うさぎパイナップル

主にフィギュアスケートの旅日記とテレビ観戦記とお題記事・ただ書き散らして生きていたい

Continues ~with Wings~ ライブビューイング④

続いて羽生君によるトークコーナー。羽生君がリハビリ中で十分に滑れず、出演するスケーターも決して多くないためか、こういったコーナーがふんだんに盛り込まれていました。
登場したのは羽生君とプルシェンコ。日替わりで羽生君がスケーターに質問をするコーナーなのですね。ショーは3日にわたって行われていたのですが、最終日の質問相手は満を持してのこの人、プルシェンコです。

羽生君がプルシェンコのファンだというのは非常に有名な話だと思いますが、本人も緊張するー、とおっしゃってたような。そうだよねえ、わかるわかる。こんなに緊張している羽生君を見るのは久しぶりかもしれませんね。
羽生君はインタビューや会見などではいつも、話している人の顔をじっと見つめているのですが、今日ももちろんプルシェンコの顔をガン見。もうはっきりガン見でした。演技前等にものすごく集中してる時の顔でした(笑)。こんなに真剣な顔で相手の話を聞いてる羽生君は見たことないかも…。

プルシェンコへの質問は3つだったと思うのですが、プルシェンコにとっての憧れの選手は誰なのかという問いに、君が僕の憧れの人だと言われた羽生君、必死で泣くのをこらえてるように見えた。ずっと憧れて、目指してきた人にそんなこと言われたら、そりゃ泣きたくもなりますよ。
ここでだったかどこだったかちょっと忘れたけど、プルシェンコの奥さんは平昌の羽生君を見て泣いていたそうである。ああ、あの奥さんが…。となんかめちゃくちゃ納得してしまった。何を納得するんだと問われたら答えようがないんですけどね(汗)。

そしてびっくりしたこの質問。ソルトレイクシティーオリンピックヤグディンに負けた時、バッシングも多かったと思うが気持ちの持って行き方はどうしたのか、みたいな内容だったと思う。
それを、それを聞くか羽生君…。今までも聞かれたことはあるのかもしれないが、そこに切り込む勇気のある人はなかなかいなかったのではないか。しかも大ファンの人間の傷を抉りかねない質問だ。その勇気を出すとは、よっぽど聞きたかったことなのだろうと思った。

私はあのソルトレイクヤグディンのファンになったおかげで今があるのだが、実はヤグディンのことはその時までまったく知らなかった。一方プルシェンコのことは名前くらいは把握していて、優勝候補だということも認識していた。なので彼のショートプログラムのミスにはよく知らないながらも驚いた記憶がある。
私がプルシェンコという存在を知ったのはどうやら彼が初めて伝説の筋肉スーツを披露した世界選手権のエキシビション(たぶんね)で、しかも何年もそのことを忘れていた、て言うかたぶんあえて記憶から抹消してたっぽい、というツッコミどころ満載の事実についてはとりあえず流しておいて話を進めます(笑)。

ヤグディンプルシェンコのライバル対決については、調べれば調べるほど「こんな少年ジャンプみたいな話が実際にあるのか」と衝撃を受けるような内容だった。同じ国、同じコーチの元に現れた二人の天才。タイプの異なる二人のそれぞれの葛藤。二人の明暗がくっきり分かれたあのソルトレイクが、私が彼らの直接対決を見た最初で最後だった。もっと早くこのスポーツに気付くべきだった、とかなり後悔した。
もしヤグディンプルシェンコも存在しない世界にワープしたとしたら、私は脚色をほぼしないまま自分の記憶を物語化してしれっとジャンプ編集部に持ち込みすると思う(笑)。
あの時勝利したヤグディンは故障で比較的若いうちに引退してしまい、プルシェンコだけが競技のリンクに残った。時には疎ましく思ったこともあるだろう最強のライバルの去ったリンクで、彼は自分を打ち負かせる存在をずっと待っていたように私には思えた。そう、それがほかの誰でもない、羽生結弦だったのではないか。

プルシェンコは、2位は負けなのだとはっきり答えながらも、フィギュアスケートが好きだから続けられたのだ、みたいなこと言ってた気がしますが、かなりうろ覚えなので間違ってたらごめんなさい。彼にとってスケートは「ただ好きだから楽しい」なんて甘いものではなかったろうな、ということは容易に想像できる。
そして最後に、彼はこう締め括った。

4回転アクセルを跳んでね。次のオリンピックでも勝ってね。

その言葉を聞いた羽生君が何を思ったのか、もちろん我々には知るよしもない。だが、その言葉を羽生君に言ってくれる存在を待っていた人々は世界中にいるに違いない。しかも、最も彼の心にその言葉を届けられるであろう人物が口にしたのだ。これ以上のことがあるだろうか。
羽生君は今のところ北京までとは考えていないのだと思う。彼の人生計画にそれはなかったのだろう。これまでの日本男子の引退年齢や足の状態なども考え合わせて、だいたいこのくらいまで、ともしかしたら決めているのかもしれない。
だが、平昌を見ていて私は思った。正直平昌以降のことはまったく頭から追い出していたので考えてもいなかったが、平昌の羽生君を見ていたら「君、これが天井じゃないでしょ?」とごくごくフッツーに、素直に思った。確かに男子のピークの年齢は23歳くらいと言われたりはしているが、その常識みたいなものを破る選手もいないわけじゃない。押し付けたくもないし無責任なことも言いたくないが、彼に期待を寄せる人々の気持ちはわかりすぎる程わかる、とだけ言わせて欲しい。

トークコーナーではなく演技前の紹介映像だったかもしれないけど、プルシェンコの言葉が支えになったと羽生君は言っていた。その言葉というのは、おそらくP&Gのイベントでプルシェンコが発言した内容なのではないかと考えられる。プルシェンコは羽生君の勝利を確信していた。その言葉は、我々ファンの不安もずいぶん軽くしてくれたんじゃないかと思う。少なくとも私はそうだった。羽生君の連覇を確信していたところへのあの怪我、その直後にプルシェンコが放った言葉の数々は、「プルシェンコがそう言うんだから大丈夫だ」と素直に信じられる力があった。

その時にプルシェンコが、サルコウトゥループだけで勝てると言っていたことを覚えている人もいるだろう。その通りであったことは皆さんもご存じのはずだ。さすがにループは入れるのではと思いつつも、プルシェンコがそう言うのならそうだろうと、私はショートプログラムの前にはひたすら「最初のサルコウさえ跳べればいける」と祈り続けていた。実際の構成は当日まで明かされなかったにも関わらず。それはプルシェンコの言葉には信じるに値する力があるとどこかで悟っていたからだ。
そのプルシェンコが、さらりと「北京ではルッツが必要になると思うけど」と言っていたことも私は聞き逃さなかった。平昌に出られるかどうかもわからない状況だったのに、北京の話にまで触れているプルシェンコのその言葉で、初めてその可能性に私は思い至ったのである。本当の本当に、私には平昌以降のことが何も考えられずにいたのだ。

だから、プルシェンコが今回羽生君に言った言葉はリップサービスではないと思う。彼のスポーツ選手としての、フィギュアスケーターとしての確かな目が、その未来を捉えたからこそ直接彼に言ったのだろう。
それをどう羽生君が受け止めるかはもちろん我々にはわからないし、羽生君の自由である。いくら尊敬するプルシェンコの言葉でも、と思っているかもしれない。誰も彼に強制はできない。すべては彼の心が決めることだ。
だけど、もしも羽生君が今後のことを迷った時に、今日のプルシェンコの言葉を思い出して欲しい、と思った。あなたに王者のバトンを渡した人は、きっと世界中の誰よりもあなたを信じている。

しかしまあ、これだけ期待されてる人もそうそういないよな、と改めて思いました…。皆、本人が決めることだからと本音はどうあれはっきり言わないところに、あのロシアの人がズバリだからね(汗)。羽生君の質問もいい加減ズバリだったからね、お互いズバリ対決だったね←勝手に対決にするな

以上で質問コーナーは終了。羽生君にとってはとても充実した時間だったのではないかな、そんな風に見えました。
ロシア語と日本語だったから聞けた、伝わるものがあったといった感じのことを述べる羽生君。お互いの母国語ではない英語では、なかなか細かいニュアンスまで伝えきれなかったんだろうな。

…とんでもなく長くなってきて今ちょっと青くなってますが、まだまだショーは続きます(汗)。そんなわけで以下次号。