うさぎパイナップル

書き散らしてるときだけが生きてる気がするんだ(社会不適合者・居場所募集中)

空がこぼした涙

お題「雨の日」

学校からの帰り道、私はバスを待っていました。

雨が降っていました。
その日の天気予報では、確か雨模様だなどと言っていた気はするけど、私は傘を持たずに登校していました。

そのバス停には屋根がありません。
仕方なく、私は雨に打たれながら、バス停に佇んでいました。

ふと、その雨が止みました。
目の前には降り注ぐ水滴が見えるのに、私の頭上に落ちてきていた雨の冷たさが、急に感じられなくなったのです。

何事かと顔を上げた私の頭上には、傘が広がっていました。
もちろん私の傘ではありません。

傘の主は、同じ学校に進学した、中学の同級生でした。
どうやら、雨に打たれる私を見かねて、傘に入れてくれたようです。
突然の事に驚いたものの、ありがとう、とお礼を言うと、

「こんな日に傘を忘れる奴は馬鹿だ」
と、にべもないお言葉…。
ええ、どうせ馬鹿ですよ…。

程なくして、バスが到着しました。
別々の座席に座り、それ以上話すこともなく、我々は帰路につきました。
その同級生に会ったのは、確かその日が最後です。

これが少女漫画なら、様々な何かが発展するのでしょうけど(笑)、現実はそのようなことは一切なし(笑)。親切にしてはもらったけど思いっ切りイヤミも言われた上、バスの中で喋ることすらしていない(笑)

でも、偶然出会った同級生が傘に入れてくれたという経験が面白く、今でも雨の日にふと思い出すエピソードです。
傘の主はきっと、立派な社会人として今頃しっかりと自分の人生を歩いているのでしょう。
私は吹けば飛ぶような人生を歩んでいるけれど。

まったく知らない人が傘に入れてくれることもたまにあるけれど、困っていても絶対に手を貸さない知人も多い中、そうやって見知らぬ人に傘を差し出せる優しさを、いつまでもそっと覚えておいて、いつかその優しさを誰かに返すことができたら。吹けば飛ぶような人間だけれど、そんな風に思いながら、止まない雨の中を、無くした傘を探して今日もひとり、黙って歩くのです。傘が見つからないのなら、この雨が止めばいいけれど、もうずっと太陽は行方不明で、空が青いことなんて忘れてしまいそう。思い出せなくなる前に、この雲が晴れることを、たとえ叶わぬ祈りだったとしても、願わずにはいられないのです。