うさぎパイナップル

主にフィギュアスケートの旅日記とテレビ観戦記とお題記事・ただ書き散らして生きていたい

ジャパンオープン2017雑感←というほどのものではないです

すっかり毎年恒例になった感のあるジャパンオープン。今年も盛り上がったようですな。が、ニュース映像以外は文字情報のみしか手に入れられなかったため、いまいちついていけてなかったりします。

何故なら!何故ならば!

私の住まいはテレビ東京が入らない地域だからです!(泣)

国内で開催される国際大会にも関わらず、毎年これだけは見られずに終わってしまう試合。何度も書いてますが私が頼れるものは地上波放送のみです。昔はBSの入る環境で暮らしていたのですけど(泣)。地上波しか見られないってフィギュアスケートのファンには厳し過ぎますね…。もう長いこと耐えてます……。

なので、いっそのこと会場まで行こう、と何度思ったか分かりませんし、実際2009年の大会には行くつもりで計画も立てていました。しかし、わりと直前になってどうしても行けない事情が出来てしまい、泣く泣く見送ったのでした(泣)。その事態を見越してチケットの購入などは先延ばしにしており実質何の準備もしていませんでしたが、結局それで正解だったわけです。そもそも経済的に不可能だったようにも思うんですけど。お前いつもそれだな(泣笑)。
そうか、あれもう8年も前になるのか…。私が現役のステファンの、競技での演技を見に行ける最後のチャンスだったんだよな…。それを思うと、今でも悔しくて寂しい気持ちが時折湧き上がってくるのです…。

そんなわけで、ニュース映像をちらりと見ただけなのですが、女子すげー。三原さん昨シーズンの勢いがそのままなんですな。ニュース映像では良し悪しが良くわからなかったけど(泣)、得点だけ見てるとロシアに割って入れそうで楽しみですね。
真凜ちゃんはニュースによって評価に差があったんだけど、得点的には決して悪くないんじゃ、とプロトコルを確認してみると、そこまで致命的なミスって感じでもないし、シニアデビューしたばかりだと考えると十分なんじゃ?という気がした。練習の様子が公開された新しいショートプログラムも楽しみ。
今シーズンもメドベージェワの天下かのう。女子はノーミスした上でどれだけ差がつけられるか、という戦いになりつつある気がするが、彼女はぶっちぎりですよねえ。
未来ちゃんトリプルアクセルチャレンジしたのか。燃える。しかしニュースで流れるはずもなく(泣)。

男子はみんなまだまだシーズン序盤?昌磨君のフリップはずっと成功してる印象だったので転倒にはびっくり。全体的に冴えてない?安心安定の昌磨君でもこんな時があるんですねえ。そんな時もあるさ。
織田君の演技を流して欲しかったんだけど、私が見た範囲内でそんなニュースはなかった(泣)。彼は何故引退してしまったのでしょう…。もうプロとしても競技に出ないという話だったけど、現役復帰すら可能だと思うのだが…。現役のプレッシャーが無くなったからなのかもしれないけど、勿体ないなあ。

カーニバル・オン・アイスに至ってはニュースにもならないため、ほとんど見たことがないです(泣)。誰か私に町田君を見せてくれ…。ええ金さえあれば行きますよ会場。でも冷蔵庫の中にほうじ茶のパックとマヨネーズとクジ引いて当たったヘパリーゼしか入ってないレベルの貧民なんだよ←超実話←開けてびっくり、しかも風邪引いてたので1本だけのヘパリーゼに風邪が治るよう願いを託してちびちび飲んだ←どうでもいいよこの話

「ユーリ!!! on Ice」全12話雑感

本当に今更なのですが、ようやく全話視聴しました。評判などを聞いて色々想像していたのよりはずっとスポ根だった、というのが超大雑把な感想かな。面白かったです。テレビアニメを見るのは『金田一少年の事件簿』(わりと最近土曜の夕方にやってたのじゃなくて月曜の夜にやってた方ね)か『巷説百物語』以来じゃなかったっけ。何年ぶりだよ(汗)。

以下、私の純粋な感想です。盛大なネタバレとなりますので、未視聴の方など気になる方はこの先をお読みにならないでください。

とりあえず最初に感じたのは、物語のイメージのベースにあるのは「町田君とステファン」なんだろうな、ということだった。原案の久保ミツロウさんが町田君のファンで、あの町田君現役最後の舞台となった長野のメダリスト・オン・アイスにもいらしていたようだというのは前知識として持ってはいた。何故って自分もまさにその場にいたからである。ガン泣きしていたのであまり周囲に気を配ってはいなかったが(汗)、あのバナーのことを知って、本当にファンでいらしたんだな、と思った。
もちろんあくまでもイメージなのであって、それぞれのキャラクターはアニメーション作品として面白くするために様々に肉付けされた別人である。それは当然なのであるが、それでも、結果が出せぬまま既に引退を考える年齢の主人公、その主人公のコーチを買って出るベテラン、そのベテランの仕草や着用しているコート、そういった端々に、ステファンの振付で滑り、才能を開花させていった町田君の物語がダブって見えた。
きっとこれは、あの突然の引退から立ち直るために作られた物語なのだ。だからきっと主人公は引退しないだろう、そう思いながら見始めた。たぶん、いや間違いなく見当違いなのだけど、私は素直にそう思いながら見ていた。

途中で脱落しそうになったのも事実である。腐った女子が大喜びする展開だとは聞いていたが、う、ううむ、なるほど(汗)。ちょっと、このキャラクターや演出はちょっと、と中盤では慌てた(汗)。
とは言っても、今更腐った表現が見受けられたところで大騒ぎする年齢でもないし、そもそも私はマニアに生まれたにも関わらず周囲も驚いていたほど腐ってる方面に興味がないので、そのうち気にならなくはなった。だいたい、漫画やドラマにおいて自分の気に入った男女は95%くらいの確率でくっつかない、という伝説の持ち主である私は、基本的に恋愛方面には力を入れないで視聴するのである。それは性別が何であろうと一緒。これはグローバルな親愛の物語だと思っておけばオールオッケー!…何度最終回で泣いたことか。特に少年ジャンプは100%だよ100%(泣)←知らんわ
超個人的な事情を差し置いても、最終回まで視聴すれば腐った女子向けの話という程の内容ではないんじゃ、という感想に変わってはいた。そういう風に取れるように仕掛けはしてあるし、それが一番売れるのだろうから、まったく腐った女子を意識してないということは絶対ないとも思ったが。登場人物がほとんど男性なのだからある程度仕方がないだろう。美男子というものはひとりだけでは駄目なのである。複数の美男子(決して美しくなくてもよいのだが、敢えてそう呼ぶ)が登場することで、その関係性に「萌えられる」からこそ想像の翼が広がり、人気は爆発するのである。某アイドル事務所などがいい例だろう。あそこは先見の明があったのだろうな、と素直に感心していたりする。まあ勝手な感想ですけど。
なので、そういう感じの表現が多いから、という理由で見ないのは勿体ないなと思ったし、逆に、そのあたりの表現がもう少し控え目であれば腐った女子的な演出に不慣れな男性などにも面白く見られたのでは、と感じ、少し残念ではあった。身近に脱落してしまった男がいるので。
フィギュアスケートのファンは圧倒的に女性が多いので、女性向けの作品になってしまうのはある意味当然ではあるのだが、現実の競技やこのアニメの内容を見てもわかる通り、実際は殴り合わない格闘技のようなものである。たいへんに熱い。美しく高く舞い上がるアクの強すぎる登場人物たちが繰り広げる、アニメならではの脚色を入れた火花散る熱い物語は、一番好きだったテレビアニメは『Gガンダム』、という私には実は大歓迎の展開なのだった(笑)。たぶん男女問わず面白く感じるポイントはあると思うのだが。男性のファンも増やせそうな内容だっただけに、そこはかなり勿体ないなと思った。まあ、その辺の偏見なく見られるような人物でないと実際の競技には興味を持たないのかもしれないが。
ひとつ誤解のないように加えますが、私は腐ってる皆様を否定しているわけではまったくないです。むしろそちら側の住人になれたらどんなに楽しいだろう、といつも羨ましく見つめていました。少なくとも私の周辺の彼女たちは皆確固たる自己を持ち、ぶれることがなかったから。でも私には素養がなかった。興味をひかれなかった。ただそれだけなのです。

そんなわけで、一番注目して見ていたのはロシアのユーリ君である。放送時間が夕方だったなら主人公は彼だったのかもしれないな。実際、名前からしてももうひとりの主人公なのだろうと思って見ていた。性格などはもろにライバルのそれなのだが、位置付けとしては十分主人公を張れるだろう。勇利君もしっかり主人公なのだが、わりと狂言回し的な側面が大きいように思った。そういう主人公もいるし、重要な場面では視聴者サイドから離れていたように思うので、やはり主人公には違いない。
そもそも、この話は3人のスケーターによって描かれる、シニアスケーターの一生の物語なのだと思った。シニアデビューしたばかりで、今後体格の変化や追われる立場になるなどの試練は待っているにしろ、今はその新鮮な輝きが何よりも眩しい若手のユーリ、選手としては晩年に差し掛かっているものの、だからこそ滲み出る魅力を纏い、様々な葛藤を乗り越えた者にしか描けないステージに立つ勇利、引退のその先に立ち、続行へのモチベーションを探りながら、一時代のアイコンとなる運命を背負って伝説を生きるヴィクトル。それぞれの競技人生のステージに立つ3人が、最終的には同じ競技のリンクで相まみえる道を選ぶ。だから主要な登場人物は皆男子シングルの選手でなければならない。美少女とイケメンコーチの物語などにしても味付け次第でいくらでも面白くなっただろうが、それでは同じステージでそれぞれひとりの人間として戦えない。物語は終わらないのだ。最終回のスタッフロールを見ていると、あの長野のメダリスト・オン・アイスを思い出した。あの日長野で流した涙は、来年もワクワクできるんだ、という笑顔に変わる。それは都合のいい慰めでしかないかもしれないけれど、物語を生み出す原動力などといったものはそういうものでいいのだろう、おそらく。物語の最初に感じたことは間違いではないのかも、と思ったけれど、それはどこまで行っても私の勝手な想像である。たぶん間違いだし。

とは言ってもあくまでアニメはアニメである。実際のスケーターやファンを彷彿とさせる小ネタも数々盛り込まれていたが、それはスケートファンへのサービスと思っておくくらいでいいだろう。仮に共通項が見つかったとしても、アニメはアニメ、リアルはリアル。スケートファンの主な層はその辺りを割り切れずに視聴するような年齢の人間では既にないように思うが(汗)。
まあ、ネタにしたくなる気持ちはめちゃくちゃわかるのであるが。二次元の登場人物であれば「キャラが立ってる」としか言い様のない、個性的なスケーターの面々は本当に魅力的だからだ。ある意味創作よりも創作じみていたりもするが、それでもやはり創作でしか表現できない部分も多々あるのであって、魅力に溢れたスケーターの面々や競技そのものからインスピレーションを受けて物語を創造することにいささかの問題もないだろうし、ついにそういうアニメーションまで登場する時代になったのだなとも思った。まったく鼻につかなかった訳ではないけれど、まあ流してしまえる範囲ではあった。
「俺のテーマ曲」で滑る選手や死ぬほど変な衣装で滑る選手には爆笑したし、これは題材が男子じゃないと出来ないよな、と思った(笑)。演技中に選手が何を考えているかなどは絶対に他人にはわからないので、創作ならではの表現である。実際に宮本先生が振付したというだけあってスケートのシーンは臨場感があった。そこにリアルを求めるなら現実の競技を見た方がいいだろうが、ここで手を抜かなかったことで作品に説得力が生まれていた。このアニメのために作曲したのであろう演技の使用曲の数々もなかなかの聞き応えだった。久しぶりに聞くプロの声優による「いい声」のオンパレードも耳に心地よかった。特に勇利君役の方、素晴らしい演技力ですね。やはり作品に説得力を持たせる要因のひとつだったように思います。グランプリファイナルが最終目標になってるのは大人の事情ですね(笑)。

しかし何と言っても、ステファン・ランビエール氏本人の出演という大事件に勝るものはないであろう。私、彼の大ファンなんですよ(汗)。日本でひとりカラオケにでも行ってる写真なのか?と思ったらまさかのアフレコ風景、まさに青天の霹靂でしたよ…。最終回に彼が登場する、という楽しみがあったのも脱落せずに見られた要因だったかも。たぶん登場しなくても最後まで見たけどね。ロシアのユーリ君はとてもいいキャラクターだと思ったのでどうしても彼に目が行ってたんだけど、そうするとかなり正統派スポ根路線に物語が様相を変え、私にはとても熱く見られたのである。

現在上映中の4DXも、せめてステファンが登場する第三週だけでも、と観に行く計画を立てていたのだが、予想外の出費があったため不可能になってしまった…。たった2500円が払えない程生活に困窮しているという状況に、私はいい加減疲れているのだが、出口は見えないままである。ああ、スクリーンに映る二次元のステファンと映画館に響き渡るあの高い声を堪能したかったです…。心の底から無念です…。

All Japan Medalist on Ice 2014⑫

※この記事は昔書いたものを修正して今更載せています。詳細についてはこちらをご覧ください↓

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会場を出るとシャトルバスは長蛇の列。なので少し時間を置いてから並ぶことにして、すぐ近くにあるショッピングモールに入ってみる。スーパーでご当地野菜などを目で楽しんでから戻ってもまだ長蛇の列だったが、それなりに捌けてきたので並ぶことに。あまり目にすることのない雪の量にテンションが上がった私は並ぶ前から雪に足跡をつけてみたり手のひらの上で雪玉を作ったり「幼稚園児ですかお前は」と突っ込まれても実に仕方のない行動を繰り返す完全に危ない人でした。Aさんすみません←本当にな
しかしこの危険人物に声をかけてくる勇者がいた。シャトルバス最後列のプラカードを持ったお兄さん(おじさん?)が話しかけてきたのである。ずっと立ってるだけなので暇だったんじゃないかと思う(笑)。
お兄さんによると、最後まで会場に残っていたのはほとんど町田君ファンで、みんな涙と鼻水でぐしゃぐしゃだったと言う。まあそうかもしれないなあ。だって町田君のファンはオリンピックから明らかに増えたし、そういうファンにとっては実質1年も経たずに迎えた突然のお別れだったのだから。ファンになって1年くらいって、たぶんいちばん楽しい時期だもんね。ソルトレイクでファンになったヤグディンの突然の引退に泣き崩れた当時の自分を思い出して仕方なかった。あの時は本当に辛かった。しばらくはスケートを見る元気も湧かなかった…。
私が手のひらでもてあそび続けていた雪玉を「持って帰っていいよ」などとも言っていたお兄さん(笑)。我々の後ろにも人が並びお兄さんとの話も自然に終了したが、バスに乗り込む時にわざわざ「気をつけてね」と声をかけてくれた。お兄さんのおかげで楽しかったですありがとう。今回もファンキーな地元の方に会えて嬉しかったなあ。その土地の人たちとの束の間の出会いも旅の醍醐味ですよね。

ホテルに戻り就寝。翌朝はホテルのバイキングでアイスクリームやら蕎麦やらを堪能する。体調が良くなくて薬を服用した程だったのに何でアイス食うかなコイツは←大好物だからです
どうやら私の場合はとにかく冷えが最高に身体に良くないらしい。雪の長野もアイスリンクもどう考えてもデッドゾーン…。アイスショーの旅は楽しいけど大抵微妙に体調崩してるのも納得(←納得するな)。でもたぶん最大の敵は公共交通機関の冷房なんだけどね。移動時間長いからな。

チェックアウトしてAさんとバスで善光寺へ。雪の善光寺はとても風情があったけど、4年前に訪れた時より明らかに人が多かった。前回は戒壇巡りがお休みだったからかなあ?
境内に掛かっている絵馬を何気なく見ていると、スケートファンのものをたくさん発見した。好きな選手の勝利や羽生君の健康を祈ってるものが多かったと思う。客席一杯だったもんなあ、たくさんのファンが長野まで足を運んだんだよなあ…。

御守りなど授かってから門前町をぶらぶら。素敵なお店がたくさんあって目移りした。ランチに入ったお店もとーっても素敵だった。かなり並んだけど並んで正解。ケーキもお茶も美味しかったです(←朝食べ過ぎてケーキセットだけにした奴)。飲んだのはお店のオリジナルの緑茶のブレンドティーだったかな、すごく美味しかったのでお土産用にティーパックも買っちゃいました。
食事後はぶらぶらお店を見ながら長野駅まで歩いて戻りました。喋りながら歩いてると意外とすぐの距離でした。年末も年末なので既に閉まっているお店が多かったのは残念でしたが。

駅で列車を待つ間に羽生君の病名が判明。ストレス性の腹痛かなんかだったらとかものすごい重症だったらどうしようとかなんて心配してたので、命に関わるようなものでなくてホッとした。この時期に手術を決断したのは世界選手権に間に合わせるために違いない。無理はしないでと言いたいが、それが羽生君の心からの願いならば私は祈り見守るだけである。カップ・オブ・チャイナで彼が見せたスケートへの強い想いを、私は何よりも尊重したい。
羽生君は病室で町田君の引退の知らせを聞いたのだろうか。羽生君は町田君をライバル視しながらもとても懐いているようだった。羽生君は強いライバルがいる方が明らかに燃えるタイプだし、町田君にも後輩に負けられないという意地があるだろう。切磋琢磨しつつも気の置けない仲間でもある、とてもいいライバル関係のように私には思えた。最大のライバルの、そして大切な仲間の引退の場に居合わせることもできず、病室の天井を見上げて痛みに耐えているだろう羽生君のことを思うと、何だかとても切なかった。もう、ふたりの対決を見ることはない。永遠にその機会は失われてしまったのだ。

Aさんは新幹線で東京へ、私は特急しなので名古屋へ。今年も1年本当にお世話になりました。また来年もお世話になります。
帰りのしなのの指定席は空いていた。やはり帰省ラッシュとは逆の方向なのね。名古屋での乗換の待ち時間にキオスクに山積みされてたNumberを買って新幹線に乗車。羽生君が表紙だったのですよ。しかもこれがいい写真でね。永久保存版。雑誌は買える時に買っておかないと店頭から消えてしまうので、躊躇わずに買うようにしてます。
最終の1本前くらいの便で広島に到着。移動時間は往復でたぶん14時間くらい?やっぱり長野遠いな。でも充実した旅になったなと思います。

そう言えば善光寺の近くでお土産に栗の落雁を買ったんだけど、すごく評判が良かったのでどうやら美味しいらしい。私は栗が嫌いなので食べなかったのですが。20個くらい入ってて600円くらいで、なんか歴史のありそうなお菓子でした。長野にお越しの際には探してみては。ほかにはジャムの小瓶を何種類か買って先着順でお土産にした。でも柚子のジャムだけは自分で食べました。歌う方じゃないから。滑る方のファンだから(笑)。柚子製品を敢えて選ぶ回数が数年前から明らかに増えたのは気のせいじゃないんだなこれが(汗)。もうすっかり本命を捨てる勢いで羽生君ファンだよね自分(汗)。

旅日記そのものはこれでほぼ終了ですが、最後に町田君の引退についてもう少しだけ。
年末の時点ではただただショックと感謝の気持ちでいっぱいで、何も考えられずにいましたが、3月の世界選手権を見ていると、やっぱりこの大会までは続けて欲しかったなあ…という気持ちが強く湧いてきて、悔しいような悲しいような、複雑な気分になりました。応援している選手が世界の頂点に立つ。それはファンなら誰でも願うことだし、町田君にはそれだけの実力もある。たらればを言っても仕方がないけれど、チャンスを掴んで欲しかったと思ってしまうのは許して欲しい…。
今は町田君が近い将来実現したいと言っていた広島でのアイスショー開催を静かに待つだけの日々です。ただ、オリンピックの時のことを思い出すと、町田君が広島にわざわざ戻ってきてくれるのだろうかと悲観気味ではあります(泣)。現実的にはプリンスアイスワールド広島公演かなと思うけど、ビッグウェーブに氷があるのが冬季だけだからなあ。冬季は競技があるため現役選手がショーに出られず集客が厳しいと思われます。全日本と四大陸の間、1月なら可能かもしれないが、あの時期は毎年スターズオンアイスがあるもんなあ…。
ごちゃごちゃ書いたけど、町田君の幸せと成功を願っていることに何の偽りもありません。ただ、いくら予想はしていたと言ってもやはり引退はものすごく残念で、非常に寂しく、実はまだぽっかりと心に穴が空いたままの自分の気持ちを整理するために少しだけつけ加えておくことにしました。応援する気持ちに変わりはないですが、今後はなるべく町田君の姿を追わず、時々そっと思い出すだけにしたいなあと思います(涙)。せめて最後にもう一度だけ、この言葉を書かせてください。

長い間応援できて楽しかった。本当に、本当にありがとう、町田君。

長野旅日記2014
町田樹引退スペシャ


2017年追記:
過去の旅日記の中で、個人的に最も思い出深いものがこれです。当時泣きながら書きました。今回読み返しては泣き、修正しながらまた泣いた。理解も納得も出来ていても、涙が出てきてしまうことってあるものですね。
思い入れも強かったので、自分比でとても丁寧に書いているな、と読み返してしみじみ。手前味噌と言うよりは、それだけ印象的な出来事だったのですよ。なのでできるだけ当時のままで掲載しようと思ったけど、当時の自分の気持ちを整理するために今回の引退劇について自分なりに考察していた部分はほぼバッサリカットした。今更言っても仕方のないことだから。町田君が自分の道を真っ直ぐ歩いているのならそれで十分、そのはずだもの。
ただ、自分の経済状態が悲惨過ぎて全然プロ?になった町田君を肉眼で見られないのはやっぱり辛い(泣)。手紙やプレゼントを一切受け取らないという方針に関して配慮というよりも拒絶に感じて、余程のことがあったのではないかと心配になると同時に、手紙を書いたことのある身としては嫌な思いをさせたのだろうかと悲しい気持ちにもなってしまい、少し離れて見守った方がいいのかも、と勝手に遠慮してた部分もあったりしたのですけど。でもプリンスアイスワールドに行かれた方から直接話を聞くとやっぱり羨ましくて、何とかして費用を捻出したいと願いつついつも徒労に終わる(泣)。

そう言えばステファンがメダリスト・オン・アイスに出演したのはこれが最後でしたね。ゲストのお前が目立ち過ぎだ、などと当時はツンデレかましてましたが(笑)、今考えると、彼もあの年で最後だとわかっていたからああいうフィナーレの演出になったのかも。憶測でしかないですけど。メダリスト・オン・アイスに出なくなっただけで来日回数は全然減ってないので、ファンとしては嘆く話ではないのでしょうけど、私の経済状態が悪化し過ぎて、今後もう見に行く機会は持てないかもしれないな、と寂しく思う今日この頃であります…。

All Japan Medalist on Ice 2014⑪

※この記事は昔書いたものを修正して今更載せています。詳細についてはこちらをご覧ください↓

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このスケーターの演技が見られるのを今回本当に楽しみにしていました。小塚崇彦
シックな黒の衣装。フラメンコかな?今までの小塚君のイメージを覆す感じ。
…圧巻。圧巻でした。ステップヤバすぎる何だよあれ。経験を積んだ選手にしか出せない熟成された空気。まさに貫禄。
光の早さでスタオベ。て言うか私泣いてたかも。待ってたよ、待ってたよ小塚君!(泣)
アンコールはフリーの曲。この曲のタイトルがもう泣かせるんだよなあ。「僕はここにいるよ」って何だよう(泣)。全日本の演技を思い出してたぶんまた泣いた。凄すぎて空に浮いてるみたいなステップだったよなあ。最後のガッツポーズまで再現してくれて、もう駄目だ涙腺崩壊。
インタビューがまた傑作。小塚君の口から「若い人ばかりで」なんて言葉が出てくるようになるとはなあ。でもこれからも続けてくれそうな言葉も聞けて会場歓喜。佐藤コーチの話でも笑わせてくれたし、でも最後に、今決まってる8人プラス町田樹君の9人で世界選手権代表として頑張る、といった感じのことを決意として語っていて、また涙ぐむ私。そのセリフ小塚君じゃなきゃ言えないよ。格好良すぎるよ…。最初から最後まで小塚君に泣かされる全日本だったなあ。やっぱり小塚君は素敵な人で素晴らしいスケーターだ。それを改めて認識できて、私にとってはいい全日本でした。経済的な問題で私が生で小塚君を見られるのはいつもこのメダリスト・オン・アイスだけなのが本当に切ない。大ファンなのにな…。
しかし、試合の時から思ってたけど小塚君に対して会場がとても温かかったなあ。小塚君は今シーズンで引退じゃないかと噂されていたらしく、最後になるかもしれないと覚悟した小塚君ファンがたくさん来ていたのでしょうか。小塚君以外にも皆熱心で、何というか本当にスケートが好きな観客が多いような印象を受けました。
…高橋君ファンが来ていないというのはこんなにも平和なものなのかと思ってしまった…。高橋君本人は好きなんだけど、正直彼のファンは怖かった。今まで自分の周囲の人が挙げた好きな男子スケーターの名は圧倒的にダントツで高橋君が多かったし、それだけ分母が大きければ当然様々なファンがいることも承知の上なんだけど、それでも「高橋君のライバルの日本人男子にあからさまにいい顔をしない」人が多過ぎてかなり辟易していたのも事実である。織田君に対しては本当に酷かった。あまりの言い草に「一度くらい会場に足を運んでからフィギュアスケートについて語れ」とハッキリ言ってしまいそれが原因で疎遠になったこともあるくらいだ。でも間違ったこと言ってないと思いますけど。高橋君のファンは高橋君が好きなだけでフィギュアスケートそのものには興味のない人が多いのかもしれない。高橋君が勝てばそれで良く彼の「一番」を脅かすものはすべて嫌い。競技そのものが好きならそういう発想にならないと思うんだけどな。羽生君が初優勝した全日本のメダリスト・オン・アイスで客席の私の耳にも届いた羽生君への暴言も高橋君ファンのものだろうと私は思っている。て言うか確信に近いですね。隣の席だったら「出て行け」って言ってしまってたかもな(←げっそり吐き出す黒いエクトプラズム)。競技も楽しんでいるであろう真っ当な高橋君ファンが本当に気の毒。まあジャンプの見分けもつかない私に言われたくないでしょうけどね!それにそういうしょうもないファンはおそらくすべての選手にこれまでもこの先もついて回るでしょうから、高橋君に目立って多かったというだけで。選手とファンは無関係、それは常に肝に銘じて競技を見ていかなければ、と改めて思いました。

最後は宮原知子。これはステファンが振付したプログラムですね。片隅に咲く花のような可憐なプログラム。
小塚君のことで頭がいっぱいで集中できなかったらしくあまり覚えてませんすみません(泣)。でもインパクトがないプログラムと言えばそうだったからなあ…(泣)。彼女も4年前のこの長野で見たのが初めてだったんだよね。あの時の印象は強烈だった。上位に入るようになってきた時は嬉しかったなあ。あと一歩何か足りない気がするのはジャンプの低さと演技が生真面目過ぎるせいだろうか。それだけ期待してるってことです。今後の彼女も楽しみです。

そしてメダリスト・オン・アイスはフィナーレへ。生演奏による椿姫が流れ出す。ああ、4年前もこの長野でステファンの椿姫に心から感動したのだった…。
フィナーレはほぼ個人演技の滑走順に男女ペアで登場、だったのではないかと思う。村主さんなら村上大介君とペアね。しかし1組だけ男同士のペアがいた。登場した時にはあまりのことに思考が停止しました。
最後の最後に、町田君の最後のメダリスト・オン・アイスで、ステファンと町田君がペアで滑ってる…。これは何?夢?
ステファンも町田君も笑顔。て言うかこのふたりをメインにフィナーレの振付がなされているように感じた。って主役誰だよ!(笑)しかもフィナーレのラストは、町田君とステファンが中央で並んで決めポーズ取って終了。
主役誰だよーーー!(笑)特にそこのスイス人お前関係ないだろ!(笑)
でもどうやら私の座ってた方向が正面だったらしくてその決めポーズは目の前ではないにしろかなり近くで見られたのだった。言葉になりません。本当に来て良かった…感涙。
単純に余ってしまったんでしょうけどね彼らが(笑)、でもこの演出を考えた方には心から感謝です…。

その後はメダリスト・オン・アイス恒例のぬいぐるみ投げ。客席に次々と投げ込まれるニチレイのマスコット。ステファンの姿を中心に追いながらその様子を眺めていると、
ステファンが、私の本当の本当に目の前の、私のすぐ前の列でスイス国旗を広げていた人にぬいぐるみを投げたのだ。スイス国旗を狙ってるっぽいぞこれ。
慌てて国旗広げたけど既にぬいぐるみは品切れだった模様。遅いよ自分(笑)。
…でもこの光景、どこかで見たことがありませんか。
その時に感じたこととほぼ同じだったので、悔しいという気持ちはほとんどなく「あ、やっぱり」と思っただけでしたが、今回も予知夢でファイナルアンサー、でいいんじゃないのかな。ま、信じるも信じないもご自由に。

選手たちが退場して終了かと思ったら、最後に村主さんと町田君に花束の贈呈式がありました。ふたりとも本当にお疲れ様です。ふたりが退場し、今度こそ本当にメダリスト・オン・アイスは閉幕。今年もいいエキシビションでした。ただ、毎年当たり前のように見ていた選手たちがごっそりいないという状況にはやはり最後まで慣れませんでした。何というか、全体的に地味になった気が…。羽生君も出てなかったし。まあこれくらいがちょうど良いのかもしれません。でも来年はさらに出演者の顔ぶれが変わるのは確実なので、どんなエキシビションになるのか楽しみなような怖いような。
ちなみにスイスからお越しのあの方は今年も女子の試合を観戦していたそうなのですが、去年ほどぶっ飛んだ目撃情報も上がらず、どうやら本人比で大人しく見ていたようです(笑)。

以下次号。

All Japan Medalist on Ice 2014⑩

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さて、ここからはシニアの代表選手たちの演技。最初に登場したのは高橋成美木原龍一。町田君の直後ではさぞ滑りにくかったと思うけど、小気味良い曲で爽やかに滑り切ってくれました。
成美ちゃんのジャンプがもうずっと決まらなくて、今回もそうだったので心配していましたが、私がふたりの演技を直接見るのはこれが最後になるなんてこの時はまったく思っていなくて、これを書いている今、とても寂しい気持ちです。トラン君と組んでいた頃あれだけ生き生きと滑っていた成美ちゃんの姿を思い出すと、解散も仕方ないと思えてくるけれど、まるでオリンピックのためだけのペアだったと言っているかのようで、せめてもう少し待てなかったのかな…、という切ない気持ちも拭えずにいます。それぞれ新たなパートナーを見つけて競技を続けるそうなので、頑張って欲しいです。
ちなみに第2部に登場した選手には全員アンコールがありました。町田君は自ら説明して滑ってたのでアンコールと言えるかどうかは不明だが。

続いてはキャシー・リードクリス・リード。素敵な色の衣装に素敵な滑り。見入ってしまいました。クリスの膝はもう大丈夫なのかな。クリスがカッコ良くてちょっとドキドキしましたよ、ええ。
でもやはり、私が彼らの演技を直接見るのはこれが最後となってしまいました。国別対抗戦で発表されたキャシーの引退。この時にそれがわかっていたら、もっとしっかり見ておくのだった。クリスは新しいパートナーを探して競技を続けるそうだけど、キャシーの滑る姿はもしかしたらもう二度と見られないかもしれないからです。彼等がいなければ日本は団体戦になど出られなかった。本当に、本当に長い間ありがとう…。
ところでキャシーの引退を知っている人が一体どのくらいいるのかな。もう少しペアやアイスダンスも放送して欲しいです。ペアとアイスダンスの選手がいないと団体戦では勝てないんだよ…?

宇野昌磨。世界選手権にはジュニアの代表で出ますがシニアの大会である四大陸選手権の代表にも選ばれたせいかここで登場。
4年前の長野でも宇野君見たけどさ、明らかに小さいけど明らかに上手かったもんなあ。なるべくしてなった全日本2位、という感じ。身長も160近くまで伸びたようで良かった。あまりに小さかったから心配してたのです、余計なお世話なんですが。でも欲を言えばもう少し伸びて欲しいかも。彼の滑りには非常に艶があるのだけど、どうしても体格のせいで子供が滑ってるみたいで、見てはいけないものを見てる感じがしてしまい、実にもったいないので…。
序盤で観客に手にしていた薔薇を渡す様子が私の席からはよく見えたのですが、すごくぎこちない表情で吹き出しそうになってしまいました。ドンファンなんだから照れちゃダメ!(笑)でもかわいかったです。

村上佳菜子。ジュニア時代に滑っていたプログラムをエキシビションにしたもの。佳菜子ちゃんは生で見ると体のバネというか躍動感が凄くて、テレビで見るより生の方がいいスケーターの5本の指に入るかもしれないな(ちなみに個人的2大巨頭はプルシェンコと織田君)。今回もそれを強く感じました。スタオベしたと思う。
シングルの世界選手権代表にはインタビューもあり。だからペアとアイスダンスにもだな…(溜息)
インタビューは選手入退場口付近のキス&クライで。少し奥まった場所にあるので私の席からはほぼ何も見えませんでしたが、場内の大型モニターでも映してくれたのでそちらをガン見しました。

さらに無良崇人。曲はFeeling Good。
…うおおおおおお何これ超素敵。超カッコいい。ジャンプたっけえ!速攻スタオベなんだけど!今まで見た無良君の中でいちばんいい!
無良君はとりあえずオールバック禁止ね。この時の髪型を永遠に続けてください。額にかかった波打つ前髪がたまりません!←黙れ
町田君の引退により代表に選ばれることとなった無良君。きっと複雑な気持ちだったろうけど、これからも頑張って欲しいです。

本郷理華。この衣装と髪型はまさか、と思っていたらやっぱりマイケル・ジャクソンのスリラー!女の子なのによくやるよ!(笑)だってメイクまでマイコーっつーかゾンビっつーか!(笑)
彼女以前も演歌で滑ってたりしてたしエンターテイナーとして素質がありそう。顔立ちや体型は日本人離れしてて普通にしてれば綺麗な子なのにすごいギャップ。ついでに喋り方もクレヨンしんちゃんみたいでギャップが(笑)。好き(笑)
その格好のままで滑るアンコールとそのメイクのままで応えるインタビューもなかなか壮観でした(笑)。今後も是非エキシビションで弾けて欲しいです。競技の方の彼女も今シーズンすごく良かったですよね。

以下次号。

All Japan Medalist on Ice 2014⑨

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20分程度の休憩ののち、後半がスタート。オペラ歌手の美声が氷上に響き渡り、第2部の開始が告げられる。

第2部最初の演技者こそ、このメダリスト・オン・アイスのクライマックスだった。見慣れた白と黒の衣装でリンクに現れたのは町田樹。現役最後の演技が始まった。

最後の演目に彼が選んだのは「エデンの東」。サリーナスの大地を慈しむような、あのメロディーが流れ出す。
彼は競技人生最後のわずか2年足らずの日々で、作中に登場する言葉「ティムシェル」を体現した。ティムシェルは非常に深い言葉で、その言葉を物語の核としたエデンの東も非常に深い話である。町田君が「理解のために原書を読んだ」と言っていた理由がわかるほど深い。旧訳も新訳も、さらには作者が執筆中に残した創作ノートまで読んだが、その上で原書にも手を出すべきかもしれないと私も思った。もっと若い頃に読むべきだったと後悔している。あの頃の自分ならもっと水が吸うように物語を理解できたかもしれないし、何よりかなり間違いなく人生を変える一冊になっていたと思うから。なのでまだ若い町田君がこの作品に感銘を受けた気持ちは痛いほどわかる気がするし、最後のプログラムに選んだのも納得できる気がする。

最初のジャンプは抜けてしまったが(たぶんジャンプだったと思うけど違うかも)、あとのふたつのジャンプは素晴らしかった。私は町田君のジャンプが好きだ。表現に長けたスケーターを好む傾向がある私だが、町田君のファンになったきっかけは実はジャンプだったりする。あの小さな身体から繰り出しているとは思えない豪快なジャンプに衝撃を受けた。それ以来町田君の演技の中で最も楽しみなのはいつもジャンプだった。
最後の演技。高くて力強い、見惚れるようなジャンプをふたつ、彼は跳んでみせてくれた。私はジャンプの見分けがまったくできないけど、この時だけはわかった。ひとつめがトリプルアクセル、そして最後に跳んだのはルッツ。いつか広島のリンクでも見せてくれた、大きな大きな、空へ舞い上がるようなトリプルルッツ。それは宝物のようなジャンプだった。最後の最後に町田君がくれた、最高のクリスマスプレゼントだった。

最高の出来ではなかったと思うし、もっともっと感動した彼の演技ならこれまでに何度もあったと思う。でも町田君は穏やかな笑顔だった。最後の時をいとおしむようなその顔を見ていると、何故今辞めてしまうの、などとはとても言えなかった。ティムシェル。人間には選択する権利がある。町田君は自分の道を自分で選んだ、ただそれだけなのだ。

たぶんすべての観客がスタンディングオベーションを送っていたと思う。山本草太君から手渡された赤いスカーフを首にかけ、マイクを手にした町田君が、その観客に向かって挨拶を始める。
本当に、いい競技人生でした…。そう言って彼は声を詰まらせた。もう、涙をこらえることなどできなかった。

最後にもう少しだけ、この曲とともに滑らせてください…。曲は「Je te veux」、とプログラムのタイトルを口にして、赤いスカーフとともに町田君が滑り出す。誰もが一度は耳にしたことがあるだろう、あの甘やかなピアノの旋律。結局映像ですら見たことのなかったこのプログラムを、こんな形で目にすることになるなんて…。
Je te veux、英語にするならI want you。パリの街角で口づける男女の写真(これもたぶんものすごく有名な白黒写真)をモチーフにしたというこのプログラムに描かれているのは恋だろう。赤いスカーフは愛しい相手を表しているのだと思う。でも彼にとってのその相手は競技としてのフィギュアスケートだったのではないか。少なくとも、今この長野のリンクで彼がともに滑っているその相手は…。
入退場口に消えていく町田君。なびくスカーフが先に氷を離れた彼の身体を追って視界から消える。まるで名残を惜しむように。まるで、燃え尽きる寸前の蝋燭の灯りのように。まるで、彼が最後にひとかけらだけ白い氷に残していった、静かな情熱の炎のように…。

感動して客席で涙を流したことは多々あれど、声を上げて泣いたのは初めてだった。近くの席の方すみませんでした(泣)。でもきっと、私以上に泣いていたファンがたくさんいると思う。本番に弱くてなかなか結果の出せなかったあの町田君に、こんなにもたくさんの人が総立ちで拍手を送り、別れを惜しんでいる。2013年の春、ビッグウェーブのスタンドでひとり彼の演技が始まるのを待っていた私にこの状況を教えたら、一体どんな顔をするだろう。

私はきっとこの瞬間に居合わせるために夢に導かれたのだ。躊躇っていた長野行きを諦めなくて良かった、と心から思った。
町田君、長野で送った手紙にも同じことを書いたけど、最後にもう一度だけ言わせてください。あなたのこれからの人生に、たくさんの幸せと成功が訪れることを、心から祈っています。

以下次号。

All Japan Medalist on Ice 2014⑧

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シニアの代表だけどここで登場、村上大介。四大陸代表おめでとう。
彼も生で見るのは初めてかもしれない。ショートプログラムを滑ってくれました。NHK杯では優勝したのに彼のショートは地上波で流れなかったんだよね確か。存分に見られて嬉しかったです。

ゲストの登場。まずは村主章枝。引退した彼女の門出の場に、このメダリスト・オン・アイスが選ばれたらしい。長い、本当に長い間現役選手として日本のフィギュアスケートを支えてきてくれた彼女。真央ちゃんの登場でブームに火がついた約10年前にも、彼女はトップ選手として最前線で活躍していた。彼女たちの功績が今の日本のフィギュアスケートの礎。その新たな人生の船出の場所に立ち会えて感無量でした。
演技はジャンプの失敗なども目立ったけれど、村主さんらしい、熟成した時間と個性がなければ滑れないプログラムだったと思います。今まで本当にありがとう。お疲れ様でした。

そして第1部のラスト。光沢のある、おそらくはシルクの濃紺のシャツ。黒い髪を風になびかせて、リンクの中央に滑り出すもう見慣れたシルエット。今年もはるばるスイスから、年の瀬の押し迫る日本までやってきてくれた人。
ステファン・ランビエール。「トゥーランドット」。

トゥーランドットと言えば、トリノオリンピックの荒川さんが真っ先に浮かぶのが我々日本人だろう。堂々とした女王の滑りだった。ほかに印象深いと言えば、申雪&趙宏博ペアのトゥーランドット。テレビで見ていたけど涙が出るほど感動した。あれを超えるトゥーランドットなどそうそう出てこないだろうと思っていたが、ステファンのトゥーランドットも引けを取らない素晴らしさだった。

相変わらず羽根のように軽やかなジャンプと、ほかに並ぶ者のない圧倒的なスピン。リンクを支配する、王者の風格。
そう、今ここで滑っているステファンは、スケーターではなかった。どこか遠い国の王だった。王が堂々とそのブレードで歌い上げる、誰も寝てはならぬ、Nessun dorma。照明の光を背負ったその姿は、神々しくさえあった。

今年見たステファンの演技のうち圧倒的にいちばん良かったと思う。もちろんスタオベ。第1部のトリだったので、思う存分Aさんと感激に浸ることができた。自分への少し遅れたクリスマスのつもりでやって来たこの長野で、今年最高の演技を見られるなどというこれ以上望みようもないプレゼントをもらえて言葉にならなかった。色々思うことがあり、正直長野に行くのは怖かった。もし町田君のことがなければきっとやり場のない気持ちでここに座っていたと思うけど、やっぱり見に行くことにして良かったな、と嬉しいのか哀しいのかわからない気持ちで、氷上の彼に拍手を送った。いつまでも、いつまでも。

以下次号。

All Japan Medalist on Ice 2014⑦

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目線よりも高い位置に作られたステージから、音楽が降り注ぐ。メダリスト・オン・アイス、今年も開幕。
オープニングはいつものように2部構成。前半にジュニアの選手やゲスト、後半にシニアの世界選手権代表。引退した町田君や村主さん、ステファンは前半に登場したと思います。地上波での放送は基本エキシビションの後半、シニアの代表選手の演技しか流さないので、オープニングも最初からそれらの選手しか出ていないかのような演出になってます。毎年のことなので慣れました。地上波で全部見たいなんて所詮はワガママなんだよなあ。競技すらほとんど放送されなかった時代もあったことを考えると余計に。全部見たければ万難排してその場所に行くのが一番で、それは何についても同じなんだよね。なかなか思い通りにいかないのが現実なのですけれども。

私の席からは選手の入退場口が見えたので、次に待機している選手の様子が伺えてちょっと楽しかったです。ステファンや町田君が見えた時はそれはもう気もそぞろ(笑)。

オープニングが終了すると個人演技。もう半年近く前のことなので記憶は曖昧です。登場順など間違ってるかもしれませんがお許しください。

トップバッターは永井優香。生で見るの初めてかな?姿の綺麗なスケーターだなと思ったけど、演技はこれと言って印象に残らず…。すみません。

続いて中村優ロミオとジュリエット。数多くの男子スケーターが滑ってきたプログラムですが、これはまた随分と初々しい。ステファンの使ってた音源と一緒かなこれ?ステファンはロミオを演じるには薹が立ち過ぎていたんだなあとしみじみ(笑)←注:筆者がいちばん好きなステファンのプログラムはまさにそのロミオとジュリエットだったりします

坂本花織。何となくパワーを感じるな。演技も細部は全然覚えてないんだけど、もう一度見てみたいかも。

佐藤洸彬。何これむっちゃ楽しそう。本人ノリノリだし会場盛り上がり過ぎ(笑)。いい味のスケーターが出てきたな。Aさんが「岩手の人」ってずっと呼んでてツボりました(笑)。来年も期待してるぜ。
ところで彼だけパンフレットに解説が載ってなかったんですが…(悲)

樋口新葉。白い衣装の穏やかな曲。ジャンプミスもあったけどさすがの演技。体型が既にジュニアじゃないよねこの子。もう成長期が終了したのだとすると今後が恐ろしいですね。
彼女だけは地上波でも流れたようですな。フジテレビ相変わらずの猛プッシュ。ジュニアのうちはできるだけ騒がずそっと見守りたいんだけどなあ、特に女子は。次世代のヒロイン的な扱いを受けてたのにあの人は今?みたいな状態になってるスケーターが何人いることやら…。このメダリスト・オン・アイスでも毎年何人もジュニアの選手たちを見るけれど、シニアでも活躍できるのはそのうちのほんの一握りに過ぎないのだと思い知らされ続けて、どんなに上手な選手でも、ジュニアの間はそっとしておきたいと思うようになりました…。

本草太。ニューシネマパラダイス
上手い。ここまでに登場したジュニアの選手は全員初めて生で見たと思うんだけど、明らかにこの子上手い。この曲がフィギュアスケートにものすごく合うというのも大きいかもしれないけど、それを差し引いても頭ひとつ抜けてると思った。今後の順調な成長を期待してしまいますね。

アイスダンス、平井絵己&マリオン・デ・ラ・アソンション。昨年も出演してましたね。
演目は007。かっこよかった。男性が外国人なので今後国籍問題にぶつかってしまうと思うとやるせないが、また見てみたいと思う滑りでした。

以下次号。

All Japan Medalist on Ice 2014⑥

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そろそろ開場時間のため、知人とはケーキをご一緒してお別れ。蕎麦食べたいケーキ食べたいと騒ぎまくる私にお付き合いいただき本当にありがとうございました。今考えると「お前何しに来た」状態でホントすみません←って半年近く経って気付いたんかい…

やっとチェックインできたのでいったん部屋に入り、荷物を整理したり色々してからビッグハット行きのバス乗り場へ。臨時便がたくさん出ているようだけど長蛇の列。間に合うのかなあ、とドキドキしていたら、ここで合流予定だったすっかりお馴染みステファン仲間のAさんが到着される。今回もお世話になります!
列は意外とサクサク捌けていき、往復の乗車券も購入していざ乗車。さすがに座れなかったけど、喋ってたらすぐ着いてしまう距離だった。蕎麦屋で見かけたサインの話をした際に「歌う方です」と付け加える私。この車内では「ユズ」と言ったら「ゆづ」のことを指すから。世間一般は歌う方でもこの車内では100%滑る方だから(笑)。うっかり聞いてしまった人をぬか喜びさせてはいかんからね(笑)←そういうの無駄な気遣いって言うんじゃ…

4年ぶりのビッグハット。4年前もここにメダリスト・オン・アイスを見に来たのだった。メダリスト・オン・アイスそのものは、10年くらい前に新横浜で見たのが最初のはず。
場内へと歩を進めると、今年も入口でスポンサーのニチレイからのお土産を配っていた。レトルトスープや水、クリアファイルに付箋などなかなかのボリューム。有り難いですね。重いけど(笑)。
いつものようにぼったくりパンフレットを購入し、手紙もボックスに突っ込んでから座席へ。SS席のわりと前方、中央よりもステージ寄り。4年前に座った席は列としては似たようなものだったが、ステージからはかなり離れた場所だったと思う。4年前の席の方がちょっとだけいい席だったかもしれないな、という印象はあったけど、今回もリンクに近くてよく見える席でした。
メダリスト・オン・アイスのパンフレットは、パンフレットというより直前まで出演者がわからないため1枚もののリーフレットがケースの中に出演者の分入っている、といった形式のもの。当然のように羽生君のリーフレットはなく、本当に出演しないんだな、と今更ながら悲しくなる。元気に滑ってる姿に、やっぱり会いたかった。

突然場内に爆音が響き渡り、まだ照明が落ちてないのに始まるのか?と慌てていると、リンクに現れたのはバボちゃん。フジテレビ恒例のバレーボール中継の宣伝らしい。フジテレビのスケート放送のテーマ曲・ボレロに合わせて(確か)リンクを数周。当然着ぐるみなので、滑り始めた当初は何だか危なっかしかったのだが、段々慣れてきたのか「明らかに上手い人が入ってない?」って感じになってきた。滑り終わったバボちゃんが立ち去ったかと思いきや、場内に歓喜に満ちた悲鳴が響き渡る。バボちゃんの中身が現れたのだ。

中に入っていたのは、
中野友加里さん(驚愕)
元日本代表のスケーター、現在はフジテレビ社員の、あの中野友加里さん。
…そりゃ上手いはずですな…。
久しぶりに滑ってるお姿を見られて嬉しかったです。現役時代の彼女の演技、好きだったんだ…。

さて、今度こそ開幕です。以下次号。

All Japan Medalist on Ice 2014⑤

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町田君の突然の引退は当然ながらファンの間で混乱を招き、メダリスト・オン・アイスにも出演しないのではないか、もう二度と人前で滑らないのではないか、と情報は錯綜した。メダリスト・オン・アイスは既に羽生君の欠場が発表されている。この上町田君まで出ないとなると、ファンの落ち込みは頂点に達するだろう。私もそうだった。
しかし、メダリスト・オン・アイスには出演すること、そして詳細はわからないまでも進路はスポーツに関する課程であり、今後も研究の一環としてアイスショーに出演する予定であることが判明し、ようやく私の混乱も少しだけ収まってきた。さよならを言う機会を与えられないのも、あの滑りを二度と見られないのも、あまりにも悲しかったから、そうではなくて本当に本当に安心した。

とても眠れないと思ったけれど、この日も仕事のため早朝に家を出て、帰ってすぐ女子のフリーを見届け、さらに旅行の準備や手紙の用意が待っていた私はやはり疲れていたようで、少しだけ横になるつもりが眠りに落ちていた。早朝に出発するのでわずかな時間ではあったけど。

まだ暗い道を駅まで急ぎ、在来線から新幹線に乗り換える。時間帯と上りのせいか始発の指定席はガラガラだった。すぐ前の席に座っていた夫婦の夫の方が広げていた新聞の一面に、思わず席から立ち上がる。そこには町田君の引退の一報が告げられていた。地元の新聞の、町田君が活躍する度に一面で扱っていた新聞の、おそらくは最後の一面記事。新聞を買わずに乗車したことを後悔した。そんな時間はなかったのだけれど、やはり後悔した。

車内に文字ニュースが流れている。全日本選手権の結果と、町田樹の引退の一報が、黒い液晶を右から左に流れていく。町田君が押しも押されぬトップ選手となったことを、最後の最後に実感した瞬間だった。2013年の春、ビッグウェーブの無料イベントに出ていた彼を、取材に来ているメディアなどいなかったと思う。あの日から今日まで、わずか2年にも満たない。

ステファンへの手紙も出来ていなかったが、私は何よりもまず町田君への手紙の下書きに取り掛かった。応援の気持ちをどうしても伝えたくて一度だけ書いた手紙を最初で最後にするつもりだったけど、昨夜自分の胸に溢れてきた感謝の言葉を、やはり手紙という形にして本人に伝えたいと思った。揺れる車内で下書きのペンを走らせながら、涙が頬を伝っては落ちた。隣の席に誰かが座るまでには、どうにか乾いていたけれど。
新幹線が駅に近付くと速度が落ち、揺れが小さくなる。その時間を狙って少しずつ清書を進めた。ステファンの手紙も完成させなければならない。眠っている時間はなかった。

名古屋に到着し、特急しなのに乗り換える。乗り換えに30分以上あったので、トイレがどれだけ並んでいても余裕があったし、出発まで結構な時間をホームに停車しているしなのの車内で揺れずに手紙が書けるのもありがたかった。
しかし混んでいる。帰省ラッシュという言葉をようやく実感する私。指定席を買っておいて良かった…。しなのの座席は新幹線に比べて狭く、隣の女性が少々恰幅が良かったので圧迫感があったのには参ったけど。ちなみに新幹線も新大阪くらいからは満席だったと思います。

長野まで約3時間。走るにつれて車窓に広がる銀世界の面積が増えていく。ほとんど白で埋め尽くされた世界を自分の日常で見かける機会があまりないので、ついつい見入ってしまう。
ステファンへの手紙も無事清書を残すだけとなり、特急もさほどの遅れもなく長野駅に到着。新幹線開通のため工事中だという駅舎を通り抜け、予約していたホテルへ向かった。
フロントでは今日の宿泊客が多くチェックイン予定時刻まで部屋に入れないことを告げられる。約束があったので別にいいんだけどそんなに多いのか。とりあえず荷物を預け、ロビーで待ち合わせていた知人と合流。たぶん10年以上ぶりに会ったので、すっかり顔を忘れていました、申し訳ありません(笑)。

その足で駅の近くの蕎麦屋へ。地元の人だからきっと美味しいお店を色々ご存知だろう、教えてもらえたら有り難いな、くらいの気持ちだったのに、わざわざ直接案内までしていただいて、しかも奢ってまでいただいて大変申し訳ない…。念願の蕎麦をいただけて非常に幸せでした。
どうやら有名店らしく、店内にはサインが大量に飾ってありました。煤けていてよく読めないものもあったけど、かなり大物のサインが多かったような。ゆずしか覚えてないですが、歌う方ね。でも全然ファンではないのよね。たぶんそのグループにニックネームがよく似てる人がいらっしゃるせい(笑)。この時は腹痛の原因は不明だったので、かなり心配していました。

蕎麦を堪能したあとはホテルのロビーでケーキをいただく。どうしても食べたかったんですよケーキを。確かショートケーキしか残ってなかった。やはりビッグハット方面に行かれる方々の影響か。ってお前もだろ(笑)
申し訳ないと思いつつここでステファンの手紙を清書。10年ぶりにお会いしたのにやりたい放題で本当に申し訳ありません…(汗)。
周囲は女性客だらけで、漏れ聞こえてくる会話からして明らかにそうなのだけど、知人が「みんなカードみたいなの書いてるんだけど…」と不審がっていた時点で決定。たぶんここにいる全員がこれからビッグハットに移動する(笑)。

以下次号。