うさぎパイナップル

主にフィギュアスケートの旅日記とテレビ観戦記とお題記事・ただ書き散らして生きていたい

グランプリファイナル2019雑感③

女子のショートプログラムの後に同じ放送枠内で流れた男子フリー。時間帯的に来るかなと思いましたが、やっぱり来たー!生放送ー!テレ朝の生放送はいつも何かしら起きるのでドキドキしちゃいますけど、やっぱり生放送が誰がどう考えてもいちばん楽しい。ものすっごく緊張しますけどね。
掃除してお風呂入って禊して、1個だけ残ってた柚子酒キットカットも用意して、テレビの前で待機。さあいよいよ今年のシニア男子のグランプリシリーズが終結します!

男子フリー

1:ボーヤン・ジン
4回転が冒頭から3本続くプログラム。しかしルッツと単独のトゥループは転倒。ボーヤンのルッツはいつも壁にぶつかりそうでドキドキしてしまう。
その2本のミス以外はそれなりに良かったんじゃないかと思う。ただ、全体的にあまりスピードがなく、ステップは少し疲れているように見えた。朝の公式練習に出てこなかったそうだけど、体調は大丈夫だったのかな。


2:ドミトリー・アリエフ
アリエフが普通に滑れば表彰台も狙えると思ったのだが…。4回転ルッツが綺麗に決まって行けるかと期待したが、4回転の転倒や抜けが続く。しかし様子がおかしくなったのはおそらくトリプルフリップからだろうか。痛そうな転び方だった。直後のスピンがほどけてしまい、何かあったのかと心配してしまう。
コレオはやはりクラシカルで美しい彼の滑りが伝わるものだったが、もう力を振り絞って滑り終えたように見えた。最後のスピンでも転倒してしまう。演技途中で急に身体の軸がずれたような印象だった…。うう、泣かないで…。


3:アレクサンドル・サマリン
彼も4回転が3本続く構成。ルッツのコンビネーション降りた!前の大会ほどの加点はついてないが。フリップはかなりこらえた形になったが降りる。トゥループは抜けてしまった。しかしそれ以降はしっかりジャンプを決めてくる。スピンやステップもレベル4。でもザヤックがあったっぽい。ホントだ、ダブルトゥループ3回跳んでる。
安定したね今シーズンホントに。滑り終えた笑顔が嬉しそうで、なんかホッとしてしまった…。


4:ケヴィン・エイモズ
今日はトゥループがなかなか言うことを聞いてくれない氷らしい。2本目の単独は転倒したが、しかし最初に跳んだコンビネーションは素晴らしい出来。むしろ転倒したジャンプ以外は自在に水槽を泳ぎ回る魚のような、実に絶好調で多彩で自由な演技だった。本人がどんどん乗っていくのが伝わってくるようだ。素晴らしかった、表彰台確定!泣いてる…。
フランスの男子は13年ぶりの表彰台とのこと。ということはジュベール以来だろうか。もうそんなに時が流れてしまったのだな…。


5:羽生結弦
公式練習でルッツを何度も跳んでいたし、構成もルッツありのものに変更してきた。しかも公式練習では4回転アクセルまで跳び始める。
ショートの直後のインタビューからは、彼がこの点差をひっくり返せないことを察して少々虚ろになっている様子が伺えて、どうするのだろうと少しハラハラしていた。しかし、あの練習の様子を見て、やっぱりどうしても、彼は負ける気がないんだな、とある意味で安心する。アクセルはさすがに入れてこないだろうと思ったけれど、もし1本でも綺麗に跳べていたらもしかすると…。

パスポートの盗難に遭ったとかで、ブリアンコーチがフリーの行われる日くらいまで到着できず、羽生君はずっとひとりで試合に臨み、練習もしていた。普段の言動からして、コーチがいなくても自分で考えてメニュー等を組み立てられるのだろうとは思ったが、それでもコーチがいれば、プログラムに入れるつもりのない4回転アクセルの練習など、公式練習の場では決してさせなかったはずだ。何やってるんだいきなり、と少しハラハラもしたけど、これが羽生結弦なんだよな、とやっぱり私は安心してしまったのである。


さて、フリーの演技である。冒頭、アップになった横顔の伏せた睫毛が、魔王に生まれ変わる前の一瞬のように静謐な美しさを湛える。立ち上がったその目には、鋭い修羅の炎が静かに燃える。

まずは4回転ループ。久しぶりに非常に美しく降りた。加点も4点を超える。これが決まれば波に乗れる。祈るように見つめながら、次のジャンプに思考を切り替える。サルコウか、ルッツか。もしルッツならば。ルッツならばどうか降りて欲しいと、無心で祈る。

彼が跳んだのは、4回転ルッツだった。2017年のロステレコムカップ以来だろうか。その時はこらえた着氷だったが、今回は思わずハッとしたほど美しい。羽生君の4回転ルッツは非常に高さがあり、正直世の中のあらゆるルッツが霞むほどシャープで華やかで美しいと個人的には感じている。
あのNHK杯での負傷から2年。本人にもずっと恐怖心が残っていたとしてもおかしくない。そのジャンプをこれほどの質で…。涙が出てきそうだ…。
彼がここで跳んだ4回転ルッツの意味を、成功させたことの大きさを理解できるのは、ある意味でそれなりの期間彼を見てきた人間だけかもしれない。平昌オリンピックについて語る際に必ず引き合いに出されるエピソードなので経緯を知っている人はもちろん多いだろうけど、当時リアルタイムで、状況はどうなのか、NHK杯には出られるのかと生きた心地がしない時間を経験しているかいないかの差は出てしまうかもしれない。もしここから綴ることも含め、我々の熱狂にピンと来ない方がいれば、もしかしたら理由はこれかもしれません。

ステップ。昨シーズンより振付が少し変わり、華麗さを増したステップ。レベル3だったのでどこかに綻びがあった様子。それからトリプルルッツ。少し斜めに見えたが、降りる。

さあ、ここからだ。大幅に構成が変わっている、この後半からが勝負である。
これまではルッツの位置に入っていた4回転サルコウ。一瞬ヒヤッとしたがこれも加点のつく形で降りる。この時点で既に羽生君の体力の消耗をスピードや足元などから感じられていたので、とにかく祈るような気持ちで見つめ続ける。

コンビネーションを最後に3本跳ぶという構成そのものはそのまま。まずは4回転トゥループオイラートリプルフリップのコンビネーション。予定通り跳んだが、フリップの着氷が乱れてGOEはマイナス。それでも降りた。この明らかに体力の消耗が見てとれる状況でも。
さらに4回転トゥループのコンビネーション。トリプルトゥループはダブルとなったが、これも降りた。NHK杯ではリカバリーで跳んだが、本来ならこのジャンプはトリプルアクセルのコンビネーション。こんな終盤に入れるような易しいジャンプではない。

では、トリプルアクセルはどうするのか。「アクセル×アクセル?何それ詳細教えてよ」とインタビューを聞いて半分冗談で呟いていたのに、早速試合に投入してくるとは思わなかった…。さすがに体力がもたなかったようで抜けてしまったが。今回最も大きな減点の要因となったのがこのジャンプである。
そもそも、トリプルアクセルをシークエンスで、しかも得点アップを狙ってプログラムの最後に跳んでくるなんて、正気の沙汰じゃないだろう。おそらく羽生結弦以外に実行してみようとする人間はいない。少なくとも現時点では…。羽生君への最大の褒め言葉が「意味がわからない」だと思うが(笑)、今回も心からそれを送ります…。

あとはもう、最後まで滑り切れるか。コレオもどうにかこうにかこなしている印象。ここまでヘロッヘロになっている羽生君も久しぶりな気がする。
フィニッシュポーズで崩れ、そのまま氷に顔を埋めるように身を屈める。体力の限界だったことが非常によく伝わってくる光景だった。今シーズンの羽生君は、あの体力のない細い少年はどこへ行ってしまったのだろう、というくらい、4回転が4本も組み込まれたフリーを滑り終わっても、どこか余裕が感じられたのに。その余裕が、一切なかった。ルッツを入れた構成に変更するということが、どれだけ難易度が跳ね上がるものだったのかということを、滑り終えた羽生君の姿は如実に物語っていた。


羽生君が滑り終えてからほどなくして、画像が乱れ始めた。一瞬停止したっけ?映像はすぐ戻ってきたものの、音声が出ない。スロー再生の間もまったく出ない。織田君の解説聞きたいのに…。画面にはお詫びのテロップが流れている。まさかの羽生結弦でこのトラブルはテレビ局的には痛いだろうが、一体何事なんだ。
キスクラに画面が切り替わっても音声が出ないままだったが、突然回復。テレビでは流れていないとは知らないだろうから、実況の二人はずっと喋っていたのだろう。
あとで聞くところによると、どうやら電源が落ちたらしい?羽生君の得点がなかなか出なかったのはそのせいか。会場の熱狂と興奮がブレーカーまで落としてしまったのだろうか。ああでも羽生君ならそういうこと起きてもおかしくないよな、と思ってしまえるのが我ながら笑ってしまう。たぶんあの日のトリノには、スケートの神もいたのだ。神がその存在を示す唯一の方法が、超常現象を起こすことだとすれば合点も行く。運命はまた、動き始めたのだ。神はそれを告げに来たのだ。羽生結弦の新たな道に「Yes」を与えて。

確かに、久しぶりに羽生君らしい、最高にエキサイティングな演技だったと思う。挑戦なんかしなくたって、羽生君は現状維持で十分に強い。それは本人もわかっているはずだ。リスクを負ってまでこんな常人の理解が追い付かないようなプログラムを急遽滑ったりしなくたっていいはずだ。
それでも彼は、自分がトップでいたいのだ。いちばん強いのは自分じゃなくちゃいけないのだ。ガソリンを用意されたら見ないふりして片付けてしまうのではなく、自ら拾い集めて注いで燃やしてしまうのだ。ある意味、エゴの塊である。しかしその塊は、実に単純明快で、素直で、清々しい。
もうすべてを手に入れたはずの羽生結弦の、こんななりふり構わない姿を、世界選手権に続いて見せつけられるとは…。これだから、羽生結弦のファンは止められない。その負けん気の強さを、燃える炎を、スケートへの飽くなき探求心を、私は何よりも愛している。

トリプルアクセルのミスやフリップの着氷乱れなどが響き、200点を越えることはなかった。あの構成でもミスをすれば点は出ないという、単純明快な結果である。さすがの羽生君も急な決断だったのかジャンプに集中していて、指先まで魔王の孤独が詰まったような美しさも少々影を潜めていたように思うので、仕方がないであろう。高難度の構成と芸術的表現を同居させるのがいかに困難か、ということがよくわかる。ほかの選手も基本的にそうだと思うし。

ところで、最初のジャンプは何故ルッツではなくループなのだろう。最初に跳ぶジャンプは、その選手にとってプログラム中最も難易度が高く、集中しなければならないジャンプを選ぶ印象がある。羽生君にとっては、あとから習得した上に、負傷の要因となったルッツを最初に持ってきたとしてもおかしくないのだが、何故かループ。
入れるか入れないかわからないルッツではなく、確実に入れて成功させたいループにいちばんに集中したい、ということでいいのかな。4回転界隈ではループの人気があまりにも低く、皆すっ飛ばしてルッツに行くので、実はループ4回転になるとめちゃくちゃ難しいのでは、疑惑がうっすらあったりするんですよね。ルッツがいちばん得点的に美味しいので皆ルッツを練習してるだけだろうとも思いますが、でもトゥループサルコウは大抵の選手が跳ぶし。あのネイサンですら4回転ループはなかなか組み込んでこないし。果たして真相は。


6:ネイサン・チェン
凄まじい演技だった…。4回転が4種類入っていて、どれも成功どころか出来もいい。本当にひとつひとつ余裕が感じられて、こんなに簡単にジャンプって跳べるの?と思うくらい。少々曲がっても体幹の良さで修正してしまえるのかな、という印象。積み重なっていく技術点が恐ろしいことになっていて、言葉を失った…。
ステップで少しミスがあったようでレベル3だった以外は、高難度のプログラムをほぼ完璧に滑りこなした。羽生君の得点は知っていただろうから、安全策を取って難易度を下げても良かったはずだけど、そうしなかったところがカッコいいな。そのおかげで記録も更新できたのでしょうし。リスクを取らなければ壁は突破できないのですよね。
完璧超人のネイサンの唯一の欠点が「衣装は何故それなのか」という一点に尽きると思うが、フリーの衣装はショートのそれよりはいいんじゃないかと思った。まだ衣装らしくて…。バスのシートみたいな柄から黄色いシャツに変わったのね。卵焼きみたいで美味しそうです(笑)。


やはりテレ朝の生放送は何事か起きる運命なのか…。停電も困るけど、怪我とかそういうのよりはマシだってことで…。放送時間が少しだけ延長されたけど、この停電?の影響かな。

はあ、ひっさしぶりにめちゃくちゃ緊張した。続いて放送された報道ステーションを見終わってから、一気に脱力して肩の痛みが襲ってきて、どれだけ緊張してたんだ、と我ながら驚いてしまった。肩が痛すぎて吐き気がするほどでした…。

インタビューの羽生君、いつもの怒り方とは少し違うけど、やっぱり悔しそう。ファイナルの頃がいつもいちばん調子が良くて、連覇してきた自負もあっただろうし。特に自分の持っていた最高得点を、よりによってファイナルで抜かれたのは悔しかっただろうな。あんなとんでもない点、もう抜かれることはそうそうないだろうと思っていたのに。神はどれだけ羽生君が好きなんだろう。羽生君にどれだけガソリン与えりゃ気が済むのよ(笑)。
「今に見とけ」が死ぬほど羽生君らしくて笑ってしまいましたが、「怪我しなかったー!」という叫び声が最後に入ってたのが個人的にはいちばん引っ掛かったかな。うんうんそうだよね、そこだよね。度重なる怪我がなければ、もっと簡単に勝利も記録も得られてたかもしれないのに、足枷をはめられてしまったのだから。そしてその足枷が外れてきたと思ったら、なんかスタイリッシュな卵焼き…じゃなかったネイサン(笑)が台頭してくるし。楽々王者の座には座らせてもらえないみたいよ、羽生君。でも君はきっと、道を見つけ出すんだろうと私たちは何の疑いもなく信じているよ。実際、ミスさえなければ互角でしょうからね。今回はショートのミスがやっぱ響いちゃったよね。まあショートでミスしたからこそ羽生結弦らしい羽生結弦が久しぶりに現れたのでこれはこれできっとみんなめちゃくちゃ面白かっただろうなと思いますが。


すっかり長くなりました。まあ、いつものことなので(笑)。
ではでは、次回は女子フリーの感想でお会いしましょう。




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