花火を見る目的で何らかのイベントに行ったことって、もしかしたら無いかもしれない。子供の頃にはあったかもしれないが全然覚えてないし、成長してからはまったくない。毎年楽しみにしている花火大会はあるが、いわゆる花火大会会場まで出向くわけではなく、遠くから楽しめる場所でひっそり楽しむ、というスタンスですし。
ご家庭用の花火も大人になってからはほぼ遊ぶことはなかったし…、となると書くことがないので(汗)、今回は違う切り口で記事を綴ってみようと思います。
という訳で、花火が物語の重要な要素になる作品について語ってみることにしました。
今回取り上げる作品は、手塚治虫先生が残した、最早説明不要であろう漫画界の大傑作、『ブラック・ジャック』秋田書店少年チャンピオンコミックス版13巻のラストに収録されている、『六等星』。
傑作の多い『ブラック・ジャック』のエピソードの中でも、3本の指に入るくらい大好きな話です。
あまりにも有名な漫画なので、ネタバレに気を付けるもなにも今更では、という気がしないでもないですが、できるだけ核心には触れないように書いていこうと思います。でもネタバレになる可能性が高いので、気になる方は以下を読まないでください。
孤高の天才外科医、ブラック・ジャック。彼はある病気から救い出し、養女として育てていると思われる少女・ピノコと、花火大会を見物しています。美しく打ち上がる花火を無邪気に喜ぶピノコ。しかし、突然の暴発事故で、花火大会は中止になってしまいます。
その帰り道、花火より夜空の星の方が綺麗だと言うピノコ。星の名前をブラック・ジャックに尋ねるうち、ある小さな星に目をとめますが、そんな星は知らないと返されてしまいます。しかし、小さく見える星も実は遠くに在るだけで、本当は明るく輝く一等星よりもずっと大きな星かもしれないと前置きし、その六等星のような人物として、彼はある医師の話を始めるのでした…。
冒頭の花火大会が物語の伏線になっています。ブラック・ジャックが語る、医師として素晴らしい実力を持ちながらさっぱり出世していない人物、椎竹先生は、まったくメインではない漫画の登場人物としては、史上最強にカッコ良く、尊敬に値する人物だと思っています。そしてそういった人物の才能や実力を見抜き、チャンスを与える人間の存在がいかに重要であるかということも、この作品は示唆しています。下手な道徳の授業を受けるより、この物語を読んだ方が、絶対に人生において得るものは大きい、そう言い切ってしまえる程の名作です。『六等星』というタイトルも素晴らしい。機会があれば、是非読んでみてください。
『六等星』以外の2本の指は、『報復』と『犬のささやき』かなあ。後者は同意を得られるかあやしいが(汗)。でも『二つの愛』も最高だし『えらばれたマスク』も好きだし、そうだそうだ『幸運な男』を忘れちゃいけない!
…なんて言ってると5本でも足りないんだよねえ(笑)。たった20ページほどの枚数に、凡百の作家が一生に一度描けるかどうか、という傑作が詰め込まれ、それがいくつも存在しているというのがこの『ブラック・ジャック』なのですから…。まさに天才の仕事。
『六等星』が収録されている13巻は特に名作が多いように思うのですが、『身の代金』という作品も実はとても好きで、読むたびに泣いてしまうのだった…。感動するような話じゃないんです、でもこの話を読むと涙が止まらなくなるんだよ。『死への一時間』のラストもいいよね。
ファン以外はおいてけぼりになってきましたが(汗)、好きなブラック・ジャックのエピソードを語るだけで1、2ヶ月分更新できそうなくらい大好きな作品なので、今後少しずつ書いていこうかなと思っています。まずはブラック・ジャックとの出会いについてからかなー。気が向いたら書きますので気が向いたら是非読んでいただければ嬉しいです。
…花火関係なくね?と思った皆さん、多分それ正解(汗)