うさぎパイナップル

フィギュアスケート旅日記とテレビ観戦記とその他色々色々・ただ書き散らして生きていたい(ライター始めました2018・生活の糧と居場所募集中)

平昌オリンピック雑感⑳

あれから四年、これから四年。四年リズムの物語が、ひとつの結末に導かれていく。その最終章を書き上げる神は、どうやらこれまでに担当してきたどの神よりも高い文才の持ち主であるようだ。それを読まずにいることなどできようか。


★2月23日・女子フリー②

第3グループです。メダルに手を伸ばそうと思えば伸ばせる選手たちなので、一気に緊張感が増してきますね。

13:マリア・ソツコワ
素晴らしかった。全然心配なく見られた。まさにトップ選手の貫禄だった。ネイサンもそうだったけど、よくショートの順位から腐らずにフリーでここまで心を込めて滑り切ったと思う。本来の実力がオリンピックで出せて本当に良かった…。ところでやっぱりタノの方が回転が安定するのかな彼女は。

14:カレン・チェン
ジャンプもきっちりリカバリーするなどなかなかの出来で進んでいたが、後半になって転倒に着氷ミスと大きく乱れてしまった。スパイラルはものすごく美しい、加点ボタン押したい…。音にきっちり合ったスピンで終了し盛り上がるいいプログラムだが、ジャンプがこれでは上位は厳しいか…。身に付けてたペンダント綺麗な色だったな…。

15:ブレイディ・テネル
素晴らしい出だしでこのまま行けるかと思ったが、中盤でジャンプがステップアウト。足にきてるように見えた。そのあとよく立て直した。ステップは魔法の解ける時間までに帰らなければならないというあのシーンなのだろうが、どっちかというと「追っ手から逃げるスパイ・コードネームシンデレラ」みたいな緊迫感(汗)。どうなることかと思ったが、最後はハッピーエンドでしたね。

16:ガブリエル・デールマン
ものすごいスピードでワクワクする冒頭だったのだが、いきなりコンビネーションのセカンドジャンプをミスし以降厳しい展開に…。ジャンプはミスなく跳べたのは一本、いや二本だけだろうか。転倒も続き、減点されるスピンも。この出来は怪我でもしているのだろうか…。メダル候補だったのでこれは悔しいだろう…。

17:チェ・ダビン
ジャンプの助走が長くすごく慎重に跳んでいて、コンビネーションジャンプもかなりのったりなので、ノーミスでとても綺麗に滑ってるのに見ててヒヤヒヤするという…。本当にジャンプを失敗しないためのプログラムという感じを受けて戸惑ってしまったが、ここは自国開催のプレッシャーの中でノーミスできたことを素晴らしいと思うべきか。そうだよね、きっとすごく頑張ったはずだよね。団体戦からいい演技をたくさんありがとう。

18:長洲未来
軌道からこれは、と思ったが、やはりトリプルアクセルはうまく跳べなかった。あれは1回転にすらならないのか…。そのあとは良かったのだが、後半でジャンプが一本シングルに。さらに疲れてきたのが動きが重くなってきたような。何とか最後まで滑り切った。うーん、団体戦が素晴らしかっただけに残念です。もう一度豪快なトリプルアクセル見たかった。でも団体戦であれだけのものを見せてもらえたんだもん、贅沢言っちゃいけないよね。

ついにこの時が訪れました。第4グループの選手たちがリンクに滑り出してくる。その緊張感ですっかり眠気も飛びました…。女子の試合でこんなに緊張したのたぶん初めてです。

19:宮原知子
滑り出した瞬間から、今日はいい演技するなと思った。最初のコンビネーションにレビューついてるので、あそこがどうなるかだけだろう。本当によくオリンピックに間に合わせた。もし怪我を負うことがなければ、彼女の順位はもっと下だったんじゃないかと思う。怪我は辛いことだったに違いないけれど、その怪我が彼女に足りなかったものを最後に引き寄せたような気がしてならない。無口な人形のように滑っていた彼女の、こんな魂の入った演技が見られるなんて…。貪欲に勝ちを欲する、しなやかで強い青い魚みたいだった。今まででいちばんいい演技をこのオリンピックでやってのけるなんて。怪我がこの結果に繋がったんだなあ、人生ってホントに何がどう影響するのかわからない…。
実況と解説の力の入れ具合がすごい。ドキドキしながら得点を待つ。おお、回転不足取られてない!すごい点が出た!これはどうなる…。

20:カロリーナ・コストナー
うーん、ジャンプのミスが痛い。転倒しなかったのは良かったのだが…。出だしからいつも以上に動きが美しくて、とても心を込めて滑ってたと思う。ステップは圧巻の一言だった。やっぱり一人だけ別の競技やってるように見えた。
うーん、すごいカロリーナが見たかったなあ。でもこの目まぐるしく情勢が変わった四年間を経てなお彼女がこの順位を叩き出したのってものすごいことだと思う。ミスと言っても本来はたぶん致命的なものじゃない。何という戦いなんだ…。

21:坂本花織
あああループがステップアウト。ルッツのエッジは大丈夫じゃなかったのかな、速報から点が下がってしまった。でもこの最終グループにいきなり入って本当によく頑張ったと思う。彼女がこの順位なのはシーズン序盤を思ったら考えられないほどの快挙だ。ぐいぐいリンクを駆けていく疾走感。少しはすに構えた若い横顔の写真が、ひらひらと白い氷で舞うような不思議な郷愁。磨くことはまだまだあるだろうけど、きっと今日の演技は誰かの心を風のように吹き抜けていったはずだ。
坂本さんの活躍に今シーズンいちばんワクワクしました。楽しませてくれて本当にありがとう。

22:アリーナ・ザギトワ
ルッツのコンビネーションが跳べず、ああこれは、と思ったが、そのあとリカバリーしてきた。しかも素晴らしいセカンドループで…。もう言葉失いました。ミスがミスじゃなくなってしまった。ノーミスするとかしないとかいう話じゃない。そういうレベルにはこの人はもうない…。圧倒的なものを目の前にした時の、無力感に近いような衝撃に、ただ呆然とその滑りを見つめることしかできない…。
心臓がバクバクしっぱなしだった。皆のいい演技にワクワクしていたさっきまでの時間が遠い昔のように思える。もう金メダル争いの行方しか目に入らない…。

23:ケイトリン・オズモンド
ミスらしいミスは三つ目のルッツの着氷だけだろう。それも最小限のミスだ。今日は素晴らしく黒鳥になりきっていた。やっとこのプログラムを本当に自分のものにした。ビリビリくるような、これまでででいちばんいいケイトリン。リンクを余すところなく舞台に変えた。嵐に乗ってやってきた、気高く禍々しい漆黒の鳥。黒い女王。迫力あるジャンプはまさに目一杯に広げた黒い翼。むちゃくちゃ良かった。これを滑るには優し過ぎるんじゃないかなんて思ってたのに、こんな素晴らしい演技を見せてくれるなんて…!これはいい点出して欲しい、と思ってたらああやっぱり出た、ものすごい得点!
実はいちばん心配していたのが彼女だった。くじ運が無さすぎる…。彼女次第でメダルの行方が決まることもわかってただろうし、先に滑った選手たちがいい演技をしてミスが許されないことも知ってたんじゃないのか。おまけに直前はザギトワ。ものすごいプレッシャーがかかっていてもおかしくない。これまでの試合からフリーで崩れる印象が強かったので、本当にドキドキしながら見守ったのだが、そんな心配全然いらなかったですね。ああ本当に良かったです…。

24:エフゲニア・メドベージェワ
オリンピックの最終滑走でこの演技。もう何も言葉が出ない。あの彼女が、いつも鉄のように強い覚悟をその表情に浮かべていたあの彼女が、演技終了と共に涙を流している。ザギトワの結果も知っていただろう。どれだけプレッシャーがあったか…。本当によく頑張った。もう何も言えない…。
これはどうなる。勝利するために必要、と表示された得点は信じられないほど高い数値。心臓の鼓動が止まらない。ああ、僅差でザギトワが勝った…!コンビネーションを前半に持ってこなければメドベージェワが勝てたのかもしれないが、確実性を取る理由があったのだろう。いつもまだまだできるという強気な表情だった彼女が流した涙。本調子ではなかったのかもしれない。上質な物語を読んでいるような演技は最終グループ内でも際立っていた。どちらが勝ってもおかしくない、という言葉がこれほどふさわしい勝負もそうそうないのではないか。

私はわりと「勝負だから仕方ない」とスパッと斬ってしまう方である。どんなに好きな選手のことでもそう思う。何が敗因か、勝った選手は何が良かったのかを考え、納得させる。もちろん本音では悔しくて衝動買いしてしまったりもするんだけど(笑)、でも結果は結果できちんと受け入れる。それはスポーツ観戦においては基本中の基本で、そこを受け入れられないのであればそもそもスポーツを見るべきではないだろうと思っている。
けれど、今回初めて、金メダルをふたつあげて欲しいと思ってしまった。ザギトワもメドベージェワも、ルールを駆使し、駆使できるほどの技術を磨きあげ、その技術を最大限に発揮して完璧に演技したのである。相手のミスを待たなければ勝てない、というような次元じゃない。どちらも勝者にふさわしい演技だったのだ。しかもフリーはまったくの同点だった。信じられないような話だ。だからショートの点差がそのまま勝負を分けたことになる。これが勝負だ。勝負だけれど、この二人のずば抜けた実力を思うと、王座がひとつしかないという事実に、何ともやりきれない思いがした。
なんだかソチシーズンのパトリックと羽生君をなぞっているような気がしてしまう。オリンピックが一年早く開催されていたら、金メダルは間違いなくパトリックだった。昔のパトリックは羽生君が苦手そうだったけど、自分の後ろから急激な勢いで追い付いてくる羽生君の存在は恐ろしかったに違いない。そのプレッシャーはおそらく彼にしかわからないものだっただろう。オリンピックで勝つということが何故難しいのかは、「四年に一度しかない」というそのことに尽きるのではないか。才能、努力、運。どれかひとつ欠けても真の勝利者にはなれないのである。

ものすごい戦いだった。最終グループの前半のことを後半に入った瞬間に忘れるくらい、後半に滑った3人が凄かった。超納得の表彰台でした。こんなに心臓がバクバクしっぱなしだった女子の試合初めてです。
皆素晴らしかったということも強調したいけれど、その上でいちばん頑張ったのはやっぱりケイトリンじゃないかな。あの滑走順で本当によくあれだけの演技ができたと思う。宮原さんもミスをして負けたのなら悔いも残ったろうが、あの完璧な演技でも勝てなかったのなら仕方ないと割り切れるんじゃないかな。上位3人がもっと強かっただけ。今回は本当にただそれだけだ。どうやったら勝てるのか、また考えていけばいい。今回の彼女の演技に心を揺さぶられた人たちがきっといる。本当に人の心を打った演技であれば、いつまでもその記憶に残っていく。それでいいんだよ。
いやもう、ホントに凄かったです、最終グループ。もはや伝説ですね。せめて末端の語り部としてその記憶を後世に残しておきたい。誰がこのブログにたどり着くのかという事実は置いておいて(笑)。

しかし、「オリンピックの魔物」なんて単語を思い出す暇もなかったよ今回の女子は。通常とは異なる特殊な状況下における過度の緊張や思いもよらないアクシデントを魔物と称しているのだと思うが、皆それをコントロールできるよう練習を重ねてきたのだろう。そしてやはり女性は肝が座っているってことなのかも。
実は、数日前表彰台の中央に立つ羽生君の姿を見届けながら、私はこんなことを思ってた。「オリンピックの魔物って羽生結弦本人じゃないのかな…」
泣き疲れるほど泣きわめいてたのに、随分冷静にそんなこと考えたもんだな、と今にして思うのだけど(笑)、どうやら同じ事を考えていたのは私だけじゃなかったらしい。やっぱり思いますよね?(笑)本人の才能と努力の賜物である勝利だともちろんわかってはいますが、その上で「魔物かな」なんて思わせる羽生君ってやっぱり規格外…。ああ、あの方は神かもしれない、と震える程感動してる人たちに「あの人ギャグ猛烈に寒いっすよ」と教えてあげたい。ちょっと面白過ぎな人だということに気付いて混乱してますます深みにはまるその過程をそっとスピードアップさせてあげたい…。って余計なお世話じゃ(笑)
そう、魔物はカーリングごっことかして遊んでたから女子の試合には来る暇なかったんですよ。もうそういうことにしておこう(笑)。ああ、羽生君が金メダルをロシアのふたり両方にあげたいとフジテレビの番組で言っていたことを、誰かメドベージェワに教えてあげて欲しいとすごくすごく思った…。

残すはエキシビションだけとなりました。これを書いている今は前日の2月24日で、もう明日で終わってしまうのだなと寂しい気持ちです。思いっ切り時差が発生しているので、もう既に忘却の彼方という方も少なくないでしょうが(泣)、よろしければ最後までお付き合いください。