うさぎパイナップル

主にフィギュアスケートの旅日記とテレビ観戦記とお題記事・ただ書き散らして生きていたい

シリーズ・間黒男氏を主役とする一連の物語が如何に好きであるかを語る・第4回(実質第5回)←もういいんじゃないのかこの説明

地味に続けているこのシリーズ。私が好きな『ブラック・ジャック』のエピソードについて勝手に語っております。説明するまでもないとは思いますが手塚治虫先生の残された医療漫画の傑作ですね。フィギュアスケートがシーズンたけなわのため、月イチ掲載のつもりがしばらくお休み状態でした。誰も気にしてなかっただろうけど(笑)。満を持しての再開でございます。誰も気にしてないだろうけどな!私が書いてて楽しいだけです(笑)

本日取り上げるのは秋田書店少年チャンピオンコミックス版第5巻に収録されている「二つの愛」です。めちゃくちゃ好きな話なので少々熱く語るのではないかと思います(汗)。いつものように気を付けますがどうしてもネタバレしてしまうと思いますので今回も未読の方はこの辺りでUターンしていただいた方がよろしいかも。

天下一品の腕前を持つ寿司職人のタクやん。その腕はあのブラック・ジャックすらもはるばる通ってくるほどのものでした。しかし突然の交通事故で、タクやんは両腕を失ってしまいます。母親に自分の握った寿司を食べさせたいと考えていたタクやんは、事故を起こした運転手にある提案をしました。彼の頼みとは…。

序盤の展開はこんな感じ。冒頭でブラック・ジャック先生が食べてる寿司ネタからしてもう大好きです(笑)。『ブラック・ジャック』っていうか手塚治虫作品が、なんだろうけど、さらっと読み飛ばせる感じでギャグが混ざっているのがものすごーく好きだったりする。ピノコのオバケ鏡とか←わかる人だけわかってくれ

でもストーリーは笑ってはいられない展開です。腕を失ってしまってはもう寿司を握ることは出来ない。タクやんの絶望を考えると胸が締め付けられそうになります。物語は絶望と希望を繰り返し、数ある漫画の中でも5本の指に入るくらい大好きなラストシーンで締めくくられます。手塚治虫はラストシーンの描写が特に上手い作家だなと思うのだけど、私はこの作品のラストがいちばん好きです。全作品読んだわけじゃないのでほかにもきっと素晴らしいラストシーンはあると思うし絶対あると確信もしてるけど。

しかしそのラストシーン以上に、最後から2ページ目のラストのコマが好きかもしれない。あれは完璧に美しいコマである。セリフも美しすぎる…。あまりに素晴らしいものってどう説明したらいいのかわからない。でもこのコマを見るたびに、読むたびに思うのは、こんな物語を紡げる人間でありたい、ということである。たぶん無理なんだけど、それでも。「生きている」とは何なのか。その問いに答えることはとてつもなく難しいしおそらく正解もないけれど、このたったひとコマに描かれているものに、そのひとつの答えがあまりにも美しく示されているように私は思うのです。

実はさりげなく解釈が難しいと思っているのが「二つの愛」というタイトルの意味。この物語のキーポイントは「腕」なので、単純に人間の腕の数にかけたものかもしれないし、律子の明への愛とタクやんの母親への愛のふたつ、と捉えることもできるけど、どっちも正解じゃないような気もするんだよな。手塚先生が鬼籍に入られた今となっては確かめようもないことですが、作品を産み出す側はそこまで深く考えてなかったりすることが往々にしてあるんだよね(汗)。こうやって色々と推察する余地があるのも面白い作品の特徴のひとつなんじゃないのかな。

ううむ、ネタバレさせないように感想を書くのが難しいなこの話…。『ブラック・ジャック』のエピソードだからこそ成立している話でもあり、でも決して夢や魔法の話でもなく、漫画なのだけど自分の人生の印象的な1ページとなりうるような、そんな物語です。少なくとも私はめちゃくちゃ影響を受けているとこの文章書いてて気付きました。いい作品に出会えることは人生における最大の喜びのひとつかもしれませんね。機会があれば是非読んでみてください。掛け値なしの名作です。