うさぎパイナップル

主にフィギュアスケートの旅日記とテレビ観戦記とお題記事・ただ書き散らして生きていたい

Fantasy on Ice 2013 in Fukuoka⑭

※この記事は昔書いたものを修正して今更載せています。詳細についてはこちらをご覧ください↓

usagipineapple.hatenablog.jp

 

舞台にはAIが登場。これまでは歌うだけだった彼女がここで挨拶。
「こんなのないんだから!」と興奮して話すAI。どうやらショーそのものをとても楽しんでいる様子。それが素直に伝わってくる。「呼んでくれた人ありがとうございます」とまで言ってました(笑)。ゲスト歌手がこんなに楽しそうにしてるのって彼女が初めてじゃないかなあ。好感度上がったよ(笑)。関西の人らしく喋りも上手いし。

しかし彼女が出てくるということは、しかもここからフィナーレまでずっとお付き合いくださいって言ってるってことは、あらかじめコラボレーションが発表されていた羽生君がトリ?つまりそれって、まさかステファンが1プログラムしか滑らないの?そんなまさか…
とショックで青ざめていたら、AIの口からは意外な名前が。
今「ステファン・ランビエール選手」って言った?
え?
ステファン?
嘘?
でもステージの横に立ってるのステファンだ。
えええええー?!
ステファンがコラボレーション??!!
まさか!!!

そう、ステファンはこれまで一度もファンタジー・オン・アイスのゲスト歌手とコラボレーションしたことがなかったのです。彼自身のプログラムがどれも素晴らしいので、もうそういう要員としてカウントされてないのだろうと思ってました。個人的には2010年新潟公演のゲストだったゴスペラーズとのコラボレーションは見てみたかったのですが。曲はミモザで←指定
なので、本当の本当にびっくりしました。本当にびっくりしました。驚きすぎて心臓がずっとバクバクしてて、せっかくの世界初公開だったのに、初回公演はほとんど覚えてないくらい。ああ、勿体無い。本気で。

ステファンはいつかのアート・オン・アイスでも着ていた金色のシャツに黒いズボン。シャツは胸元が大きく開いていて、ところどころゼブラ柄が混じってる派手なデザイン。ヴェルサーチだったっけ?シマウマ好きなのかねやっぱり。ある意味トレードマークだし(笑)
曲は「HANABI」。

スイス人である彼が日本語の曲に合わせて滑るのはやっぱり難しいだろうと思う。歌詞は英訳してもらっただろうけど、それでも深いところまでは理解できないんじゃないだろうか、との心配はまったくの無用だった。あまり難しい日本語じゃなかったせいもあるのか、ステファンは実は日本語喋れるんじゃない、と疑いたくなるほど曲の世界観を掴んでいた。掴んだ上に、完璧に音に合わせていた。小気味良いほど音と合った腕の動き。ステファンが花火の中で踊ってるみたいだ。満天の星空に上がる鮮やかな花火。漆黒の空が赤や緑の華やかな色に染め上がる。星の光と花火の光、眩しいくらいの夏の夜。

前転だか側転だか、氷の上で転がってみたり、エネルギーを内側から爆発させるように弾けてみたり、終始ハイテンションで、ステファンのステファンらしい側面が非常によく出ていた。しかもステファンは、このプログラムで四回転を跳んでみせた。それは私の目の前で起こったのだけど、あまりにも鮮やかだったのでしばらく気付かなかった。ステファンが小さくガッツポーズもしてたのに、振りの一部だと思っていた。同じ公演を見てた方2名からは「なんで気付かないの?!」と怒られました(汗)。いや、まったく気付いてないわけじゃなかったのですが、あんまり見事だったので四回転に見えなかったのですよ(汗)。現役選手でもなかなかあれだけ綺麗に跳べないんじゃない?ソチ出るつもりかお前。

四回転を成功させたのは土曜日夜公演だったのですが(成功はしなかったけど日曜日も挑んでた)、この夜公演のステファンの演技は非の打ち所がないと言っても過言ではないほどの素晴らしさでした。これこそがライブ。これが本当のコラボレーション。これまでに見てきたすべてのコラボが吹っ飛ぶほどの「本物」。
AIも呆然として「すごいものを見てしまった」的なことを言ってました。一瞬仕事であることを忘れて素に戻っちゃったような感じ。自分の歌声をあそこまで拾って広げていく光景を目の前で見るのは、我々以上の興奮があったはずです。歌手冥利に尽きたのではないでしょうか。ちょっと羨ましい。
初回公演では演技終了後のステファンのハグに対して「トマト投げないでくださーい」と客に叫ぶ余裕もあったんですけどね(笑)。大丈夫、あの人誰にでもそうだってみんな知ってるから(笑)

演技自体はロングサイドから見る方が全体が掴めて良かったように思います。それもあって土曜日夜公演は神懸かり的な完成度だと感じました。でもショートサイドでも迫力を感じられてまた違う楽しさがありました。私は集中を乱されたくなくて手拍子もせず食い入るように見ていたのですが、日曜日公演でショートサイドのギリギリまで近付いてきたステファンは、そんな私を見咎めるように、煽るような鋭い視線をショートサイドの観客に浴びせてきました。ホラホラもっとノって来いよ、とでも言ってるみたいな。つられて手拍子しちゃったよね(笑)。煽られたのは初めてですよ、ええ。もちろん私に対してじゃないですけど。

今回だけのプログラムだなんて実に勿体無い。可能性は低いだろうけど、またどこかで披露してくれたらいいな。ステファンのことを全然知らなくても、きっとこの演技でファンになっていたと思う。外国人が日本語の曲で滑る時の違和感もまったく無かったし、ただひたすら、この人すごい、もうそれしか言えない。やっぱり全公演取って良かった。世界中全部の公演を見るのは無理でも、手の届く範囲でのことはすべてこの目に焼き付けておきたい。逃す手なんてないもの。ステファンがいちばんスケーターとして成熟している時に同じ空間でその演技を味わえる幸せは、今まさに彼と同じ時代に生き、我が身にある程度の自由が与えられているからこそ手に入れられる、特別な幸せなのだから。

以下次号。