うさぎパイナップル

主にフィギュアスケートの旅日記とテレビ観戦記とお題記事・ただ書き散らして生きていたい

神が遣わせた少年と、10年の祈り・はてな版

あの日、たまたま休みだった私は、ちょうどその時間に流していた情報番組でその知らせを見たのです。

もう、当時のことはよく思い出せません。生放送の番組の最中に地震が起きたこと、それを見ていたこと、それだけは覚えています。

次々と目に、耳に飛び込む情報を、私は受け止めきれませんでした。同僚とバスの中でその話をしていて、涙が止まらなくなってしまったことすらありました。
揺れを感じることすらなかったのに、被害を受けたわけでも何でもないのに、私の脆弱な心には、あまりにも重くて受け止められなかった。ごめんなさい、今もその言葉しか頭には浮かびません。


東北の親戚や知人を心配したその次に、私が安否が気になって仕方なかったのは、ひとりの少年でした。ほんの3ヶ月ほど前に、必ず世界のトップに立つだろうと、その姿を目の前に見て、肌で感じて、心から思った少年。
彼の拠点は仙台ではなかったか。もっと昔に、東北からすごい子が来るんですよって、近々控えたジュニアの大会に知人が興奮していたはず。

知り合いでも何でもないあの少年の無事がわかった時、本当にホッとしたことを今も覚えているのです。


少年はめきめきと頭角を現し、スポーツの祭典で2度もその頂点に立った。震災を経験していることから悲劇のヒーローに祭り上げられがちな世間を、彼はその賢さやスポーツの実力で黙らせた。黙らせるどころか、それすらも受け止めて、希望となる道を選んでくれた。

東北の大地が激しく傷ついてしまうことを、止められる者は誰もいなかったのでしょう。どんなに願っても、抗えない運命。時に神が我々に与える、厳しすぎる試練。

まさにその地に、この時代に、この少年が生を受け、世界中の人間が目にすることのできる、スポーツという世界で活躍したことは、偶然ではないのではないか。せめてもの希望として、神はあの少年を我々に与えてくれたのではないか。そして少年もまた、その運命を受け入れてくれたのではないか。その細い肩に背負うことを。本来なら背負わなくても良かったであろう、その運命を。


私は彼の演技もさることながら、その言葉をとても愛しているのです。あまり目にする機会はありませんが、文章として綴られる場合もとても好きです。
こんな言葉が、文章が紡げるライターがどれほどいるのだろうか。飾らず、真っ直ぐで、正直で、広い視野と、高い視点と、ぶれない芯のある言葉。リズム感のある、音で響くような文章。それはテクニックを超えてはるかに心に届く。

彼のメッセージを、本日は様々な媒体で目にする機会があるだろうと思います。テレビ、新聞、ネットニュース。もしその機会に遭遇したら、是非目を通してみてください。1000文字と少しだという、その言葉を。

単なるファンとしても、たった一人のファンもこぼさないように紡いでくれた言葉に胸を打たれました。本当に声をかけている相手はもちろん我々ではないです。それでもその言葉は、その心に深い傷を負う体験をしたのであろう彼を、その体験ごと受け止めて応援してきた我々の心すらも汲んでくれたものでした。私は、そう感じたのです。


あの日、16歳だった少年は、26歳の青年として今日を迎える。その凛々しく儚く気品ある姿に、彼が10年間に辿ってきた道を思う。最高の栄誉、彼以外に体験することもないのであろう苦悩。それでも彼は、今日のこの日まで競技の世界を戦い抜き、我々の希望であり続けてくれた。

彼がいたから、私は受け止めきれずにいたあの東日本大震災を「なかったこと」にして逃げてしまわずに済んだのだと思います。

羽生結弦

彼が現役選手として活躍しているまさにその時を見逃さずに過ごせていることを、神に感謝したい。せめて、彼が彼の大好きなフィギュアスケートの世界で、彼の望む満足と納得が得られる日まで、応援したいと思っています。いえ、応援させてください。

今日は静かに、祈りを捧げたいと思います。けど、祈るだけなら誰にでもできるから、祈っているふりだってできてしまってどこまで誠実でいられるか自信が無いから、せめて自分の想いをここに置いておきます。



※こちらの文章は、3月11日(昨日ですね)にnoteに掲載したものです。noteでもスケートについて時々書いておりますが、noteはなかなか記事を読んでいただないことと、この話題はあまり日を置かずに再掲載した方がいいなと考え、今日とさせていただきました。noteの方も読んでくださった方がもしいらっしゃったら、ごめんなさい。

元の記事は以下のリンク先です。ほんのちょっとだけ修正しましたが、内容はほぼ同じです。

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ではでは、また次回の記事でお会いしましょう。



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