うさぎパイナップル

主にフィギュアスケートの旅日記とテレビ観戦記とお題記事・ただ書き散らして生きていたい

有機的ナビゲーションシステムを両手に乗せて②

室内には机と椅子と棚。だったかな。余計なものはほぼなくシンプル。荷物を入れておくカゴが置いてあるのがさりげない心遣いですね。

天道さんはホームページに載っている写真と同じ方だった。そんなの当たり前なんだけど(笑)、手相鑑定師と言えばお爺さん、せいぜいおじさん、というイメージがあった私にしてみれば、随分若い方だな、という印象は変わらず。

最初に現在の状況などを話し、鑑定に来た目的を告げる。ものすごくかいつまむと「今後の方向性が知りたい」というのが私の目的。自分は何に向いていて、何をすべきなのか。本当は何がしたいのか。このままでいいのだろうか、という漠然とした不安は、もはやそこから逃げ出すことはできないほど私にまとわりつき、一刻の猶予もない状況まで迫っていたのである。
私の話を聞いた天道さんは、「いちばん好きなテーマです」と熱っぽくおっしゃった。何だか楽しそう。是非是非、その勢いで鑑定してやってください。鑑定してくださる方が楽しんでくれるなら自分も何だか楽しいし。

では鑑定を…、差し出した私の両の手のひらを一目見た天道さんは、「え?」と一言呟き目を見開いた。
「これは…」私の手を凝視したまま何事かを呟き続ける天道さん。明らかに動揺されている。何だ、一体何だ(汗)

出し抜けに、鑑定時間を計るストップウォッチを天道さんが止めた。そのままゴキッゴキッと肩をならし、頬を叩いて(確か)気合いを入れると、再びストップウォッチのスイッチを入れる。

何だ何だ一体何だーーーーーーー?!(汗)

その様子を目にした私は率直に、「ああこれ手のひらに死兆星が見えたんだな」と思った。そりゃ何て告げるか悩ましいところだろうけど、それならそれではっきり言ってもらった方が、いつまでに自分が突っ走ればいいのかわかるし逆に有用なんではないかと思っていたので意外と不安はなかったのだけど。私のネガティブっぷりはよく友人に批判される要素なのだが、実はその逆に超ポジティブなんじゃないかとちょっと思います(笑)。てか死兆星って一般に通じるのか?(汗)
しかしそういうことではなかったようである。天道さんによると、私の手のひらは「超マニアックなオタクの手相」とのことであった。

…なるほど、そっちか(笑)

天道さんは言う。私がなかなかうまく人生を送れないのは、私が「普通の」組織にいるからだと。普通の組織に属しているからいけないのだと。私のことをわかってくれる組織にいれば問題はなく、そういう場所を見つけさえすれば、様々なことがうまく回り出すという。
…何処にあるんですかその組織(泣)。急募してもいいですかそれ(泣)

そう、私はずっと「普通の人」になりたかった。普通の会話が出来て誰とでも打ち解けられて空気が読めて、オシャレで貯金もしててアフターファイブに予定をいっぱい詰めて人生楽しんでる普通のOL。普通のOLは間違っても何もないところで転んだり、親から死ねって言われたり、どこへ行っても嫌われたり、好きな漫画が「北斗の拳」だったりはしないはずだ←笑

何故「普通の人」になりたかったのか。理由はいくつかあるが、根本的なのは「親の理想通りの親の自慢かつ親に楽をさせることのできる人間」にならなければ自分は生きている価値がない、と思っていたことにあるだろう。親は私が「変わった子」だと言われるのを喜んでいるふしがあったけど、親の理想通りになるには私は普通の人間にならなければならない。貧困家庭に必要なものは安定した収入であり、それを得るためには「自分の好きなように」生きていてはいけなかった。
実際、私はずっと他人の、特に母親の顔色を伺って生きてきた。もちろん、自分がいつも様々な枠からはみ出してしまうことには気付いていて、実際には顔色を伺ったところで相手に合わせることなどできず、就職活動の際などには心が折れてしまうほど悩んだし、金さえ稼げれば何でもいい、という考えに至ることもなかったが、あるかどうかもわからない才能に賭けるより、確実に収入を得られる道を選ぶ以外に自分の生きる道はなく、そもそも親と共倒れにならないためにはそれしかないと思っていた。どれだけ綺麗ごとを並べても、金がなければ生きてはいけない。食べるものにも住むところにも困る恐怖や、貧困が人心を荒廃させる様子を目の当たりにする恐怖は、ほかのどんな事象よりも強烈に自分を支配してきた。

けれど、もう、いいんじゃないのかなとも思うようになっていた。どうせどう転んでも貧しい生活しか送れないのなら、楽しく働ける方がずっといい。もう十分、親の期待には応えてきた。結果として見知らぬ人物にすらイヤミを吐かれるような自慢のタネにされるのはもう嫌だったし、寄りかかられて共倒れになるのも嫌だった。このままでは私は何のために生きているのかわからない。他人になるつもりはないけれど、家族と適度な距離を保つ道を選んだ私を人でなしのように言う人も少なくなかったけれども。そして、どこへ行っても、そこでうまくいっていたつもりでも、気付いた時には何も無くなっている、この繰り返しもいい加減に終わらせてしまいたかった。

自分の居場所。
私に最も必要なものは金でも愛でもない。
たぶん、それだ。

そうだよ、私は結局「社会不適合者」なのだ。素のままでは社会の一員として成立しないので超生真面目な自分というスーツを着込んではいるけれど、実際は押さえ付けられるのは大嫌いだし自由でいられなければすぐに壊れてしまう厄介な代物。私のような人間は、本当は子供のうちに、自分の適性とそれを活かせる道を見つけておかなければならなかったのだ。人として少々破綻していても生きていける世界を。
それが手相に表れているということに、少なからず驚愕した。そんなことわかるものなのか。
エジソンアインシュタインも子供の頃は変人扱いされてたはずです」とおっしゃる天道さん。その辺の偉人を引き合いに出されるとは偉人に失礼な気もしたが(笑)、私は一体どんなレベルの変人なんだとさらに驚愕しつつ、最終回に続く(笑)