人が、独り占めしてるから。

ふと手を止めて見渡すと、たくさんの家がある。自分と同じ、波打ち際ギリギリに立っている壊れかけた家。木でできているけどしっかりした家。頑丈な石造りの家。高い塔。
高い塔は一見象牙の立派な建物に見える。実際その通りの塔もある。でもよく見ると、象牙に見せかけた粘土でできた塔もたくさんある。古びた油の臭いのする粘土。

本当は粘土だから、塔はいつもぐらぐらしていて、上からバラバラと嫌な臭いの粘土が落ちてくる。落ちてきた粘土は時折下にある家を壊す。でも塔の住人は、壊れた家の修理用に木切れや石を差し出すこともしないし、それどころか気付いていても気付かないふりをする。その上に、見せかけだけで本当は脆い自分の塔を丈夫にするために木切れや石を独り占めしている。
塔の住人は降りてこない。上の方から勝ち誇ったように何か喋っているけれど、遠くて聞こえず何を言っているのかさっぱりわからない。なのに、下の方の住人が話を聞かないと怒ったり、自分の話を理解できないのだろうとせせら笑っている。そんな自分たちこそ笑われているというのに。
塔から降りてくる人ももちろんいる。降りてきて、同じ大地に立って話す。その人の塔が倒れそうになった時は皆心から手を貸すけど、そうでない人の塔が倒れそうになっても心から手を貸すことはない。倒れてきて自分の家が壊れたら困るから手を貸すだけ。本当は壊れたらいいのに、と皆思っている。塔の陰で日当たりは悪いし、粘土の臭いは鼻につく。
見せかけだけの古くて高い塔。もう誰も必要としていないのに、住人だけがまだ必要だと思い込んでいる。

木切れの家は作るそばから壊れていった。塔から粘土が落ちてきて、作っても作っても壊されてしまう。夜露もしのげない。
そんなことをしていたら風邪を引く、と塔の上や石造りの家の窓から声がする。声がするだけで、石も粘土も木切れも毛布も差し出されはしない。石造りの家の住人は鼻声だ。自分が作ったわけでもない家でぬくぬくと暮らしながら、その住人は風邪を引く。その上で、やっとの思いで自分の手で作った隙間だらけの粗末な木の家で凍えながら暮らし、もうその家にも住めずに砂で家を作ろうとしては波にさらわれていく、冷たい風に身をさらされるばかりの人間に、風邪を引かないような暮らしを送るべきであると言い放つのである。汚れたこともない、綺麗な綺麗な手を口元に当てては咳き込みながら。言葉は通じても、話は通じないらしい。

ふと見渡せば、砂で家を作るしかなくなった人がたくさん波打ち際で途方に暮れている。積んでも積んでも、さらさらと崩れていく白い砂。砂まみれで傷だらけの手。木切れを差し出したくても、この手にあるのはやはりさらさらとこぼれていく砂だけ。
振り向くとそこには気が遠くなるほど美しい水平線が果てしなく広がる。焦がれてやまない、きらきらと光る波の粒。あまりの美しさに魅せられて、波の向こうへと走っていった人は誰も帰ってこなかった。それでもいい、この空しいばかりの砂の家を捨てて、あの波の向こうに行けたなら。波の向こうにある世界が本当に美しいとは限らないけれど、でも、ここでなければどこでもいい。ここにいるくらいなら、どこに通じているのかわからなくてもいい、この美しい波にその身を預けてしまいたい。
でも、波に身を任せようとするたびに、誰かが腕を取る。ここにいることを誰も望んでいないくせに、ここから出ていこうとすることすら許されない。

砂浜に夜が来る。冬の空は空気が澄んでいて星がよく見えるはずだった。でも、砂浜から見上げる夜空はただ、果てしなくどこまでも黒いだけの闇だ。


…もっとハッキリ書きたいけれど書けない葛藤がわけのわからない今日の記事を生み出してしまいました…。背筋が凍るほど病んでるな←遠い目
砂浜に埋もれた足がもう動かせないのだとしても、せめて満天の星空くらい見える世界であって欲しい。きっと高い塔が邪魔で見えないんだけどね。